2013年7月 ミニ ミネラル・ウオッチング







         2013年7月 ミニ ミネラル・ウオッチング

1. はじめに

    私のHPを見て頂き、産地の情報を提供したり、案内して差し上げた人たちと春と秋に
   ミネラル・ウオッチングを開催するようになって14年目を迎えた。
    2013年6月、「月遅れGWミネラル・ウオッチング」を開催し、常連さんに新しい顔ぶれも
   加わり、、和気藹々(わきあいあい)のミネラル・ウオッチングになった。

   ・2013年月遅れGWミネラルウオッチング
   ( Mineral Watching Tour , Jun. 2013 , Nagano Pref. )

    初日に訪れた産地の水晶標本が余りにも素晴らしいものだったので、14年の歴史で
   初め、”同じ産地で連荘(れんちゃん)”となった。
    このことは、日本産新鉱物を当てにしていた参加者連、特にベテラン勢からは不満だった
   ことを察して、7月に山梨県のマンガン鉱山跡を訪れる「ミニ ミネラル・ウオッチング」の開
   催を約束してお別れした。

    新産鉱物を楽しみにし、直前でキャンセルになった京都・Nさんの都合に合わせ日程や
   集合時間を決めた。マンガン鉱山だけでは、参加者(=湯沼鉱泉の宿泊客)も少ないだろ
   うと、2日目に川上村の水晶鉱山、3日目に6月のミネラル・ウオッチングで訪れた鉱山跡を
   訪れる計画にした。

    初日、関西勢の出発時間に合わせ、「○○IC」出口に正午集合という、変則的なスタート
   だ。
    ベテランを中心に女性1名を含め9名が集合し、初対面の方もいるので、自己紹介の後、
   マンガン鉱山Aをめざした。産地に着いて、まず、夏のミネラル・ウオッチングの定番、スイ
   カを冷たい沢水に浸す。

    鉱山跡の”ズリ”と思しきところから「二酸化マンガン鉱」を伴う鉱石を掘り出し、ハンマー
   で割ったり、沢水で洗って鑑定する。量的には少なくないようで全員が新鉱物を手にでき
   た。

     
           新鉱物「マンガノパンペリー石」
                【撮影:O(弟)】

    帰る前に、冷えたスイカを切り分けてみんなでいただく。

    再び車に乗り、マンガン鉱山Bを目指す。途中の「道の駅」でトイレ休憩だ。車を止め、産
   地に着き、”ズリ”を掘ると、鉱山Aにあったと同じような新鉱物を含む標本を全員が採集で
   きた。

    再び「道の駅」でトイレ休憩の後、今夜の宿・湯沼鉱泉を目指す。清里を過ぎたあたりか
   ら雷雨が激しく降り出した。湯沼鉱泉に着くと、現地集合の4名がすでに待っていた。

    入浴してサッパリしたところで、19時から夜の部スタートだ。司会は宴会部長・東京のKさ
   んで、三重・O(兄)の乾杯の音頭で冷えたビールを飲むと今日一日の疲れが吹き飛ぶ。
    お姐さんが腕によりをかけた料理に舌鼓を打ちながら、皆さんの近況報告を聞く。20時
   過ぎに宴会がお開きになり、お待ちかねの「オークション」と「玉手箱」だ。

    長野・MTさんがオークショナーになり、鉱物名・産地・出品者そして落札者と金額を私が
   持参したPCのエクセルシートに会計のTさんが入力してくれる段取りだ。
    オークションのトップがいきなり新鉱物「宮久石」、しかも4つだ。私を含め欲しい4人がジ
   ャンケンし、勝った順に気に入った標本を取る。
    目の肥えたベテランが多いせいか、金額は伸びない。「100円!」と言ったきり、後が続か
   ない。それでも、総売り上げは10,000円を超え、一人当たり1,000円弱宿泊費が安くなった
   勘定だ。
    「玉手箱」は、人数も少ないので、いきなり取り放題だ。『西沢金山のルビーシルバー』
   なども混ぜて置いたのだが、目聡い人たちに貰われていった。

    大人の時間では、滋賀・Nさん差し入れの大吟醸・旭日をいただきながら鉱物談義に花
   を咲かせる。翌日訪れる産地での作戦と次回のミネラル・ウオッチングの訪問地が話題の
   中心だ。
    22時を回り、朝早かった人も多いので、消灯時間だ。

