2015年 東京国際ミネラル・フェア<BR> 28th Tokyo International Mineral Fair










          2015年 東京国際ミネラル・フェア
         28th Tokyo International Mineral Fair

1. はじめに

    東京では、国際的なミネラルショーが6月、12月の年2回開催される。それぞれ、開催地にちなん
   で、「新宿ショー」、「池袋ショー」と呼ばれている。
    2015年6月、「ミネラル・マーケット2015」を見た後に、訪れてみた。

    国産鉱物標本があったのは、「益富地学会館」、「大江理工社」など限られたブースだけで、し
   かも欲しい標本はなかった。
    数年前から感じていたことだが、国産鉱物を入手する売り立てとしては、このフェアに合わせて
   飯田橋で開催される「ミネラル・マーケット」に比べ、蔭が薄くなってきているのは否めない。
    最近では、国産標本の良い品が少なくなり、置いてあっても数万〜数十万では手が出ない。

    そんなところから、「新宿ショー」は、国内ではお目にかかれない美しくて大きな結晶や国内では
   産出しない珍しい鉱物を見たり、廉く購入したりする場だと割り切った。
    しかし、20cm近い中国産の頭付き「輝安鉱」が以前は1,000円以下で買えたのだが、経済発
   展にともなって値段も高騰し、5,800円と聞いては買う気にもならず、標本は何も買わなかった。
   20回以上「新宿ショー」通っているが、こんなことは初めてだ。
    結局、角田(つのだ)先生の講演を聞いて、外国産標本を眼で楽しんだだけだった。
    ( 2015年6月 訪問 )

2. 場所と規模

  名  称   場  所
(最寄り駅)
出店数  入場料  内  容   備  考
第28回
東京国際
ミネラルフェア
ハイアット
リージェンシー
東京
(JR 新宿)
          会場
国内 70
(前年比-7)
海外 75
(前年比-3)
スペースが限られ
大幅な増加は
望めないようだ。
ただ、減少は
今年が初めて?
5日間通し券1,000円
私のようにシルバー
(65歳以上)は
学生と同じで、700円
業者による販売

鉱物、化石、ジェム
が多い

金曜日〜火曜日
 (5日間開催)

          
               ミネラルフェア会場                            入場券
                   【2015年】                            【2015年】

3. 購入標本

    何だかんだ、と理由をつけてミネラル・ショーなどで購入するのは、次のような品だ。

     (1) 古い国産標本
          日本で採集された鉱物標本で、海外からの里帰り品が多い。
     (2) 特に、山梨県(甲斐國)産鉱物
          自分が住んでいる山梨県産鉱物
     (3) ミーハー品
          強いて産地まで行って採集しようとは思わないが、話題の産地・鉱物なので1つくらい
         持っていようか、という品
     (4) 外国産標本
          日本では入手できない美しく大きな結晶や稀産鉱物
     (5) 鉱物関連グッズ
          鉱物(金属)に関する、標本ケース、切手、コイン、書籍(本)など

 3.1 古い国産標本
      国産品を置いてあるブースを重点に回ってみても、古い国産標本は少ない。里帰り品がある
     かと期待しているのだが、この数年、欲しいものは全くない。
      ( 「市ノ川の輝安鉱」や「乙女鉱山の日本式双晶」などは見かけるが、すでに持っているし、
        値段も私が買ったときよりも、ゼロが1つか2つ余計についている。  )

      古い国産標本は、納まるところに収まってしまい、出てくるチャンスは極めて少なくなっってい
     るようだ。

 3.2 山梨県(甲斐國)産鉱物
      「自分が住んでいる山梨県産鉱物には一入(ひとしお)愛着がある。昔、山梨県で産出した
     ものを少しでも買い戻しておきたいと思っている。
      そんな訳で、過去に購入したことがある鉱物種でも、「これは!」、と思う標本は乏しい財布
     の許す限り購入するようにしている。
      国産標本そのものが少ないのだから、山梨県産標本で欲しいものはあるわけがなかった。

 3.3 ミーハー品
      強いて採集のため産地まで行こうとは思わないが、話題の産地・鉱物なので1つくらい
     持っていようか、という程度の品。
      欲しいものがなく、今回もパス。

 3.4 外国産標本

      外国産の標本には、結晶が大きくて美しい標本が数多く展示してある。見て回るだけでも
     楽しいし、バイヤーと片言の英語で情報を交換するのも”ボケ防止”にピッタリだ。
      ただ、思い入れや”縁もゆかり”もない外国産標本を買う気にはならないので、今回はパスだ。

 3.5 鉱物関連グッズ
      鉱物に関連するグッズの代表は書籍(本)、切手、コインだ。

  (1) 書籍(本)
       鉱物関する本は毎月のように発行されている。インターネットで注文すれば、2日後には
      送料無料で地方に住む自宅に届く。
       ただ、パソコンの画面では中身を確認できないため、”○○先生監修”、などの甘言に釣ら
      れて買って失望したことが何度かあり、立ち読みして内容を確認するのが目的だった。

       講演した角田先生が執筆し、2015年3月に発売された「甲信高地 水晶の世界」を手に
      している受講者を見かけたが、本に載せる写真撮影用に標本をお貸ししたお礼に一冊いた
      だいているので、買う必要はなかった。

  (2) 切手
       先に見た「ミネラル・マーケット」のT氏のコーナーで切手を見かけたのだが、この会場ではほと
      んど眼にすることはなかった。

       鉱物関連で欲しい切手があったので、帰りに新宿駅南口にある「切手センター」に立ち寄り、
      専門店で購入できた。

  (3) コイン
       この会場では、ローマ時代の銀貨や銅貨などのアンティーク(骨董品)や近代の記念コイン
      などが販売されていた。
       西洋の貨幣は、圧印(プレス)で作られているのだが、鋳造と思われるもの(偽物の可能
      性大)が並んでいたりして、これもパスだった。

