・山梨宝石博物館の鉱物
(Minerals of Yamanashi Gem Museum in Kofu , Yamanashi Pref.)
しかし、「山梨宝石博物館」は立地条件が良くなく来客数も伸び悩み、観光客の多い富士河口
湖町に移転したのは2010年ごろだった、と思う。
( 館に問い合わせると、正確には2007年4月 だった。 )
これで、甲府市内から本格的な鉱物展示施設の1つが消えたのを残念に思っていた。2013年、
単身赴任から戻ってしばらくして、2013年9月に「山梨ジュエリー・ミュージアム」がオープンする、
と知った。
山梨大学は機構改革の影響なのかハッキリしないが、「水晶館」の一般公開を取りやめ、展示
の目玉だった『百瀬コレクション』は、御子息に返還され、山梨大学が所有していた鉱物標本は、
新しくできた「山梨ジュエリー・ミュージアム」に貸し出された、と聞き、一度訪れねばと思いながら
ミネラル・ウオッチングで子どもたちから大人までを案内するなど忙しく、その機会を失していた。
ミネラル・ウオッチングがストーブ・リーグに入った12月、正月に帰省する孫娘たちの切符を手配
するのにバスで駅前に行ったのでついでに立ち寄ってみた。
JR甲府駅からゆっくり歩いても10分たらずで、真新しいビル・「山梨県防災新館」に着いた。この
1階にミュージアムがある。
エントランスを入ると、日本を代表する鉱物の1つ、大きな「乙女鉱山の日本式双晶」が迎えて
くれる。「水晶製鏃」や「水晶玉」そして工芸品やアクセアリーを見ると、人と水晶の永いつきあい
が自然と理解できる。
奥の部屋には、山梨大学が所蔵する山梨県などの水晶や鉱物のほか、世界各地の鉱物原石と
研磨品(ルース)が並べて展示してある。
「山梨ジュエリーの今」の展示室には、現在活躍しているデザイナー、職人、作家の作品の数々
が展示してあり、新しい感性に触れることができる。
「企画展示室」では、開館記念として、代表作家3人の作品と戦後〜平成のジュエリー製品を展
示している。(〜2014年1月13日)。内容は随時入れ替わるようだ。
「実演工房」では職人や作家が作品を制作する過程を見学でき、隣の体験工房では、土曜日と
日曜日に有料で宝石研磨や装身具の製作を楽しめる。
「ミュージアム・ショップ」では、贈り物や自分自身へのご褒美に、お手頃なアクセサリー類から、
1枚100円の絵葉書まで販売している。この日は、障がい者支援施設で作った2種類の絵葉書を
10枚購入した。デザインは、山梨を代表する『葡萄と水晶』だ。
「企画展示」などは、随時入れ替わるようなので、目が離せない。駐車場も完備しており、甲府
を訪れた記念に立ち寄ってはいかがだろう。
( 2013年12月 訪問 )
2.2 利用案内
・ 開館時間 : 午前10時〜午後6時(入館は閉館時間の30分前まで)
・ 休館日 : 火曜日(祝日の場合はその翌日)、年末年始
・ 入館料 : 無料
・ 電話 : 055-223-1570
・ HP : 「山梨ジュエリーミュージアム」
午後6時まで開いているので、レジャーだけでなく、出張などでも、電車の待ち時間を使って
見て回ることも可能だ。
『 この度、山梨県立宝石美術学校の附属施設として「山梨ジュエリーミュージアム」を開館
することになりました。
山梨県立宝石美術学校は、山梨県を代表する地場産業であるジュエリー産業の人材育
成を目的に、昭和56年(1981年)に創設されましたが、この度、「山梨ジュエリーミュージア
ム」を整備することとしましたのは、山梨がジュエリーの生産地であることを県民及び全国の
みなさまに知っていただき、地場産業の将来の人材育成の更なる充実と産業の発展を願
ってのことです。
そのため、教育的な立場から歴史・技術・素材などの展示を行う他、様々なジュエリーの
デザイン・アイテム・機能・美しさを展示すると同時に、ジュエリー製作の実演、体験の場も