    2日目、長野・MZさんも加わり総勢14名だ。恒例の湯沼鉱泉社長を囲んで記念写真を
   撮った後、水晶産地を目指して出発だ。

     
          湯沼鉱泉社長を囲んで記念写真
                 【撮影:O(弟)】

    林道を進み、途中でMH農園のスイカを沢水に漬ける。
    産地に着くと、昨夜練った作戦通り、縦坑のズリ石をバケツで運び出し、晶洞を求めて
   タガネとハンマーで露頭を叩く。手のあいた人はズリや他の場所で露頭を叩いている。
    石友・Yさんと来ると大概(たいがい)午前中に晶洞(ガマ)が開くのだが、気が付けば昼
   時だ。

    お姐さん手作りのお弁当をいただき、元気を回復したK兄弟と露頭を叩く。”ガポッ”と音が
   して、タガネが吸い込まれる。その穴の周りを広げると晶洞だ。「ガマが開いた!!」、と
   皆さんを呼び集め、晶洞の中でどのように水晶が成長するのか観察していただく。

     晶洞(ガマ)が開いた!!【撮影:O(弟)】

    慎重にガマから水晶を取り出し、新聞紙の上に並べてもらう。何個かずつ全員が持って
   帰れそうだ。
    15時を回り、私を除き”ジャンケン”で順番を決めてもらい、勝った順に欲しい標本を取っ
   てもらう。最下位が2つとり、下位から上位の順にとって行くなど”民主的”なルールだ。

    帰路の途中で、沢水に漬けて置いて”キンキン”に冷えたスイカを切り分けて食べる。
   甘味が強く、疲れた身体にピッタリだ。
    駐車場に戻り、再会を約束して、皆さんとお別れした。

    連泊組4名(女性1名)が宿の湯沼鉱泉に戻ったのは17時過ぎだった。湯沼鉱泉の「水
   晶洞」をしみじみ見た人が少ないようなので、3名を案内しながら解説する。
    水芭蕉園、湯沼大池を巡って事務所に戻ったのは、18時30分だった。急いで入浴し、
   19時から夕食だ。前夜の鍋と違って陶板焼きだ。美味しくいただき、20時を回った頃、「蛍
   鑑賞」に出かけたが一匹も眼にできなかった。どうやら、3日前に消えてしまったようだ。

    宿に戻って、私の部屋で「大人の時間」だ。山梨の「七賢」などを飲み、翌日の作戦会議
   だ。ガマ開けの疲れもあり、早めに21時でお開きとさせてもらう。

    3日目、朝起きると雨模様だ。朝食を済ませ、お弁当を持って出発だ。途中、かなり激しく
   降っている。
    車を停め、雨支度をして産地に向かう。社長とお姐さんに教えてもらった私にとって初め
   ての道をたどり、ようやく見覚えのある場所に着いた。
    皆さんにズリ採集してもらっている間に、露頭の脈を観察すると晶洞の糸口(弦:つる)が
   読めた。タガネを3本打ち込んで、バールで大きな岩を取り除くと、晶洞が現われた。この間、
   わずか10分。「ガマが開いた!!」、と3人を呼び集め、この産地の晶洞と水晶の産状を
   観察してもらう。
    EさんとAさんに”作業指示”して、私は”ズリ”に向かう。ここで、気になる鉱物の頭付を
   狙っていたのだ。Tさんとズリを掘ると、頭付きがあった。そうこうすると、「こんな大きな
   群晶が採れました!!」、とAさんが呼ぶ。
    露頭を観察し、不要な岩を取り除くと、晶洞が伸びているようだ。2人にまた”作業指示”
   して、ズリにもどる。こんなことを繰り返していると採集品が増え、「群晶」と「単晶」を分けて
   新聞紙の上に並べてもらう。雨はとっくに止んでいた。

    採集を始めて2時間ほどで、かなりの量の採集品が集まった。ジャンケンで勝った順に
   好きな品を取ってもらう。私が一番だが、「群晶」、「単晶」それぞれ3つほど取った時点で
   残りは3人にお任せした。
    単晶は全部引き取られたが、群晶はかなりの数残り、次の人のためにズリに置いてきた。
   ちょうどお昼になり、雨も降りそうだし、記念写真を撮って、撤収だ。

