2014年12月 「第23回 東京ミネラル・ショー」











       2014年12月 「第23回 東京ミネラル・ショー」

1. はじめに

    東京では、年に2回、国際的なミネラル・ショーが開催される。それぞれ、開催場所が新宿、池袋
   なので、それを頭につけて、年末に開催されるのを「池袋ショー」とも呼んでいる。

    ここのところ毎年欠かさずに訪れているが、@ 国産標本を揃えているブースが少なく、A しか
   も古い標本はほとんどなく、 B あっても”高い!!”ので、どうしたものか思案するのだが、気が
   つくと会場にいた。

    2012年まで、平日は仕事だったが、2013年からは自由の身の気楽さで、2014年も初日の金曜日
   に訪れた。初日、しかも平日なのに予想以上の混雑で、開場30分前の9時半に着くと、チケット売り
   場には200名以上が並び、招待券を持っていると思われる人々も100名以上が入口に並んでいた。

     
                開場を待つ人々

    今回は、次のような狙いで訪れた。

    1) 『ミネラル・ウオッチング納め』で入手できなかった「八名井のソーダ沸石」探し
    2) 国産、とりわけ私が住む山梨県産の古い標本を探し
    3) 古い文献にあった記事の情報収集
    4) 新旧の書籍・文献購入

    中に入ると、国産鉱物、とくに古いものを置いてあるブースには人だかりだった。
    「八名井のソーダ沸石」を販売しているブースはなかったが、倉庫に在庫があるはず、という業者に
   あれば送付してもらうようお願いした。また、産出したポイント・時期などの情報を得た。
    国産標本では、「黒平のトパズ」、「小尾八幡山の燐灰石」、「三富村興南鉱山の閃亜鉛鉱」そして
   「勝沼ろうせき鉱山の透閃石」など山梨県産のものを1,000円以下で購入。「長瀞樋口の苦灰石に伴
   う自然金」、「久美浜のソロバン玉石(玉髄)」、「湯河原沸石の原産地標本」そして「日ノ本鉱山の
   紅安鉱」など有名標本を800円以下で購入。
    桜井先生の「幻の鉱物・川乗谷の斧石」に登場する『小室少年』から、直(じか)に発見当時の様子
   を聞くことができた。
    こうして、国産標本を20数点あまりを買って会場を後にした。

    あるブースで国産標本を探していると、標本ラベルに私の名前が入った「Ma******* Collection」
   の標本が何点かあった。「西沢金山のルビーシルバー」や「黄金沢鉱山の洋紅石」など、身体が不自
   由でフィールドに出られないMさんに私が送って差し上げた標本だ。
    Mさんは2014年の春先に亡くなり、鉱物標本類は家族がまとめて売りに出された、とブースの方か
   ら聞いた。「沸石類」が好きだったMさんの遺品とラベルに私の名前が入った標本を何点か購入した。
    Mさんのご冥福を祈るとともに、収集した鉱物標本の行く末について考えさせられる一日だった。
    ( 2014年12月 情報 )

2. 場所と規模

    JR池袋駅からサンシャインビルを目指して進み、「東急ハンズ」の脇から一度地下に降り、「文化
   会館」を目指す。2008年から、2Fだけでなく3Fでも販売されるようになり、会場のスペースに少し
   余裕が出たような気がした。

        
                案内ポスター                      会場風景
                          第23回 東京ミネラル・ショー

    公式ガイドブックには、国内248(232)社、海外89(92)社、合計337(324)社が出展とあり、(  )内
   の2013年にくらべ、国内が増え、海外は微減、全体としては微増だ。会場のスペースが限られてい
   るのだから、これからも大きく増えることは難しいだろう。

    ” Mineral Show ”、と銘打っているが、「化石」だけ、あるいは「ジェム(磨き石)」だけのブースも
   沢山あり、次のようなものを展示、即売している。

    (1) 鉱物
    (2) 化石
    (3) ジェム(ルース)
    (4) 隕石
    (5) 文献・図書・切手・古銭(コイン)

     
                  入場券(4日間通し 大人800円)

    入場券の裏の番号が「00237」となっている。有料で入場した237番目ということだろうか。

3. 気になるブース

    いつも訪れるのを楽しみにしているブースがいくつかある。それらで見かけた標本を紹介する。

 3.1 国産鉱物
     やはり国産鉱物の人気は高い。海外出品社のブースでもいわゆる『里帰り品』、と呼ぶ国産標本
    を展示・販売している。

     小室宝飾のブースの展示ケースの中には、日本の鉱山が盛大に稼動していたころに採掘された
    と思われるすばらしい標本が展示してある。

        
             国産鉱物の逸品                   満バン柘榴石【和田峠産】

    ただ、付いている値札を見ると、値引き交渉で安くするはずだが、それにしても”0”が一つ多い
   のでは、と思うほどだ。結局、了解を得て、写真だけ撮らせてもらった。
    これらの中で、「和田峠の満バン柘榴石」はMHのコレクションの方が・・・・・・・・・・・