備えて。ジュエリー産業のすべてを集約してご覧いただくこととしております。
女性だけでなく、誰もがジュエリーを身に着ける時代に、改めてジュエリーの幅広い魅力
を本館で再認識していただければ幸いです。 』
3.2 ミュージアム・テーマ
これも開館案内チラシに載っているのを引用させてもらう。
『 人々とともにあるジュエリー
山梨県の地場産業であるジュエリー産業を広く県内外に紹介する施設であるとともに、
人々にジュエリー文化を身近なものとして伝えることで、子どもから大人、学生からジュエリー
産業に従事する人まで、広範囲な人々が「山梨ジュエリー」やジュエリー産業に夢を抱ける
よう、魅力あふれる施設を創造することを基本理念としております。
そのため、ジュエリーの技術や教育につなげる施設として、歴史から今を考え、学び、そ
して未来の山梨県のジュエリー産業の創造につながるよう、宝飾品を主軸にデザインや工
芸等を含む、幅広い作品をバランスよく展示する予定です。 』
エントランスを抜け、時計回りに見て回ると、最後のミュージアム・ショップまで”一筆書き”で見て
回れるようだ。
以下、それぞれのブースの見どころをお伝えする。ただ、私が興味のある「山梨県産鉱物」と
「水晶加工品」に偏向したきらいがあるのはご容赦願いたい。
(1) 人とジュエリーのタイムライン
廊下のように細長くて、薄暗い展示スペースで、山梨県の水晶の誕生からそれらの採掘、
そして石器や宝飾品として利用された歴史を標本とともに紹介している。
鉱物愛好家として見逃せないのは、小尾八幡山で産出した両翼20cmはゆうに超える蝶形の
日本式双晶だろう。
縄文時代に作られた水晶製の石器は”完形品”で、なかなかお目にかかれないものだ。古
墳時代に作られた水晶製の勾玉(まがたま)や切子玉なども展示してある。
(2) ジュエリーをかたちづくるもの
この室の入口には、長さが1m近い大きな水晶が展示してある。以前、山梨大学の「水晶館」
で見たことがあり、これも小尾八幡山産の標本だ。
左壁面・・・・・・水晶、長石、トパズなど、山梨県や長野県で産出した鉱物の群晶や単晶
正面・・・・・・・・宝飾品加工に使われる道具類
右壁面・・・・・・世界各地の鉱物原石と研磨品(ルース)
鉱物ファンなら左壁面、ジュエリー加工に興味のある人なら正面、そしてジュエリー好きなら
右壁面を何時間は大袈裟にしても、惹きつけられて動けなくなるだろう。
(3) 山梨ジュエリーの今
現在活躍しているデザイナー、職人、作家の作品の数々が展示してあり、今風の新しい感性
に触れることができる。
高度な技術力とそれを生かすデザイン。若手デザイナーや職人の新しい試みなど、ジュエリー
産地”山梨”から発信される新しいジュエリーの多彩なすがたを垣間見ることができる。
主な展示品
・ ミュージアム開館のために制作された山梨県内のデザイナーと職人による
コラボレーション作品
・ 深澤 直人 「葡萄」とKoo-fu 2008、2009年コレクション
・ 塩島 敏彦 「蜻蛉(かげろう)」
・ 田中 治彦 「音楽家」
・ 松村 司 「クマガイソウ」
(4) 企画展示
ミュージアム開館にあたり、公募によって選ばれた青沼 洋、市川 治之、熊谷 徹哉氏の
3作品を展示している。
また、(1)の「タイムライン」から続く、山梨ジュエリーの歴史を昭和20年代半ばから平成初期
に製作された作品展示で振り返る。
企画展は、2014年1月13日までの予定で、その後入れ替えがあるかも知れない。
(5) 職人の流儀
ジュエリーを生みだす芸術的ともいえる技を貴金属加工、研磨、彫刻、それぞれの分野の
優れた作品を通して紹介している。作品とともに、ジュエリー産業に携わるプロフェッショナルを
追った映像を84インチの大画面で楽しめる。
(6) 実演工房
