2012年12月「第21回東京ミネラルショー」







       2012年12月「第21回東京ミネラルショー」

1. 初めに

    東京では、年に2回、国際的なミネラル・ショーが開催される。それぞれ、開催場所が新宿、池袋
   なので、それを頭につけて、年末に開催されるのを「池袋ショー」とも呼んでいる。

    ここのところ毎年欠かさずに訪れているが、@ 国産標本を揃えているブースが少なく、A しか
   も古い標本はほとんどなく、 B あっても”高い!!”ので、どうしたものか思案するのだが、気が
   つくと会場にいた。

    いつもなら初日の金曜日か2日目の土曜日に訪れるのだが、いろいろな用事があり、訪れたの
   は日曜日のお昼前だった。会場は思ったより空いていて、ゆっくりと見て回ることができた。

    今回、訪れた最大の理由は、山梨県落合鉱山で採集した『マンガノパンペリー石』の鑑定を
   依頼することだった。できるなら、これを発見した加藤先生にお願いする積りだった。
    加藤先生は、会場にお見えになっているようだったが、結局お会いできなかった。何人かの方に
   鑑定をお願いすると、” Looks Likely ”、とか「 そうだと思う 」、といった肯定的な意見がほとんど
   だった。

    国産標本が置いてあるブースを中心に見て回ると、「山梨県小尾八幡山の燐灰石」が3ケ1,000
   円の山に埋もれていたり、未練タラタラの「西沢金山のマチルダ鉱」などもあり、迷わず購入した。
    「埼玉県朝日根のパンペリー石」も3ケ1,000円の中にあり、もちろん購入した。

    こうして、国産標本数点、日本では入手できない外国産鉱物種数点を買って会場を後にし、単身
   赴任先に戻った。
    ( 2012年12月 情報 2013年1月 マンガノパンペリー石 写真追加 )

2. 場所と規模

    JR池袋駅からサンシャインビルを目指して進み、「東急ハンズ」の脇から一度地下に降り、「文化
   会館」を目指す。2008年から、2Fだけでなく3Fでも販売されるようになり、会場のスペースにかなり
   余裕が出たような気がした。

      会場入口【2011年】

    公式ガイドブックには、国内226(227)社、海外87(84)社、合計313(311)社が出展し、( )内の
   2011年にくらべ、ほとんど変化がない。

    ” Mineral Show ”、と銘打っているが、「化石」だけ、あるいは「ジェム(磨き石)」だけのブースも
   沢山あり、次のようなものを展示、即売している。

    (1) 鉱物
    (2) 化石
    (3) ジェム
    (4) 隕石
    (5) 文献・図書・切手・古銭

3. 購入標本

    数年前から自宅の標本収納スペースや『そんなに買ってどうするの?』、という妻の声が耳元か
   ら聞こえるような気がして、『一点豪華主義』に転じた筈だが、良い標本、珍しい産状、国内では
   得難い結晶などに出あうとついついサイフの紐が緩くなってしまう。
    今回は、何だかんだと理由を付け、国内外産の標本をいくつか買ってしまった。

 3.1 国産標本
      日本を代表する鉱物種として、岡本、桜井両先生が選んだ「日本産鉱物50種+番外」
     があり、国産鉱物収集の目標をこれに置き、すでに達成している。

    ・「あなたはおもちですか?」
     鉱物コレクターの資格審査
     ( How Many Specimens do you have ? , Qualification of Mineral Collector )

      そうなってくると、私の地元の山梨県や隣接する長野県、とりわけ川上村の標本で良いもの
     があれば、持ち出された標本の”買い戻し”の積りで買うようにしている。
      そういった標本を紹介する。

  (1) 「山梨県小尾八幡山の燐灰石」
       この産地の燐灰石は、岡本、桜井両先生が選んだ「日本産鉱物50種+番外」にも顔を出す
      超有名標本だ。
       ここではミネラル・ウオッチングで訪れたのだが、「燐灰石」には出会うことができず、結局
      ミネラル・ショーで大枚○万円で”現金採集”した、いわくつきの標本だ。

        燐灰石【山梨県小尾八幡山産】

       これは、「朝日根のパンペリー石」を探して、3ケ1,000円の”駄もの”を漁っていて見つけた
      標本で、まさに『掘り出しもの』だ。

  (2) 「西沢金山のマチルダ鉱」
       西沢金山の「マチルダ鉱」を求めて、ここに通った回数は10回前後になるだろう。ただ、”こ
      れぞ、マチルダ鉱”という標本には出会わずじまいだった。

       ・栃木県西沢金山の鉱物
        ( Minerals from Nishizawa Gold Mine , Tochigi Pref. )

       そんな訳で、会場で見かけた「マチルダ鉱」を衝動買いしたような始末だ。

        マチルダ鉱【栃木県西沢金山産】

  (3) 福岡県「水晶山の水晶」
       『水晶』は、心ひかれる鉱物の1つだ。そんなわけで、日本の水晶と名前がつく地名を集めて
      次のページに掲載してある。