 3.2 特別企画展示
      特別企画展示の内容は、「鉱物」と「化石」が1年交替で変わるはずだが、2013年は「化石」で、
     2014年も続けて「化石」だ。テーマは『アンモナイトの魅力』だ。

       
                特別企画展示・『アンモナイトの魅力』

4. 購入標本

    数年前から自宅の標本収納スペースや『そんなに買ってどうするの?』、という妻の声が耳元か
   ら聞こえるような気がして、『一点豪華主義』に転じた筈だが、良い標本、珍しい産状、国内では
   得難い結晶などに出あうとついつい手が伸びてしまう。
    今回も、何だかんだと理由を付け、国産の標本をいくつか買ってしまった。

 3.1 国産標本
      日本を代表する鉱物種として、岡本、桜井両先生が選んだ「日本産鉱物50種+番外」があり、
     国産鉱物収集の目標をこれに置き、すでに達成している。

    ・「あなたはおもちですか?」
     鉱物コレクターの資格審査
     ( How Many Specimens do you have ? , Qualification of Mineral Collector )

      そうなってくると、私の地元の山梨県や隣接する長野県、とりわけ川上村の標本で良いものは
     ”買戻し”、初めて知る産地のものがあれば”産地探訪の見本”として買うようにしている。
      愛読書に記載されている産地の標本や『原産地標本』にも手が伸びてしまう。

      何だかんだと理由をつけて、27点も買い込んでしまった。ただ、”年金生活者”なので、高いもの
     は買えず(買わず)、1点の平均単価は500円していないはずだ。
      逆に、「この標本が、この値段で買えたの!!」、と驚かれる読者もおられるはずだ。


No 鉱 物 名 産   地 写    真 説   明 購入価格
山梨県産 1 燐灰石 小尾八幡山   333
2 閃亜鉛鉱 興南鉱山   250
3 剥沸石 三珠町   300
4 トパズ 黒平 母岩付き 1,000
5 透閃石 勝沼ろう石鉱山 ESAKA標本 300
長野県産 6 満バン柘榴石 和田峠 最大径 25mm 500
7 燐灰石 高遠 頭付き 500
愛読書に記載産地

標本
8 金紅石
(ルチル)
大呂 鋭錐石は採集
「日本希元素鉱物」記載
500
9 燐銅ウラン石 房又 黄緑色ガラス光沢
紫外線で蛍光せず
「日本希元素鉱物」記載
500
10 蛋白石
(オパール)
宝坂 そろばん玉状
「フィールドガイド」記載
333
11 自然金 長瀞樋口 苦灰石に伴う
「フィールドガイド」記載
500
古典的有名標本 12 紅鉛鉱 日ノ本鉱山   250
13 そろばん玉石
(玉髄)
久美浜  産地を訪れたが、
採集できなかった
”残念品”
300
14 300
15 白雲母 吉良町   400
16 コバルト華 洞戸鉱山   500
17 ベイルドン石 小泉鉱山  石友・N夫妻に会場から
電話して購入を決めた。  
250
18 セレン硫黄 那須硫黄鉱山 セレン0.69%
テルル0.01%
333
19 マンガン斧石 尾平鉱山 頭付き
『日本産鉱物50種』
600
20 亜鉛孔雀石 木浦鉱山  「鉱物の大部分は、腐ったり
虫が食ったりする心配は
ないと」とされるのだが、
一部の鉱物は空気中の酸素や
亜硫酸ガス、水分の作用で
変色・変質・分解してしまう。

 「緑マンガン鉱」ほどではない
にしろ「2次鉱物など」も、
『鉱物標本の行く末』を案じて
しまう。
 

400
21 クロム柘榴石 日高鉱山 菫泥石を伴う  500
22 ゼノタイム 飯坂町烏川   500
23 燐灰石 足尾銅山   500
Mコレクション 24 方沸石 関山   500
25 菱沸石 日光市   800
26 ルビーシルバー 西沢金山
MH寄贈品
500
27 湯河原沸石 湯河原町 原産地標本
Mコレクション(?)

『日本産鉱物50種』 番外

800

5. おわりに

 (1) 『小室少年』
      以前、山梨県某所で産出した「斧石」を入手・探査したのをきっかけに、桜井先生の『幻の鉱物』
     斧石シリーズを調べて、次のページに掲載した。

      ・ 幻の鉱物 「山梨県産 斧石」
      ( Legend of Minerals , FERRO-AXINITE from Yamanashi , Yamanashi Pref. )

      「幻の産地、幻の鉱物」に取り上げられた「斧石」は3つの産地のもので、それらの内、『小室少
     年』が発見したのは、「東京都奥多摩町川乗谷」のものだ。
      このページで『小室少年』→(成長して)『小室宝飾社長(?)』、と書いておいた。小室という姓で
     鉱物関係者だと、この人しか思い浮かばないからだ。