     鉱山跡記念写真

    車に戻り、お弁当を食べ、皆さんとお別れし、帰宅したのは15時前だった。

    今回も素晴らしい標本を採集でき、マンガン産地を教えてくれた山梨・Tさん、川上村の
   水晶産地や鉱山跡を教えてくれた湯沼鉱泉・社長、そしていつも美味しい料理でもてなし
   てくれる湯沼鉱泉のお姐さんに感謝している。

    次回も多くの石友とご一緒できるのを楽しみにしている。
    ( 2013年7月 採集 )

2. 【第1日目】

 (1) 「○○IC」出口に集合
      いつもミネラル・ウオッチングなら、5時前後に家を出るのだが、今回は、集合時間が
     正午、というミネラル・ウオッチング始まって以来の変則的なスタートだ。
      日課のNHK朝ドラ「あまちゃん」を見てもまだまだ時間がある。すると、携帯が鳴った。
     Tさんから、「道が混んでいて、遅れるかも知れない」、とのこと。夏休みに入って、土日
     の下り線は渋滞がひどいようだ。
      10時に自宅を出る。ガソリンスタンドで、満タンにする。円安のせいで、リッター157円
     と高い。私のような年金生活者には、デフレも悪くはないのだが・・・・・・・。
      ついで、酒の量販店に行き、今夜の「大人の時間」用に地元の酒を買う。集合場所の
     「○○IC」に向けて走ると、ラーメン屋があったので、早めに昼食だ。
      Tさんに連絡取ると出ない。と言うことは、運転中で順調に走っている証拠か。熱い
     ラーメンを2口、3口すすった、と思ったら、携帯が鳴る。O(兄)から、「三重県以西4名
     昼食中。IC出口に駐車スペースないため、コンビニで待つ」、とのこと。また、携帯が鳴
     り、Tさんに「コンビニ集合」を伝える。
      1kmほど走ってコンビニに行くと、長野・MTさん、愛知・KDさん、千葉・Aさん、神奈川・
     Tさんが集まっている。ここで、乗り合わせするのに駐車場を使わせてもらうので、忘れ
     たポカリ3本と暖かい煎れたてコーヒーを注文する。
      やがて、三重県以西組4名も到着だ。三重・O(兄)、滋賀・Nさん、O(弟)、そして京都・
     Nさんだ。全員揃い、初対面の人もいるので自己紹介の後、車3台に分乗し、産地に向
     かう。

        自己紹介【撮影:O(弟)】

 (2) 新鉱物「マンガノパンペリー石」を探せ!!
      地元山梨に住むTさんに案内してもらいマンガン鉱山Aで採集したマンガン鉱物を
     O(弟)が新鉱物の発見者である加藤先生にみていただき、「マンガノパンペリー石」、
     しかも『富鉱体』、だと折り紙をつけていただいた。

      ・ これぞ、『マンガノパンペリー石』
       ( That's Pumpellyite-(Mn) from Ochiai Mine , Yamanashi Pref. )

      一番それらしい”針状結晶”をO(弟)に託し、加藤先生に見ていただいたところ、「カリ
     オピライト」の自形結晶で、これはこれで珍しい標本だった。

      ・ 『マンガノパンペリー石』余聞
       ( Another Story of Pumpellyite-(Mn) from Ochiai Mine , Yamanashi Pref. )

      ”針状結晶”を入手した段階で、「マンガノパンペリー石」標本を捨ててしまっていた。
     正直のところ、新鉱物がこんなに簡単に手に入るはずがない、と思うほど楽に採集でき
     たからだ。
      「月遅れGWミネラル・ウオッチング」に先立って2013年6月、2回目の訪問をしたときも
     この印象は変わらなかった。
      ( これがあったので、皆さんを案内しようと思った訳だ )

      車を降りて、マンガン鉱山Aをめざした。産地に着いて、まず、夏のミネラル・ウオッ
     チングの定番、MH農園産、無農薬スイカを冷たい沢水に浸す。

      鉱山の坑口は残っていないが、”ズリ”と思しきところから「二酸化マンガン鉱」を伴う
     鉱石を掘り出し、ハンマーで割ったり、まっ黒い泥を沢水で洗って落して鑑定する。ポイ
     ントは”色”が決め手だ。
      以前からの印象通り、量的には少なくないようで、全員が新鉱物を手にできた。

