2019年12月 「第28回 東京ミネラル・ショー」











       2019年12月 「第28回 東京ミネラル・ショー」

          ( 28th Tokyo Mineral Show , Dec.2019 , Tokyo )


1. はじめに

    東京では、年に2回、国際的なミネラル・ショーが開催される。それぞれ、開催場所が新宿、池袋なので、
   それを頭につけて、年末に開催されるのを「池袋ショー」とも呼んでいる。

     
                      第28回 東京ミネラル・ショー案内はがき(2019年)

    HPを見返してみると、2000年ごろからほぼ毎年欠かさずに訪れていたが、池袋には2014年に行ったのが最
   後で今回5年ぶりに訪れたことになる。

    ・ 2014年12月 「第23回 東京ミネラル・ショー」
    ( 23rd Tokyo Mineral Show , 2014 , Tokyo )

    ちなみに、「新宿ショー」に最後に行ったのは2015年だった。

    ・  2015年 東京国際ミネラル・フェア
    ( 28th Tokyo International Mineral Fair , Tokyo )

    これらを読み返してみると、足が遠のいた理由は @ 国産標本で欲しいモノがない。 A 価格もバカ高い。
   その背景として、国内産地が採集禁止などになり良い標本が入手出来なくたったからだろう。その結果、古い
   有名産地の標本を欲しがる人がいるのに供給が追い付かず、需要>>供給の関係で当然値段も上がる。
    今回の会場で感じたことの1つが、「鉱物女子」、あるいは「宝石女子」とでも呼ぶ女性客、特に若い女性が
   多いことで、”きれいな鉱物”の人気が高まっている。

    都内に住んでいて、歩く時間を入れても1時間もあれば着くので初日に行って見ることにした。今回は、次の
   ような狙いがあった。

    1) 国産、とりわけ私が住む山梨県産の古い標本を探す。
    2) フィールドでは入手できない資料・器材を探す。

    ( 2019年12月 情報 )

2. 場所と規模

    JR池袋駅からサンシャインビルを目指して進み、「東急ハンズ」の脇から一度地下に降り、「文化会館」を
   目指す。2008年から、2Fだけでなく3Fでも販売されるようになり、会場のスペースに少し余裕が出たような気が
   したのも束の間、今回行って見ると、平日だというのに”ぎゅうぎゅう”のすし詰め状態だった。

     
                    会場の雰囲気

    公式ガイドブックには、国内318(248)社、海外99(89)社、合計417(337)社が出展とあり、(  )内
   の2014年にくらべ、国内が約30%増、海外は10%強増、全体としてはこの5年の間に約25%増だ。デフレの
   時代にこれだけ伸びているのだから”成長分野”であることは間違いない。
    5年前に、「会場のスペースが限られているのだから、これからも大きく増えることは難しいだろう」、と書いたが
   日本人のスゴイところは限られたスペースにこれだけの数のブースを押し込んでしまうところだ。その結果、人気
   のブースでは身動きができない状況も出現した。

    ” Mineral Show ”、と銘打っているが、「化石」だけ、あるいは「ジェム(磨き石)」だけのブースも
   沢山あり、次のようなものを展示、即売している。

    (1) 鉱物
    (2) 化石
    (3) ジェム(ルース)
    (4) 隕石
    (5) 文献・図書・切手・古銭(コイン)・矢じりなど
    (6) ジオード・クラッキング
        2010年ごろから登場したジオードと呼ぶ球顆を機械で2つ割してくれるイベントが人気だ。今回も50人
       位が順番待ちで並んでいた。今回見ていると係員が付き(力?)添って自分で割体験ができるように
       なっているのも人気の秘密の1つだろう。

        
             順番を待つ長い列                   自分で割ることもできる
                           ジオード・クラッキング
                   (自分で割ることもできる体験型イベントになった)

        

    入場料は大人900円で5年前より100円アップしていた。”シニア割引”がないのは寂しい。
     
            入場券
       (4日間通し 大人900円)

    入場券の裏の番号が「00915」となっている。初日の開場1時間も経たない時点で、招待客を除き有料
   入場した人だけで1,000人近かったということだろう。

3. 気になるブース

    いつも訪れるのを楽しみにしているブースがいくつかある。それらで見かけた標本を紹介する。

 3.1 国産鉱物
     やはり国産鉱物の人気は高い。海外出品社のブースでもいわゆる『里帰り品』、と呼ぶ国産標本を展示・
    販売していた。

     小室宝飾のブースの展示ケースの中には、日本の鉱山が盛大に稼動していたころに採掘されたと思われる
    すばらしい標本が展示してある。
     ただ、付いている値札を見ると、値引き交渉で安くするはずだが、それにしても”0”が一つ多いのでは、と
    思うほどで、見るだけで終わってしまった。

