山梨を出ると所々で霧雨が降っていて、清里に近づくにつれて気温は下がり、南牧村の道路に設置された温度
計は10時近いというのに13℃を示していた。
寒さに強い白菜が収穫期を迎えているだけで、狙い通りレタス畑は収穫を終え耕されていた。しかし長雨が続き
畑のあちこちに水溜りができ、長靴を履いて歩くと泥濘に足を取られ転倒しそうになるのも度々だった。
10時から午後3時まで、昼食を挟んで4時間余り歩き回り、旧石器時代を代表する「石槍」や「コア(石核)」など
の石器とその材料として運ばれてきた石英(水晶)などの剥片を採集できた。この日は”8,9979歩”歩き、特段の
疲れやまして足腰の痛みなどを感じることもなく、ミニ・ミネラルウオッチングに向けての足慣らしができたのは何よりの
収穫だった。
( 2019年10月 体験 )
石材の種類 | 色など | 写 真 | 黒曜石 | 黒 | 赤 | 灰色 (他県産) | 頁岩 | チャート | 青白 | 赤 | 石英(水晶) | 瑪瑙(めのう) |
今回、遺跡別に観察できた石器の材料を分類した結果を半年前2019年3月の時と比較し下表に示す。
石材 | 年月 | 2019/3/1 | 2019/10/1 | 遺跡名 | N | E | W | 合 計 | N | E | W | 合 計 | 色など | 観 察 数 | 小計 | 比率 | 観 察 数 | 小計 | 比率 | 黒曜石 | 黒 | 89 | 9 | 158 | 256 | 73.1% | 99 | 18 | 11 | 128 | 75.3% | 灰 | 6 | 1 | 6 | 13 | 3.7% | 赤茶 | 3 | 3 | 0.9% | 小計 | 95 | 13 | 164 | 272 | 77.7% | 99 | 18 | 11 | 128 | 75.3% | 頁岩 | 2 | 1 | 16 | 19 | 5.4% | 2 | 2 | 4 | 2.4% | チャート | 青白 | 3 | 54 | 57 | 16.3% | 31 | 3 | 1 | 35 | 20.6% | 赤 | 1 | 1 | 0.3% | 小計 | 3 | 55 | 58 | 16.6% | 31 | 3 | 1 | 35 | 20.6% | 石英 | 水晶 | 1 | 1 | 0.3% | 2 | 1 | 3 | 1.8% | 合計 | 97 | 17 | 236 | 350 | 100% | 134 | 22 | 14 | 170 | 100% |
1) この地域で石器観察をはじめた2010年、4年後の2014年、前々回の2016年、2018年、2019年2月、
そして2019年3月の調査結果を比較してみると、その比率に大きな変化は見られなかった。
2019年3月と10月でも同じ傾向を示し、この地域の石器材料のおおまかな比率とみて間違いないだろう。
石器に使われた鉱物・岩石内訳
2) 八ヶ岳周辺では、圧倒的に「黒曜石」の比率が高く、80%前後を占めている。以前単身赴任していた
千葉県の縄文遺跡では、「黒曜石」が15%、「チャート」が85%だったのとは対照的だ。
・ 千葉県で石器拾い
( Stone Implement Hunting in Chiba , Chiba Pref. )
八ヶ岳周辺では「黒曜石」の入手が容易だったことと、割りやすく加工しやすい特性が相俟(あいま)って
の結果だろう。
3) 今回水晶の比率は1.8%と大きかったがデータを増やして均(なら)してみると1%以下と少ない。以前、
「石器作り」のページで報告したように、この地域には水晶が豊富にあるのだから、材料入手の難易度
よりも、加工しにくいことがその理由だろう。
・ 石器作りに挑戦
( Challenge Making Stone Implement , Yamanashi Pref. )
ただ、今回は訪れなかったがN遺跡のように、水晶が20%強を占める遺跡もあり、時代によって入手できる
石材の制約や人による好みなどがあったのかも知れない。
4.3 水晶製石器の産出状況
川上村での石器観察を手ほどきしてしてくれた小Yさんに教えていただいた水晶石器の産地は、旧石器時代
のKK遺跡だった。その後、文献やネットで調べて新しい産地を開拓した。
今回は、旧石器遺跡の近くで水晶製石器を観察できた。ここでは、過去にも結晶面が見える水晶や
水晶塊を観察した場所だ。
今までに訪れた産地の水晶製石器確認状況を一覧表に示す。
◎:数個確認 ○:産出確認 ×:産出未確認
区 分 | 遺 跡 (時代) | 備 考 | YD (旧石器) | KD (旧石器) | KK (旧石器) | YK (縄文) | YS (旧石器) | BD (旧石器) | 水晶製石器 | × | × | ○ | × | × | × | 水晶(石英)塊 | × | ○ | ○ | × | ○ | ○ | 水晶剥片 | × | ◎ | ○ | ○ | ○ | ◎ | 結晶面が見える水晶 | × | ○ | × | × | ○ | × | 備 考 |
2010年に初訪問 コンスタントに観察 2016年も観察 2017年は、KDのみ訪問 2019年は、3月、10月にKDで観察 |
2013年初訪問 2016年は未訪問 2017年は未訪問 2019年に観察 |
2015年初訪問 2016年未確認 2017年は未訪問 2019年未確認 |
4.4 観察石器と遺物
今回の訪問で、観察できた石器は次のとおりだ。
@ ”石槍”
A ”石匙(スクレーパー)"
B コア(石核(せっかく))と呼ばれる、剥片を剥がして残った芯の部分
C 剥片、コアから剥がした破片でそのままでもナイフとして使われ、石鏃などに加工された。
これら、観察できた石器を紹介する。
その家に入居したのは47年前になる。会社が分譲した10棟余りの1つで、周りは所帯持ちばかりで、独身者は
私だけだった。その後、転勤した人、退職・移住した人もいて、最初から住んでいる人は3人だけになっている。
着いて間もなく、その内のTさんが前日に亡くなった、と聞いた。Tさんは私より10歳年上だと奥さんから聞いて知っ
た。
67歳で現役を引退した後、古希を迎えるのを機に南極に旅し、その翌年は北極圏を巡る世界一周を果たした。
『片雲の風に誘はれて、漂白の思ひやまず』、ついに2020年末に南半球地球一周に旅立つことにした。74歳に
なっているはずだ。
このことを息子に話すと、「じいさん(息子の祖父)は、74歳で死んだんじゃなかった」、と突っ込んできた。いつ死ん
でもおかしくない年になっているのだと改めて思い知らされた。
10年後と言わず、これからは、1年、1年、否毎日が大事なんだと自分に言い聞かせるMineralhunters で
あった。