4. 特別展とイベント

 4.1 特別展「鉱物の不思議で美しい模様と結晶」
      新宿ショーの特別展には、「鉱物」と「化石」が隔年(一年交替)で展示され、2015年は
     「鉱物」の番で、”めくるめく石の模様の世界”、だった。

      鉱物が結晶・成長した証(あかし)の『累帯構造』や『樹枝状成長跡』などや、岩石が堆積
     して生成する過程でできた、”木の年輪”に相当する縞模様など、石にはいろいろな美しい
     紋様(もんよう)が見られるものがある。
      代表的なものでは、馬の脳味噌に似ているとされる断面が複雑な縞模様をもつ「瑪瑙(めの
     う:アゲート)」だ。

          
              代表的な瑪瑙の研磨断面          モス・アゲートと呼ぶ「苔瑪瑙」
                       【「ミネラルフェア」パンフレットより引用】

      染料を染み込ませたり、熱処理して鮮やかな青や赤に色付けした瑪瑙を切って、その面を
     研磨した品が多数展示してあった。

       
                   特別展の展示

      これらの模様を風景に”見立て”て楽しむのは、日本人だけでなく、欧米人にも人気があるよ
     うだ。

  
                          「風景石」
                 【「ミネラルフェア」パンフレットより引用】

 4.2 「ジオード・クラッキング」
      数年前から「池袋ショー」では、「ジオード・クラッキング(英: Geode Cracking )」が人気だ。
     ジオードとは、『晶洞』のことで、同じ英語の「ドゥルーズ( Druse )」も同じような意味だ。”鉱物
     結晶が樹立する岩石の空洞”と英和辞典にはあるが、晶洞の内面に群がって生えている結晶
     の様子を伝えるのには、”樹立”より”林立”あるいは”叢生(簇生):そうせい”の方がふさわし
     いだろう。
      「池袋ショー」でジオードと言っているのは、内部に晶洞を持つ球状の玉髄( Chalcedony )で、
     これを石割り器具を使って人力で割るところから、ジオード・クラッキングと呼ばれている。中か
     ら何が出てくるか、割って見るまでわからないミステリアスなのが人気のもとのようだ。

      「新宿ショー」に「ワンコイン体験コーナー」ができ、「ジオード・クラッキング」が初めて登場した
     のは、多分2014年だと思う。
      2015年はジオードだけでなく、三葉虫などの化石を含むのジュールも加わり、好きなものを
     選べ、値段がワンコイン(500円)と廉いのが特徴だ。

      2014年は「ジオード・クラッキング」に挑戦してみたが、外国産の鉱物なので、今年は見てい
     ただけだった。

 4.3 無料講演会 「多様な日本式双晶」
      特別展の展示と同じく、講演会のテーマも「鉱物」と「化石」が隔年(一年交替)で決められ、
     2015年は、”甲信高地の産出地を行く” と副題のついた、角田先生の講演だった。
      ”甲信高地”という耳新しい用語は、水晶、とりわけ「日本式双晶」を産出する乙女鉱山の
     ある山梨県北部から三ツ岩岳のある群馬県南部にかけての南北約40km、東西約25kmの
     範囲を指している。

       
                  「甲信高地の日本式双晶産出地」

      この地域は、"Japanese Law Twin"と呼ばれるきっかけとなった明治初期から大きな美しい
     双晶を多産した乙女鉱山、「鎌形水晶」と呼ばれる独特な形をした双晶を産出した長野県
     川上村川端下(かわはけ)、そして2000年ごろ、「鳥形連晶」などの怪奇な双晶を産出した
     三ツ岩岳山麓など数多くの双晶産地があり、その形は産地によってさまざまだ。

      私が採集した珍しい西股沢の双晶や妻が採集した川端下の「鎌形双晶」なども紹介して
     いただいた。

          
                  西股沢産双晶                       川端下産「鎌形双晶」
                                                 【左下2ケが妻の採集品】

      それぞれの標本を採集した時の模様と研究(?)結果は、次のページに掲載してあるので、
     お読みいただきたい。

      ・ 2012年秋のMW フォローアップの標本
      ( Minerals from Mineral Watching Tour and Follow up
                           Fall 2012 , Nagano Pref. )

      ・ 2013年春 長野県の水晶産地をたずねて
       − ξ(クシー)面をもつ水晶 −
      ( QUARTZ with ξ Plane , QUARTZ Hunting , Spring 2013 , Nagano Pref. )

      ・保科五無斎と川端下産 『鎌形水晶』
      ( Hoshina " Gomusai " and " Kamagata ( Sickle-Shaped ) Quartz "
                   from Kawahake , Kawakami Village , Nagano Pref. )

5. おわりに

 (1) 私にとっての、『新宿ミネラル・フェア』の位置づけ
      ここ数年、新宿ミネラル・フェアを訪れるたびに思うのだが、『国産標本』が極めて少なくなって
     いる。
      同じ時期に開かれ、国産鉱物が主体の「ミネラル・マーケット」に比べ、”国産鉱物派”として
     は訪れる魅力が薄れてしまっている。

      この種の、ミネラル・ショーは、世界の鉱物・ジェム・化石などを楽しむ場、と割り切るしかなさ
     そうだ。

6. 参考文献 

 1) 松原 聰、宮脇 律郎:日本産鉱物型録,東海大学出版会,2006年
 2) 角田 謙朗:甲信高地 水晶の世界,くろねこ出版,2015年
 3) 東京ミネラル協会編:第28回 東京国際ミネラルフェア,同協会,2015年
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