     このほか、数店が国産鉱物を置いてあったが同様で、

4. 購入品

4.1 購入標本
    2010年頃から、自宅の標本収納スペースや『そんなに買ってどうするの?』、という妻の声が耳元か
   ら聞こえるような気がして、『一点豪華主義』に転じた筈だが、良い標本、珍しい産状、国内では得難い
   結晶などに出会うと、ついつい手が伸びてしまう。
    今回も、何だかんだと理由を付け、国産の標本をいくつか買ってしまった。

      日本を代表する鉱物種として、岡本、桜井両先生が選んだ「日本産鉱物50種+番外」があり、国産
     鉱物収集の目標をこれに置き、すでに達成している。

    ・「あなたはおもちですか?」
     鉱物コレクターの資格審査
     ( How Many Specimens do you have ? , Qualification of Mineral Collector )

      そうなってくると、私の地元の山梨県や隣接する長野県、とりわけ川上村の標本で良いものは”買戻し”
     初めて知る産地のものがあれば”産地探訪の見本”として買うようにしている。
      愛読書に記載されている産地の標本や『原産地標本』にも手が伸びてしまう。

      今回は、厳選して山梨県甲府市産の3点だけにした。”年金生活者”なので、高いものは買えず(買わ
     ず)、1点の平均単価は2,000円していないはずだ。逆に、「この標本が、この値段で買えたの!!」、と
     驚かれる読者もおられるはずだ。


No 鉱 物 名 産   地 写    真 説   明 購入価格
山梨県産 1 エシキン石-(Y) 黒平
全体

部分
カリ長石の上に簇生

自力採集品や
過去に購入した標本より
結晶が大きく、完全なので
購入

次のページ参照
 黒平のエシキン石-(Y)

3,500
2 フェルグソン石
全体

部分
カリ長石の上に簇生

 自力採集品でもっと
良い標本があるのだが、
組標本なので・・・・・

3 トパズ
全体

部分
母岩付き 1,500

4.2 購入器材
    この夏、こどもたちを案内して甲武信鉱山の貯鉱場を訪れ、「灰重石」の蛍光現象を現地でデモしようと
   して、ミネラライトを落としして破損してしまった。
    ミネラライトを買い直さなければ、と探してみると外国製でしっかりしたものは2万数千円するので、二の足を
   踏んでしまった。長波長(375nm)のものがあったので、とりあえず購入して置いた。(1,200円+税)

     
                   ミネラライト(長波長)

    これはミネラル・ウオッチングだけでなく、趣味の切手の世界でも、『蛍光インク』を使用した切手やはがき
   そして消印まの鑑定などに役立ちそうで欲しいと思っていた矢先だった。
   

5. おわりに

 (1) 皆さん”老けました”
      人のことは言えないし、当たり前だが5年ぶりにお会いすると皆さん老けている。変わらないように見えた
     のは、「小室少年」とMs.Hくらいのものだ。

      クリスタル・ワールドのブースに行くと、社長が私の顔を見るなり、「国産鉱物がなくて・・・・」と申し訳なさ
     そうに声をかけてくれた。頭を見ると真っ白だ。
      ここで、30年以上近く昔に東京の同じ会社にいたAさんが、「まだ現役なの?」と声をかけてきた。私が
     甲府に転勤になって数年して工場来る機会があり、趣味が私と同じミネラル・ウオッチングだと判っていた
     ので、そのころ毎週のように通って採り集めた大粒の「和田峠の柘榴石」を差し上げたことがあった。
      私はすぐにAさんの名前がでたが、Aさんは私に名前を憶えてくれていたか・・・・・。

      Ms.Sのブースにいくとご主人も元気そうな顔を見せていた。彼女は5年前と全く変わっていない感じだった。
     彼女は、「もうお店を出すのを止めようかしら」、と言っている口から「昔はほとんどいなかった女性客が最近
     多くて」、と綺麗な鉱物を並べているブースは繁盛しているようで、止められそうになさそうだった。
      「ここに来られなくなったらお終いだから、また元気でお会いしましょう」、と声をかけてお別れした。

6. 参考文献 

 1) 岡本要八郎、桜井欽一:「あなたはおもちですか?」鉱物コレクターの資格審査
                   地学研究Vol.10 No.5,1958年
 2) 地団研地学事典編集委員会編:地学事典,平凡社,昭和45年
 3) 櫻井 欽一:鉱物情報 No13 幻の産地、幻の鉱物 No13「東京都川乗谷の斧石」
            鉱物情報,1976年
 4) 益富 寿之助:鉱物 −やさしい鉱物学− ,保育社,昭和60年
 5) 草下 英明:鉱物採集フィールドガイド,草思社,1988年
 6) 山田 滋夫:日本産鉱物 五十音配列 産地一覧表,クリスタル・ワールド,2004年
 7) 松原 聰、宮津 律郎:日本産鉱物型録,東海大学出版会,2006年
 8) プラニー商会:第28回 東京ミネラルショー公式ガイドブック,同商会,2019年
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