          
                ズリを掘る                      沢水で洗って鑑定
                        「マンガノパンペリー石」採集風景

      この産地を後にする前、冷えたスイカを切り分けてみんなでいただく。また、皆さんに
     ”この産地はTさんに教えてもらった産地なので他言しない”、よう念を押させていただいた。

        よく冷えたスイカ

 (3) 『 A=C、B=A、∴(故に)B=C 』
      マンガン鉱山Aの近くに、マンガン鉱山Bがあることは山梨に転勤になって間もなく知
     り、探査の結果場所を突き止め、石友を案内して何回か訪れたことがあった。
      ここで採集できたマンガン鉱石が「マンガノパンペリー石」にそっくりなのだ。鉱山Aで
     採れる鉱物Aは「マンガノパンペリー石」(C)であり、マンガン鉱山Bで採れる鉱物Bが
     鉱物Aと同じであれば、鉱物Bも「マンガノパンペリー石」(C)になる。

      マンガン鉱山Bに向かう途中の「道の駅」でトイレ休憩だ。車を停め産地に着き、”ズリ”
     を掘ると、鉱山Aにあったと同じような新鉱物を含む鉱石があった。

          
                産地に向かう                      採集風景
                                             【撮影:Tさん】
                             マンガン鉱山B

      ここでも、全員目的の鉱物が採集できたようで、引き上げることにした。O(兄)が、
     マンガン鉱山Bが載った鉱物採集ガイド誌のコピーを持参していた。それによると、ここ
     でも「マンガノパンペリー石」が採集できる、とある。ただ、産地入口の位置が電柱1本
     分ズレている。以前私が探査した時、他に鉱山跡は見つからなかったが、人数が多い
     この日、一列横隊になって山の斜面を再度調査したが他にそれらしい場所はなかった。
      ちなみに、鉱物採集ガイド誌にあるマンガン鉱山Aの位置もわれわれが訪れた場所
     とは似ても似つかない場所にプロットされている。

 (4) 湯沼鉱泉に集合だ
      再び「道の駅」でトイレ休憩とする。売り場をのぞくと、この地域特産のプラムを売って
     いるので、人数分買って食べる。甘酸っぱくて、クエン酸が一杯だ。「貴陽(きよう)」、と
     いう種類で、種が小さい新種だ。

      「 貴陽を食べて、明日は器用に晶洞を開けよう!! 」、と駄洒落を飛ばしたが、うすら
     寒い風が吹き抜けただけだった。

      市街地まで下り、コンビニに止めた各自の車に乗って湯沼鉱泉を目指す。私は、「○
     ○IC」から入り、「須玉IC」で下り、Tさんを乗せて141号線を走る。閃光が走ったかと
     思うと雷鳴がとどろく。清里を過ぎる辺りから雨が降り出し、ワイパーを最速にしても前
     が見にくいほどだ。
      川上村に入っても雨の勢いは衰えない。18時少し前に湯沼鉱泉到着だ。傘をさしても
     荷物を出すのに身体が濡れてしまう。

      社長とお姐さんに挨拶する。現地集合の4名、千葉・Eさん、東京・Kさん、茨城・K兄弟
     がすでに待っていた。EさんとK兄弟は、川端下(かわはけ)の水晶ズリで水晶を採集し
     てきた、とのことだった。

      【後日談】
       「大人の時間」の後、1号室をのぞくと、K兄弟の兄が洗った川端下産の水晶がテー
      ブルに並べてあった。
       「 泥付きの時は大きくて良いな、と思ったが、洗ってみたら今一つだ 」、と気落ち
      している。

       「 川端下の水晶はこれが特徴だ。1,2本サンプルとして持っていれば十分。
         ただ、あそこでは、『鎌形水晶』、と呼ぶ日本式双晶が出るから、これを狙うなら
        何回でも通う価値がある。 」、と私の見解を述べた。

      この日は、MTさんの後輩・N大の男女学生が12名宿泊し、宿泊客が30名近くになり、
     湯沼鉱泉は一段と賑やかだ。

3. 「湯沼鉱泉」の夜は更けて

    参加者が持ち寄った重品標本を担当役員と「オークション」用と「玉手箱」用に選り分け
   させていただき、それぞれのテーブルに並べていく。「オークション」品だけで、40点を
   超えているようだ。
    私が持参したPCの中に作っておいた鉱物名・産地・出品者そして落札者別に金額が入
   力でき、落札者の合計金額も一目でわかるエクセルシートを開いて準備完了だ。

