『マンガノパンペリー石』余聞







          『マンガノパンペリー石』余聞

1. 初めに

    山梨県で世界で最初に発見された鉱物の1つ「マンガノパンペリー石」の採集・鑑定結果に
   ついては何回か報告した。
    滋賀の石友・Oさんの仲介で加藤先生にみていただいたところ、”これは違うだろう”と思った
   標本が、正真正銘の「マンガノパンペリー石」で、しかも”富鉱体”だという意外な結果だった。

    ・       これぞ、『マンガノパンペリー石』
      ( That's Pumpellyite-(Mn) from Ochiai Mine , Yamanashi Pref. )

    この結果を聞いて、一緒に落合鉱山を訪れたMさん、Tさんならずとも、”あの放射状結晶は
   何だろう?”、と思っていた。そんな時、石友・Oさんから、「加藤先生が京都に来るから、例の
   石を見てもらいます」、とのメールが入り、結晶が新鮮なサンプルを郵送した。

    その週明け、加藤先生に鑑定していただいた結果がOさんからメールで知らされた。それには
   「先生によれば、あれはカリオピライトだそうです。」、とあった。
    これぞ、『マンガノパンペリー石』の結晶だろうと思い込んでいた私にとって思いがけない結
   果ではあったが、”こんな立派な「カリオピライト」の結晶はそうそうあるものではない”、と気を
   取り直した。

    2月の最終週末、確定申告の手続きがあり久しぶりに山梨に帰ったが、甲府盆地の周りの
   山々は麓まで雪が残っていた。
    少なくともあと1ケ月は産地を訪れるのは無理そうだった。
    ( 2013年2月 編集 )

2. 産地

    落合鉱山は、南アルプス市(旧甲西町)の山中にあり、Tさんに案内していだいた場所なの
   で、詳細は割愛させていただく。

3. 産状と採集方法

    点々と落ちている真っ黒いマンガン鉱石を探し、ハンマーで割って新鮮な部分を採集する。
   今になって思うと、「マンガノパンペリー石」はさほど苦労せずに採集できた印象だった。一方、
   「カリオピライト」はMさんが採集した1個体から小割りしたものを恵与いただいたくらいだ。

4. 産出鉱物

 (1) カリオピライト【CARYOPILITE:Mn2+6Si4O10OH8
      加藤先生の「マンガン鉱物読本」には次のような説明がある。

      『 わが国ではほとんど知られていませんが、自形は六角鱗片状あるいは繊維状をなし、
       多くは微細な結晶の塊状集合を形成します。・・・・・・・褐色、赤褐色、Fe2+に富むものは
       暗褐色。ガラス光沢。比重2.91。硬度3〜4。へき開{001}に完全。条痕白。
       ・・・・・産出意義として、低変成度が挙げられます。
       ・・・・・・・・・・・・・・
        同定は、『かつぶし鉱』と俗称されるように、鰹節のような塊状の外観と色土状物質で
       光沢があり、構成物質が非常に細粒で緻密で、他の物質を余り伴いません。      』

      つまり、自形結晶の「カリオピライト」は珍しい、ということのようだ。

     
              カリオピライト
              【落合鉱山産】

5.おわりに

 (1) 続・加藤先生鑑定記
      滋賀の石友・Oさんから、加藤先生に件の石の鑑定をお願いした時の模様をメール頂い
     たので、掲載させていただく。

      『 本日加藤先生にお会いできたので、みていただきました。先生によれば、あれは
       カリオピライトだそうです。
        落合鉱山には3つの鉱床があって、ズリでは3つの鉱床からの石が混じっているそう
       です。そのうち2つの鉱床は同じタイプの鉱石ですが、あの石はあと1つの鉱床からの
       ものでしょうとのことでした。
        ・・・・・・・・・・伊勢鉱の産地ではベメント石が分析結果で見つかっているそうで、私も
       それらしいものを採集しており、それが今回送っていただいた石にそっくりです。
        正確を期すならX線などでの分析が必要かも知れません。・・・・・・・・・         』

      新鉱物・「伊勢鉱」などと、夢の広がるメールで、仲介の労をとっていただいた石友・Oさん
     に厚く御礼を申し上げる。

   (2) 産地再訪
      2月最終週末、妻の確定申告のために山梨に戻った。2012年末の修正申告をベースに、
     自分の分はインターネットで済ませておいたが、○○万円の追加徴収だった。

      確定申告会場のある甲府市内でも日蔭には雪が残り、自宅近くから見える甲府盆地周辺
     の山々は、麓まで雪に覆われていた。
      今週も雪が降る予報が出ており、産地を再び訪れるのは桜の花が咲く、少なくとも1ケ月
     後になりそうだ。

     
                  甲府盆地周囲の山々
                   【2013年2月末】

6. 参考文献

 1) 工業技術院地質調査所:日本鉱産誌(BI-C),東京地学協会,昭和29年
 2) 吉村 豊文:日本のマンガン鉱床補遺 後編,吉村豊文教授記念事業会,昭和44年
 3) 平井 進:山梨県増穂鉱山・落合鉱山,鉱物情報,1984年
 4) 加藤 昭:マンガン鉱物読本,関東鉱物同好会,1998年
 5) 松原 聰:日本産鉱物種,鉱物情報,1992年
 6) 宮島 宏:日本の新鉱物,フォッサマグナミュージアム,2000年
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