このページの「おわりに」で、次のように書いた。
『 「エシキン石」の産地で、”小隊長”の質問に答える形で「エシキン石が日本で
2007年11月に、石友を案内したり、新産地の探索で、何回か黒平地区を訪れた。
2回の△△△での採集の時、ほぼ同じ場所で、イットリウム(Y)、タンタル(Ta)を含
この時、” もしかしたら、「エシキン石」が来るかも知れない ”、という予感めいた
正月過ぎのある日、△△△でこの時採集した標本全部を実体顕微鏡で丁寧に
私が「黒平のエシキン石」に執心なのを知ってか、一番古い石友・愛知のKDさん
「エシキン石」は、「苗木石」、「フェルグソン石」などの希元素鉱物と「鋭錐石」な
「地学研究」によれば、花崗岩質ペグマタイトには、REE(Rare Earth Elements
(2) 共生鉱物
これらの共生鉱物の化学式を見ていただければ、イットリウムエシキン石が
ルチル(金紅石)
「 私の持論として、鉱物採集の醍醐味(楽しみ)の第2ステップの”採集”にだけ
@ 訪れた産地でよく知られた代表的な鉱物を採集する。
今回、黒平のイットリウムエシキン石は、まさに『 待ち受け採集 』で、自分の
これも、2007年10月に滋賀県の石友・N隊長に案内していただき、愛知県の石
敢えて付け加えるなら、『 エシキン石が日本で最初に発見されたのは、私の
(2) 黒平のエシキン石
(3) 岐阜県蛭川のエシキン石
『 エシキン石は、○○石が密集した中にも1mm程度ですが結晶の良いのが
このときの標本も見直さねば、と思っている。
― ダイジェスト版 ―
( Digest Version of Mineralwatching Tour in Tokai Area , Oct.2007
Gifu , Mie Pref. )
最初に発見されたのは、山梨県甲府市黒平だ。本来なら、私はここではなく
黒平のエシキン石を探している筈の人 」、と話した。
これは、冗談半分ではあるが、「エシキン石」の産状、色、形も飲み込めたので
甲府市黒平周辺のものを探し出したい、と決意した。 』
@ 茨城県・Kさん(初心者)を「大株沢」に案内
A 石友・Mさんと「新産地」探索
B 愛知県の石友・KW氏、その友人・T氏と△△△探査・採集
C A・Sさんと”YYコンビ”を△△△に案内
む「苗木石(変種ジルコン)」 とニオビウム(Nb)を含む「フェルグソン石」、そしてチ
タニウム(Ti)を含む「鋭錐石」と「ルチル(金紅石)」を採集した。
ものを覚えた。
なぜなら、エシキン石【ASCHYNITE:(Y,Fe,U,Th)(Ti,Nb,Ta,W)2(O,OH)2】を構成する
ほとんどの元素がこの産地には揃っているからである。
見直して見た。すると、産状結晶の色、形が『湯の山温泉のエシキン石』とよく似
たものが2つだけあり、”肉眼鑑定”で、「イットリウムエシキン石」とした。
の年賀状に、10年ほど前、岐阜県苗木地方(蛭川)の採石場で一緒に採集した標
本にも「エシキン石」が付いているはずだ、とあった。
このときの標本も見直さねば、と思っている。
( 2007年11月採集、2008年1月鑑定 2019年12月表記追加 )
2. 産地
黒平について、多くの情報があるので、詳細は割愛する。
3. 産状と採集方法
水晶や長石そして希元素鉱物などのペグマタイト鉱物は、ペグマタイトの晶洞
(Pocket)とその周辺の石英、長石帯にある。
水晶や長石の良品を探そうと思えば、ガマ(晶洞)を開けるのが一番だが、希
元素鉱物などは、自然崩落したペグマタイト(巨晶)片(誰も欲しがらない)から発
見できることが多い。
どのチタン鉱物が共存するペグマタイト(巨晶)部分があったら、小割りにしながら
ルーペや実体顕微鏡を使って、注意深く探すと良いだろう。
4. 採集鉱物
(1) イットリウムエシキン石/エシキン石-(Y)【ASCHYNITE-(Y):(Y,Fe,U,Th)(Ti,Nb,Ta,W)2(O,OH)2】