       ・水晶の名前がつく地名 その2
       ( Place Name Titled " Suisyo " all over the Japan , - Part 2 - )

       これらの中で、福岡県北九州市にある「水晶山」で水晶が採れるのかどうか、確信がなかっ
      た。九州に縁のある石友・Hさんから、「水晶を採った」、と聞いたことはあるが現物は見ていな
      かった。

       3ケ1,000円の箱の中を見ていると、「水晶山産の水晶」があったので、迷わずに購入した。
      ラベルを見ると採集者は、数年前、採集中不慮の事故で亡くなった某氏だと知り、感慨深い
      ものがあった。

        水晶【福岡県水晶山産】

 3.2 外国産標本
      日本国内では採集出来ない結晶や見かけない産状の標本を数点購入した。

  (1) 「モロッコ産 白鉛鉱」
       クリスタル・ワールドのブースにあった標本の中に、この標本があった。1ケ200円と安く、手に
      持つと、”ずしりと重い”。透明感こそないが、結晶の形もシッカリしており、購入した。

        「白鉛鉱」【モロッコ産】

4. 「落合鉱山産 マンガノパンペリー石」鑑定

    今回、訪れた最大の目的は、持参した「山梨県落合鉱山のマンガノパンペリー石(??)」が、本
   物かどうかを識者に鑑定していただくためだった。

    ・山梨県落合鉱山のマンガノパンペリー石
     ( Pumpellyite-(Mn) from Ochiai Mine , Yamanashi Pref. )

    本鉱物発見者の1人、加藤先生に見ていただくのが一番確実だと思ったが、会場にお見えにな
   っているとのことだったが、結局お会いできなかった。

    「日本産新鉱物」に詳しい外国人ディーラーに見てもらうと、” Looks Likely”(そのようだ)、との
   鑑定結果だ。
    日本人にも見てもらうと、異口同音に「そうでしょう」、とか「間違いない」、という鑑定結果だった。

    某ブースの3ケ1,000円の”駄もの”の中に「埼玉県朝日根のパンペリー石」があると教えてくれた
   人があり、早速購入して比較すると、『針状(繊維状)結晶の集合』は共通で、間違いなさそうだ。

          
              「マンガノパンペリー石」                「パンペリー石」
                【山梨県落合鉱山】                【埼玉県朝日根】

5. おわりに

 (1) 特別展『日本産鉱物のふるさと』
      今回の特別展は、『日本産鉱物のふるさと』、と題して、日本三大ペグマタイト産地の1つ、福
     島県石川地方の地質や標本を展示していた。

          
                          特別展『日本産鉱物のふるさと』

      福島県石川地方は、岐阜県苗木地方、滋賀県田上山地方と並んで、ペグマタイト産地として
     ご存知の方も多いはずだ。

        石川地方

      「クリソベリル(金緑石)」や新鉱物・「野木沢石」の仮称までついていた「ブロック石」など石川
     地方を代表する鉱物がいくつか目につき、写真に納めた。

          
                  「ブロック石」              「クリソベリル(金緑石)」

      茨城県のH製作所に勤務していたころ、比較的近い産地ということで多くの石友と何回か訪れ
     「ブロック石」は採集できたのだが、「クリソベリル(金緑石)」とは縁がなかった。

      ・福島県玉川村の「野木沢石」(ブロック石)
       ( Nogizawaite ( BROCKITE ) from Tamagawa Villadge , Fukushima Pref. )

      ”鬼が笑う” かもしれないが、暖かくなったら、最近の状況を調べに行ってみたいと思っている。

 (2) 甲州初冬の風物詩『干し柿』
      11月、甲州名物の「干し柿」を作った。皮をむいて柿を干した南側の日だまりは暖かく、冬の訪
     れに伴い乾燥した風が吹いて、干し柿らしくなってきた。いつも、ヒヨドリがきて突っつくのだが今
     年はその害もなく、上出来だ。
      水分が抜け、大きさは元の半分以下になっているが、渋かった柿が上品な甘さの「干し柿」に
     変わっている。
      お正月に帰省するお嫁さんや孫が大好きなので、そろそろ取り込んで、”粉(こ)”と呼ぶ真っ
     白い糖分が表面に結晶すると出来上がりだ。

          
                Before                 After
                    甲州初冬の風物詩『干し柿』

6. 参考文献 

 1) 岡本要八郎、桜井欽一:「あなたはおもちですか?」鉱物コレクターの資格審査
                   地学研究Vol.10 No.5,1958年
 2) 益富 寿之助:水晶 やさしい鉱物学,保育社,昭和60年
 3) 草下 英明:鉱物採集フィールドガイド,草思社,1998年
 4) 松原 聰、宮津 律郎:日本産鉱物型録,東海大学出版会,2006年
 5) プラニー商会:第21回 東京ミネラルショー公式ガイドブック,同商会,2012年
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