    お風呂を浴び、宴会の開会を待つばかりとなった。川上村に入った時の気温が19℃しか
   なく、真夏と思えない涼しい(肌寒い)湯沼鉱泉では、”アツアツ”のお風呂が何よりだ。

 A) 宴会
     19時から、大広間に集合し、「宴会部長」の東京・Kさんの名司会で、盛大な宴会のス
    タートだ。三重・O(兄)の乾杯の音頭で冷えたビールを飲むと今日一日の疲れが吹き飛
    ぶ。

     テーブルには、お姐さんが腕によりをかけた料理が並んでいる。岩魚と大きなエビの
    塩焼き、トマト、胡瓜の酢の物、天ぷら、そして鍋とボリュームも満点だ。
     ビールやジュースが入ると座は一段と和やかになる。参加者全グループの近況報告が
    あり湯沼鉱泉の夜は更けていった。

          
                紅一点・Tさん                   久々に参加のNさん
                                近況報告

      食事の締めに、うどんを鍋に入れて、熱いのを食べる。こうして、宴も幕を閉じ、皆さま
     お待ちかねの「オークション」と「標本玉手箱」に移った。

 B) オークション
     恒例となっている「オークション」は、私の所属する「鉱物同志会」で採用されている
    「逆ブービー方式」と呼ばれ、2番目に高い値段を付けた人が、落札する権利を得る
    方式を採用していた。
     2008年、売上金を社長へのお見舞金に回すため”青天井方式”を試行したところ、
    皆さん良識があり、悪戯(いたずら)に、価格は引き上がらないことが分かったので、
    今回も”青天井方式”にした。

     オークショナーをMTさん、記録を会計のTさんにお願いした。

          
             オークショナー・MTさん                    記録・Tさん
                              オークション風景

     オークションのトップがいきなり新鉱物・「宮久石」、しかも4つだ。私を含め、欲しい4人
    がジャンケンし、勝った順に気に入った標本を取る。
     次々と標本が出てくるが、目が肥えて、収集のレベルも高いベテランが多いせいか、
    金額は伸びない。「100円!」と言ったきり、後が続かない。それでも、総売り上げは
    10,000円を超え、一人当たり1,000円弱宿泊費が安くなった勘定だ。

     Tさんが入力してくれた、オークション結果を一覧表に示す。

No 鉱物名 産地 提供者 落札者 落札
価格
1 宮久石 下払鉱山 O(兄) O(弟) 600
2 宮久石 下払鉱山 O(兄) MH 600
3 宮久石 下払鉱山 O(兄) 長野・MTさん 600
4 宮久石 下払鉱山 O(兄) 愛知・Kさん 600
5 黒曜石 和田峠 O(弟) 千葉・Aさん 200
6 黒曜石 和田峠 O(弟) MH 100
7 三稜石 御前崎 O(弟) 長野・MTさん 200
8 紫水晶 佐嚢 京都・Nさん 千葉・Aさん 300
9 紫水晶 佐嚢 京都・Nさん Tさん 300
10 紫水晶 佐嚢 京都・Nさん 東京・Kさん 300
11 紫水晶 佐嚢 京都・Nさん 長野・MTさん 300
12 紫水晶 佐嚢 京都・Nさん 東京・Kさん 300
13 レインボー柘榴石 奈良天川村 京都・Nさん K兄弟 300
14 鉄重石華 鐘打鉱山 京都・Nさん 長野・MTさん 100
15 鉄重石 鐘打鉱山 京都・Nさん 千葉・Aさん 100
16 苦土電気石 鐘打鉱山 京都・Nさん MH 100
17 苦土電気石 鐘打鉱山 京都・Nさん 長野・MTさん 100
18 紫水晶 金平 京都・Nさん 東京・Kさん 900
19 藍鉄鉱 精華町 京都・Nさん MH 100
20 燐灰石 鐘打鉱山 京都・Nさん O(兄) 100
21 ルビーシルバー+黄粉銀鉱 西沢金山 MH O(兄) 400
22 ルビーシルバー+黄粉銀鉱 西沢金山 MH 長野・MTさん 400
23 ルビーシルバー+黄粉銀鉱 西沢金山 MH 京都・Nさん 400
24 まんばん柘榴石(母岩付き) 和田峠 MH Tさん 100
25 まんばん柘榴石(母岩付き) 和田峠 MH O(兄) 100
26 まんばん柘榴石(母岩付き) 和田峠 MH 京都・Nさん 100
27 まんばん柘榴石(母岩付き) 和田峠 MH 長野・MTさん 100
28 黒辰砂 勢和村 京都・Nさん MH 100
29 透輝石 洞戸 京都・Nさん O(兄) 100
30 中宇利石 中宇利鉱山 京都・Nさん 千葉・Aさん 200
31 マンガン斧石 倉木鉱山 愛知・Kさん 長野・MTさん 100
32 マンガン斧石 倉木鉱山 愛知・Kさん MH 200
33 バナジン鉛鉱 数坂峠 愛知・Kさん O(弟) 600
34 緑水晶 牧丘町 O(兄) Eさん 400
35 紫水晶 カナダ Eさん O(兄) 200
36 デソーテルス石 白木 O(兄) 長野・MTさん 100
37 タラナギ石 尾平鉱山 滋賀・Nさん O(弟) 100
38 水晶 桑木津留 O(兄) Tさん 200
39 ジオード メキシコ Eさん K兄弟 300
40 ヘソ石 和田町 MH Eさん 100
41 赤鉄鉱 飯山市笹沢 長野・Mさん MH 100
42 方沸石 間瀬 長野・Mさん MH 100
43 松茸水晶 三重県船津 O(兄) 長野・MTさん 100
44 翡翠輝石 金山谷 長野・Mさん O(弟) 600