      小室宝飾のブースをたずねると、運良く社長がいたので、色々とたずねてみた。

      Q1 「桜井先生の「幻の鉱物・川乗谷の斧石」に、発見したのは『小室少年』と出ているが社長
         のことですか。」
      A1 「はい、そうです。」
         ( 予想通りだ )

      Q2 「林道の脇に積んであった切り石から採集した、とありますが」
      A2 「林道を広げる工事で出た石が積んであって、その中から発見した。その石が出たであろう
         露頭を探したが、探し出せなかった。今だったら、探せたかも知れない・・・・・」

      Q3 「いつごろのことでしょう。」
      A3 「(東京)オリンピックの前の年だから昭和38年(1963年)で、中学2年生のときでした。」
         ( 「幻の鉱物」に掲載されたのが1976年7月で、”・・・10年ほど前・・・”、とあるのは正確に
          は、”・・・13年前”・・・になる。 )

      Q4 「斧石は結晶していたのでしょうか」
      A4 「結晶ではなく、脈状でした。静岡県入島(にゅうじま)の産状に似ていました。」

      Q5 「桜井先生は、「幻の鉱物」で何回か「斧石」を取り上げていますが、何か思い入れのような
          ものがあったのでしょうか。」
      A5 「好きだったんでしょうね。」

      これで気にかかって1件がはっきりした。社長にお礼を言って、小室宝飾のブースで『現金採集
     納め』を楽しませもらった。

 (2) 収集した鉱物標本の行く末
      あるブースで国産標本を探していると、標本ラベルに私の名前が入った「Ma******* Collection」
     の標本が何点かあった。「西沢金山のルビーシルバー」や「黄金沢鉱山の洋紅石」など、身体が
     不自由でフィールドに出られないMさんに私が送って差し上げた標本だ。

      私と同じように、「五無斎」こと保科百助にが関心を持っているMさんから、私の次のHPを読んで
     メールをいただいたのが知り合ったきっかけで、2003年春のことだ。

      ・ 五無斎 保科百助と信州の鉱物
       ( GOMUSAI Hyakusuke Hoshina and Minerals of Shinsyu , Nagano Pref.)

      Mさんとは、一度もお会いしたことがないという不思議な石友関係が10年ほど続いていた。この間、
     メールや手紙のやりとりで私のHPの間違いを指摘していただいたり、資料を送っていただいたり
     していた。
      私は、Mさんが好きな「沸石系」や「千葉県産」そして「珍しい」標本などを採集するたびに、お送
     りしていた。
      私が千葉から山梨に帰った2013年春頃から連絡が来ないようになった。2014年の年賀状は、
     奥さんの手で書かれていたが、お元気なのだろうとばかり思い込んでいた。今になって思うと、
     このころからメールなどPC操作ができなかったのだろうか。

      Mさんは2014年の春先に亡くなり、鉱物標本類は家族がまとめて売りに出された、とブースの方
     から聞いた。
      「沸石類」が好きだったMさんの遺品とラベルに私の名前が入った標本を何点か購入した。上の
     リストに「Mコレクション」とある4点がそれだ。「湯河原沸石」の原産地標本はMさんのラベルでは
     ないのだが、「鉱物標本開発」の赤茶けた古いラベルがついているので、Mさんが持っていたもの
     だろうと思う。

       
                  自力採集標本               私の贈呈標本
                            Mさんの標本ラベル

      Mさんのご冥福を祈るとともに、収集した鉱物標本の行く末について考えさせられる一日だった。<

 (3) 『2014年 クリスマス』
      2013年も残すところ20日あまりだ。孫娘たちに送ったクリスマスカードの返事には、正月休みに
     遊びにくるとあった。

       
              千葉の孫娘からのクリスマスカード

       
              横浜の孫娘からのクリスマスカード

      お嫁さんの巧妙な作戦なのか、どちらのカードにも孫娘のたどたどしい字で『ほしいもの(おねだ
     り)』や『おいしいものをたべようね』と書いてあるのを読むと、ついつい財布のひもが緩みそうな、
     ジージとバーバだ。

6. 参考文献 

 1) 岡本要八郎、桜井欽一:「あなたはおもちですか?」鉱物コレクターの資格審査
                   地学研究Vol.10 No.5,1958年
 2) 地団研地学事典編集委員会編:地学事典,平凡社,昭和45年
 3) 櫻井 欽一:鉱物情報 No13 幻の産地、幻の鉱物 No13「東京都川乗谷の斧石」
            鉱物情報,1976年
 4) 益富 寿之助:鉱物 −やさしい鉱物学− ,保育社,昭和60年
 5) 草下 英明:鉱物採集フィールドガイド,草思社,1988年
 6) 山田 滋夫:日本産鉱物 五十音配列 産地一覧表,クリスタル・ワールド,2004年
 7) 松原 聰、宮津 律郎:日本産鉱物型録,東海大学出版会,2006年
 8) プラニー商会:第23回 東京ミネラルショー公式ガイドブック,同商会,2014年
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