黒褐色、ガラス質の短柱状結晶で、ペグマタイト質長石巨晶の中に石英に
接して産するケースと、晶洞壁を埋めるカリ長石(微斜長石)の結晶の上に
結晶して見られるケースもある。
全体 結晶部分
エシキン石
:希土類元素)やHFSE(High Field Strength Elements:Ti4+、Nb5+、Ta5+、Zr4+
など、イオン価の大きい液相濃集元素)を主成分とした鉱物を含む場合が多い。
エシキン石グループは、代表的なREE−HFSE 複合酸化物の1つで、組成は
AB2O6(A=Y,REE,Ca,Th,Uなど、B=Ti,Nb,Ta,W,Feなど)で表される。
Aの部分がイットリウム(Y)、Bの部分がチタン(Ti)を主成分とするものをイット
リウムエシキン石と呼ぶ。
イットリウムエシキン石は世界的には希な鉱物ではないが、日本では、山梨県
黒平でちょうど10年前に発見され、ほかには、岐阜県蛭川村そして三重県湯の山
温泉の3箇所での産出が知られているだけである。
エシキン石に伴って、産出する鉱物の主なものは、下表の通りである。この
ほか、鉄雲母【ANNITE:KFe3AlSi3O10(OH,F)2】や緑泥石
【chlorite:(Mg,Fe,Mn,Ni)6-x-y(Al,Fe3+,Cr,Ti)y□x(Si4-xAlx)O10(OH)8】などが
観察できる。
産出してもおかしくない、と思われるであろう。
鉱物
(英語名)化学式 標本写真 備 考
苗木石
/変種ジルコン
/ジルコン
(Naegite
/Altered Zircon
/ZIRCON
ZrSiO4
(Zr,Hf,Y,etc)
(Si,Nb,Ta)O4
etcには、
UO2やThO2そして
Fe2O3が各々数%
含まれることが多いフェルグソン石
(FERGUSONITE-(Y))
YNbO4
他にUO2、ThO2
Fe2O3そしてTiO2などが
0.数〜数%含まれる
ことが多い鋭錐石
(ANATASE)
(RUTILE)TiO2
鋭錐石
ルチル
チタン鉄鉱
(ILMENITE)FeTiO3
粒状結晶の集合で
磁石に吸引
5. おわりに
(1) 待ち受け採集
以前、「一柳鉱山の亜砒藍鉄鉱」のページの”おわりに”で次のように書いた。
注目しても、次のようにいくつかの楽しみがある。
『 狙った鉱物標本を採る 』
A 訪れた産地では過去に報告がなかった鉱物を”偶然”採集する。
『 まぐれ当たり採集 』
B Aと言う”△△塩鉱物”が出るのだから、それと化学式が似たBという鉱物が
採集できるはずという、いわば
『 待ち受け採集 』
C 新しい産地を探し出す。( 採れる採れない、は別にして )
『 新産地開拓(再発見) 』 」
”読み(?)”が当たった感じで、ひときわ嬉しい。
友・Kさん夫妻(ヘナK小隊長+兵長)、三重県・Tさんとともに、三重県湯の山温
泉で、念願だった「エシキン石」の自形結晶を採集し、産状、色、形を飲み込んで
おけたからで、案内、同行いただいた石友に感謝している。
地元山梨県甲府市の黒平だ 』、というこだわりであろうか。
松原先生の「日本産鉱物標本」によれば、黒平のエシキン石が報告されたのは
今からちょうど10年前、1998年に「岩石鉱物鉱床学会誌」上だったらしい。
原著論文を読みたいと思っている。
2008年新春に、大勢の石友から年賀状をいただいた。私が「黒平のエシキン石」に
執心なのを知ってか、一番古い石友・愛知のKDさんの年賀状に次のような書き
込みがあった。
付いています。昔、採集された○○石、△△△△石の中にあるかも知れま
せんネ 』
6. 参考文献
1) 長島 乙吉、弘三:日本希元素鉱物,日本砿物趣味の会,昭和35年
2) 松原 聰、宮脇 律郎:日本産鉱物型録,東海大学出版会,2006年
3) 遠藤 俊介 et al.:三重県菰野町湯の山温泉産イットリウムエシキン石
地学研究vol56 No3,財団法人益富地学会館,2007年