     【後日談】
      帰宅後、新鉱物「宮久石【MIYAHISAITE】」について調べてみた。「宮久石」は、大分
     県佐伯市下払(しもはらい)鉱山から産出し、九州地方の鉱床研究に多くの業績を残し
     た大分市出身の宮久 三千年(みちとし)(1928-1983)にちなんで命名された。
      単純化した化学式は、(Sr,Ca)2Ba3(PO4)3Fで、「燐灰石」などと同じ(PO4)を含む
     リン酸塩鉱物だ。

      「宮久石」は、アパタイト(燐灰石)を置換し、不定形の無色透明で、最大0.1mm程度
     の集合体を形成する、とあるから鑑定の難しさは「伊勢鉱」以上かも知れない。

      ”甘茶”の私としては、次のような産状から、”この辺りにあるはず”と信じるしかなさ
     そうだ。

      『 「黒色層」:ブラウン鉱(Brn)を含む
        「紫色層」:ナマンシル輝石(Nm)を含む
               (MH注:ナマンシル輝石は国内ではここでしか産出が確認されていない)
        「褐色層」:エジリン(Aeg)を主体とする

        「宮久石」は、この褐色層に沿って、紫色層との境界付近に”稀に”点在する。 』

       
                      「宮久石」【O(兄)提供】

 C) 「標本玉手箱」
     故益富寿之助博士が始められたと同じように、参加者が入手した重品を持ち寄って、
    欲しい人に無料で配布する「標本玉手箱」を今回も開催した。担当は、千葉・Aさんだ。

        「玉手箱」【撮影:O(弟)】

     人数も13名といつもの半分以下なので、いきなり取り放題だ。『西沢金山のルビー・
    シルバー』なども混ぜて置いたのだが、目聡い人たちに貰われていった。

 D) 「大人の時間」
     初日の締めは、『大人の時間』で、滋賀・Nさん差し入れの大吟醸・旭日をいただきなが
    ら鉱物談義に花を咲かせる。

        大吟醸「旭日」【滋賀・Nさん差入れ】

     翌日訪れる水晶産地の状況を説明し、チームで採集する作戦を練る。次回のミネラル・
    ウオッチングの候補地が話題の中心だ。西の方の参加者は、群馬、栃木など北関東の
    産地に御執心のようだ。

     22時を回り、朝早かった人も多いので、消灯時間だ。

4. 【第2日目】

 (1) 2日目のスタートだ!!
      早朝、3時ごろから1分置きくらいに”爆音”がする。前の日、お姐さんから、「鹿追いの
     大きな音がするから、お酒を飲んで寝て下さい」、言われた”アレ”だ、と合点する。
      二度寝してしまい、気づいたら6時40分だ。慌てて飛び起きて、風呂場のお湯で髭を
     剃る。天気は良さそうだ。

