「あなたはおもちですか?」鉱物コレクターの資格審査

「あなたはおもちですか?」鉱物コレクターの資格審査

1.初めに

2002年は甲府地方も冬の到来が早く、12月9日に例年より数週間も早く
初雪を見た。
今でも、私の家の裏山の頂上付近は真っ白で、こうなると、山へ鉱物採集に
行くこともできず、古い鉱物雑誌を引っ張り出してきて、自分なりの索引を
作成している。
昔の雑誌に、”「あなたはおもちですか?」鉱物コレクターの資格審査”という
面白い記事を発見したので、ご紹介します。
(2002年12月調査)

2.出典と内容

今から40年以上も前、日本が敗戦の痛手から立ち直り、高度成長を始めた
1958年(昭和33年)の「地学研究」に、「北投石」発見者の岡本要八郎先生と
アマチュア鉱物学者の桜井欽一先生が連名で書かれています。
要旨は、鉱物収集には色々なスタイルがあるが、”コレクターは、珍種、美晶を
手に入れて胸をときめかせた覚えがあるであろう。
誰もが欲しがるであろう、日本産の鉱物を50種選んでみた。
そんなことをして何になる!!など怒り給うな。これは、お遊びです。”

3.日本産鉱物50種

1.福井県赤谷産     自然砒(金米糖状結晶)
2.北海道手稲産     自然テルル
3.兵庫県生野産     自然蒼鉛
4.愛媛県市ノ川産    輝安鉱(美しい結晶)
5.秋田県太良産     方鉛鉱(八面体と六面体の集形)
6.秋田県院内産*    輝銀鉱(結晶)
7.秋田県阿仁産     閃亜鉛鉱(美しい結晶)
8.兵庫県夏目産     紅砒ニッケル鉱
9.秋田県荒川産     黄銅鉱(三角式結晶)
10.新潟県赤谷産     黄鉄鉱(菱体面<原文のまま>に似た結晶)
11.大分県尾平産     硫砒鉄鉱(長柱状結晶)
12.山口県長登産     輝コバルト鉱
13.群馬県中丸(旧八幡産)四面銅鉱(結晶)
14.山梨県乙女産     水晶(日本式双晶)
15.宮城県小原産     紫水晶
16.新潟県赤谷産*    玉髄(そろばん珠状)
17.富山県立山産     魚卵状珪石
18.岡山県下徳山産    赤鉄鉱(結晶)
19.徳島県眉山産     ルチル
20.長野県湯股産     方解石(球状)
21.長野県浦里産*    玄能石
22.島根県松代産     霞石(結晶の集合体)
23.福島県飯坂産     フェルグソン石(結晶)
24.福島県石川産     サマルスキー石(結晶)
25.福島県石川産     モナズ石(結晶)
26.神奈川県玄倉産    燐灰石(結晶)
27.岐阜県神岡産     緑鉛鉱(結晶)
28.栃木県足尾産     藍鉄鉱(結晶)
29.大分県木浦産     スコロド石(結晶)
30.秋田県日三市産    荒川石(ベスジェリ石<原文のまま>)
31.秋田県玉川産     北投石(渋黒石)
32.山梨県乙女産     ライン鉱(灰重石後の鉄重石結晶)
33.岐阜県苗木産     苗木石(変種ジルコン)
34.滋賀県田ノ上山産   トパズ
35.富山県黒部産     十字右
36.大分県尾平産     斧石(美しい結晶)
37.長野県武石産     緑簾石(いわゆる焼餅石)
38.京都府白川産     褐簾石(花崗岩中の結晶)
39.大分県木浦産     ベスブ石(結晶)
40.静岡県河津産     イネス石
41.長野県御所平産    電気石(扁平な結晶)
42.大分県尾平産*    ダンプリ石
43.長野県川端下産    柱石(もと透角閃石と誤認されていた)
44.茨城県日立産     菫青石(結晶)
45.大分県尾平産     灰鉄輝石(結晶)
46.福岡県長垂産     紅雲母
47.山口県六連島産    金雲母
48.岐阜県神岡産     魚眼石(結晶)
49.東京都三宅島産    灰長石(結晶)
50.新潟県間瀬産     方沸石(結晶)
  * 印は他の産地のものを代用してもよい.
【番外】この他手稲石,大隅石,河辺石,湯河原沸石などはぜひあつめておきたい
    日本特産鉱物である.

4.あなたは、いくつお持ちですか?

”*”印がついた一部の標本は、お情けで、ほかの産地のもので代用しても
良いとの事ですが、原産地標本をこれだけ揃えるのは、大変です。
気になる、両氏による資格審査基準は、次の通りです。
@全部あれば一流コレクター。
A70%以上なら、立派なコレクター。
B30〜50%では、まだまだ努力が足りない。
C30%以下では、コレクターという資格はない。

あなたは、どのグループですか?

5.おわりに

(1)私の資格審査の結果は、半分チョットしか持っていませんので
   Bでしょうか。
私は、”Mineral Hunter"であって、”Collector"ではない、などと負け惜しみを
言いつつ、せめて70%を目指して、12月13日からの国際化石鉱物ショーでは
このリストを片手に、国産品探しに飛び回るようです。
(2)この論文が出されてから半世紀近くの時が流れ、いくつかの産地が
”幻の産地”になり、逆に新産鉱物もたくさん発見されており、今の時点で
”日本100名鉱”を選んで見たいなと思っています。

6.参考文献

1)岡本要八郎・桜井欽一:「あなたはおもちですか?」鉱物コレクターの資格審査
                地学研究Vol.10 No.5,1958年
inserted by FC2 system