      7時から朝食をいただく。その前に、会計係のTさんから、オークションの売り上げと
     個人別徴集額が伝えられる。

        会計報告・Tさん

      売上金額は人数が少ないせいもあり、11,400円、といつもの1/3〜1/5だ。それでも
     宿泊者が13名なので、1人当り900円弱宿泊費が安くなる勘定だ。

      全員揃って、”いただきま〜す”。

      朝食が終わるころ、当日参加の長野・MZさんが事務所に姿を見せた。「湯沼鉱泉」を
     出発する前に、恒例となっている湯沼鉱泉社長を交えての全員で記念写真を撮影する。

 (2) 晶洞(ガマ)開けに挑戦だ!!
      車を停め、だらだらの登山道を進む。5月ごろ気づいたのだが、〆縄を張った小さな
     お堂がある。今日、ガマが開くことと安全を願って手を合わせる。
      急な坂を登り詰めて水晶産地に到着だ。前夜練った作戦通り、縦坑のズリ石をバケツ
     で運び出す。30分ほどで岩盤が見えてきた。

       ひたすら”ガマ”を求めて【撮影:O(弟)】

      晶洞を求めて、ひたすらタガネとハンマーで露頭を叩く。手のあいた人はズリや他の
     場所で露頭を叩いている。
      石友・Yさんと来ると大概(たいがい)午前中に晶洞(ガマ)が開くのだが、気が付けば
     昼時だ。

      お姐さん手作りのお弁当をいただき、元気を回復したK兄弟と露頭を叩く。”ガポッ”と
     音がして、タガネが吸い込まれる。
      その穴の周りを広げると晶洞だ。「ガマが開いた!!」、と皆さんを呼び集め、晶洞の
     中でどのように水晶が成長するのか観察していただく。
      慎重にガマから水晶を取り出し、新聞紙の上に並べてもらう。何個かずつ全員が持っ
     て帰れそうだ。
      15時を回り、またも私を除き”ジャンケン”で順番を決めてもらい、勝った順に欲しい
     標本を取ってもらう。最下位が2つとり、下位から上位の順にとって行くなど”民主的”な
     ルールだ。

         
                  ジャンケン                   一番籤・K兄弟(兄)
                 【撮影:O(弟)】
                              採集品分配

      一番籤を引いたのは、茨城・K兄弟の兄だ。ズリ石の掻き出しや露頭叩きで他の人と
     違う働きぶりを見ている参加者の皆さんの口から、『神様は見ているんだ』、との声が
     出て、納得のようだ。

      産地を後にする前に、記念写真だ。

       
                 ○○○記念写真
                 【撮影:O(弟)】

      帰路の途中、行きしなに沢水に漬けて置いて”キンキン”に冷えたスイカを四角い、
     まな板にお誂えむきの岩の上で切り分けて食べる。甘味が強く、疲れた身体にピッタリ
     だ。

        スイカを切り分ける

      途中のお堂で、今日の成果と安全のお礼をして、駐車場に向かった。

        お礼参り

      駐車場に戻り、再会を約束して、お別れだ。

 (3) 湯沼鉱泉「水晶洞」見学
      連泊組4名(女性1名)が宿の湯沼鉱泉に戻ったのは17時過ぎだった。湯沼鉱泉の
     「水晶洞」をしみじみ見た人が少ないようなので、3名を案内しながら解説する。
      湯沼や甲武信鉱山の地質、鉱床の成因、そして湯沼鉱泉「水晶洞」のみどころなど、
     小中学生に話している内容だ。

 (4) 湯沼鉱泉の夜は更けて
      「水晶洞」を出て、水芭蕉園、湯沼大池を巡って事務所に戻ったのは、18時30分だっ
     た。急いで入浴し、19時から夕食だ。お姐さんが毎日違った献立になるよう気を配って
     くれ、前夜の鍋と違って陶板焼きだ。

        「陶板焼き」

      美味しく夕食をいただき、20時を回った頃、「蛍鑑賞」に出かけたが一匹も眼にできな
     かった。どうやら、3日前に消えてしまったようだ。

      宿に戻って、私の部屋で「大人の時間」だ。山梨の「七賢」などを飲み、翌日の作戦
     会議だ。ガマ開けの疲れもあり、早めに21時でお開きとさせてもらう。

5. 【第3日目】

 (1) 鉱山跡へ
      3日目、朝起きると雨模様だ。いつものように、朝7時から朝食だ。味噌汁は、O(弟)
     が御執心の『アサリ汁』だ。この日も、露頭叩きで晶洞(ガマ)開けなので、シッカリ2膳
     いただく。

        「アサリ汁」つき朝食

      支払いも済んで、社長。お姐さんにお礼を言って、お弁当を持って出発だ。
      ( 2日目、お弁当を忘れた人がいた、とお姐さんが教えてくれた。お姐さんと私の口
       から同時に「○○さん」の名が出たが、Tさんが「食べていたよ」、と言うので違う人
       らしい。Tさんが、「そう言えば、お昼の時もズリを掘っていた」、△△さんのようだ。)

      途中の駐車場で3人に私の車に乗ってもらい古い鉱山跡をめざす。かなり激しく雨が
     降っている。車を止め、雨支度をして産地に向かう。社長とお姐さんに教えてもらった
     私にとって初めてのルートをたどり、ようやく見覚えのある場所に着いた。

      皆さんにズリ採集してもらっている間に、露頭の脈を観察すると晶洞の糸口(弦:つる)
     が読めた。タガネを3本打ち込んで、バールで大きな岩を取り除くと、晶洞が現われた。
     この間、わずか10分。「ガマが開いた!!」、と3人を呼び集め、この産地の晶洞と
     水晶の産状を観察してもらう。

        鉱山跡露頭【撮影:Tさん】

      EさんとAさんに”作業指示”して、私は”ズリ”に向かう。ここで、気になる鉱物の頭付
     を狙っているのだ。Tさんとズリを掘ると、頭付きがあった。

        ズリ掘り・Tさん

      そうこうすると、「こんな大きな群晶が採れました!!」、とAさんが呼ぶ。露頭を観察
     し、不要な岩を取り除くと、晶洞が伸びているようだ。2人にまた”作業指示”して、ズリに
     もどる。
      こんなことを繰り返していると採集品が増え、「群晶」と「単晶」を分けて新聞紙の上に
     並べてもらう。雨はとっくに止んでいた。

        採集品

      採集を始めて2時間ほどで、かなりの量の採集品が集まった。ジャンケンで勝った順
     に好きな品を取ってもらう。私が一番だが、「群晶」、「単晶」それぞれ3つほど取った時
     点で残りは3人にお任せした。
      単晶は全部引き取られたが、群晶はかなりの数残り、次の人のためにズリに置いて
     きた。

      車に戻り、お弁当を食べ帰路についた。途中、行くときに手を合わせた山神宮にお礼
     をするのを忘れなかった。

        「山神宮」

      駐車場に戻り、Eさん、Aさんと別れ、Tさんを「須玉IC]まで無事送り届け、帰宅したの
     は15時前だった。

6. おわりに

 (1) 『 ミネラル・ウオッチング 』 の舞台裏

     大勢の人を案内して、狙ったものを皆さんが採れるか、それがいつも気がかりだ。水晶
    の「日本式双晶」のように、絶対数が少なく全員が採るのは無理と、石友の間で常識に
    なっていれば別なのだが・・・・・・。

     初日の新鉱物「マンガノ・パンペリー石」は、量的には少なくないので、全員採れるだろ
    うとの目算があった。
     しかし、鉱物採集ガイド誌の地図や説明を頼りに、マンガン鉱山に行きつくことは不可
    能だ。マンガン鉱山Aを案内してくれた、地元山梨のTさんに感謝している。

     2日目、3日目は、晶洞(ガマ)開けに挑戦、という無謀な(?)ミネラル・ウオッチングだ。
    ガマが開けられる予感はあったが、十数人で分けるとなるとそこそこ大きなガマでないと
    無理だ。
     山神様と、川上村の水晶産地や鉱山跡を教えてくれた湯沼鉱泉・社長のお蔭で、ガマ
    が開き、”ホッ”と胸をなで下ろしている。

     皆さん、次回のミネラル・ウオッチングを楽しみにしてくれているようなので、この集まり
    が、永く続くよう、企画したいと考えている。
    ( 月遅れでなく、『月例』、でという声もあるのだが・・・・・ )

7. 参考文献

 1) 藤本 治義:南佐久郡地質誌,社団法人 南佐久教育会,昭和33年
 2) 山田 滋夫:日本産鉱物 五十音配列 産地一覧表,クリスタル・ワールド,2004年
 3) 松原 聰:鉱物 ウオーキングガイド 全国版 ,丸善株式会社,2010年
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