実演工房では、土、日、祝日に職人さんが貴金属加工、研磨、水晶彫刻の作業するのを間
近で見学できる。危険な作業を行っていないときには、職人と話をすることもできる。
江戸時代から続く「山梨ジュエリー」の歴史を受け継いできた職人たちの卓越した技に触れ
ることで、「山梨ジュエリー」の魅力を再発見できるだろう。
実演プログラムは、上記のHPに掲載されている。ちなみに、2013年12月第2週末のプログラ
ムは下表の通りだ。
月/日(曜日) | 内 容 | 出 演 者( 所 属 会 社) | 備 考 | 12/13(金) | 貴金属工芸 | 深澤 利彦(錺工房深澤) | 金曜日だが 特別実演 12時〜16時 |
研磨 | 清水 幸雄(株式会社シミズ貴石) | 美術彫刻 | 河野 誠(河野水晶美術) | 12/14(土) | 貴金属工芸 | 望月 雄一郎(株式会社ダイアート三枝) | 研磨 | 青柳 剛(青柳貴石製作所) | 12/15(日) | 研磨 | 清水 忠雄(株式会社シミズ貴石) | 美術彫刻 | 小池 義昭(河野製作所) |
(7) 体験工房
体験工房体験工房では、土、日、祝日に予約なしで気軽にジュエリー制作や鉱物に関する
体験が有料でできるプログラムがある。また、事前予約制で、じっくり取り組める体験も行って
いる。
ジュエリー産地、山梨で活躍している職人の指導のもと、「山梨ジュエリー」のワザを体験して
でき上ったジュエリーがお土産だ。
体験プログラムは、上記のHPに掲載されている。ちなみに、2013年12月〜2014年1月の
プログラムは下表の通りだ。
開 催 日 |
10:30〜12:00 |
13:00〜15:30 |
15:30〜17:00 |
12月14日 (土) | 貴石を研磨して、ストラップをつくろう | 短時間プログラムができる (事前予約不可) 「石を選んでペンダントを作ろう」 「半貴石を研磨しよう」 「リングに石留めをしよう」 |
シルバーに刻印をしよう |
12月15日 (日) | 自由な形のペンダントトップをつくろう | 貴石を研磨して、ストラップをつくろう | |
12月21日 (土) | ☆クリスマス特別企画☆ | ☆クリスマス特別企画☆ | |
12月22日 (日) | ☆クリスマス特別企画☆ | ☆クリスマス特別企画☆ | |
12月23日 (月・祝) | 貴石を研磨して、ストラップをつくろう | 自由な形のペンダントトップをつくろう | |
1月11日 (土) | シルバーに刻印をしよう | 自由な形のペンダントトップをつくろう | |
1月12日 (日) | 貴石を研磨して、ストラップをつくろう | シルバーに刻印をしよう | |
1月13日 (月・祝) | 貴石を研磨して、ストラップをつくろう | 自由な形のペンダントトップをつくろう |
(8) ミュージアム・ショップ
最後は、ミュージアムショップだ。贈り物や自分へのご褒美にネックレス(10,000円〜)や
18金イヤリング(25,000円〜)などは女性向きだ。2013年、世界文化遺産に指定された富士山
をあしらったカフスボタン(19,100円)は男性向きだ。
ミュージアムのロゴが入った水晶のキーホルダー(21,000円)、や「緒締め」(22,500円)、そし
て砂時計ならぬ水晶時計(12,600円)などは男女どちらでもよいだろう。
誕生石(ちなみに12月は「トルコ石」と「ラピスラズリ」)のペンダントなどは、誕生日のプレゼ
ントにピッタリだろう。
こんな高いものはチョット、という人には私が買った絵葉書がおすすめだ。障がい者施設で
手作りしたもので、1枚1枚、色づかいが微妙に違うのだ。
ただ、これらの施設の現状をみると楽観できない。「県立美術館」にしても、バブル華やかな
頃、県の人口(80万人)に近い年間60万人が訪れていたが、今はその1/3以下だ。
現在、甲府市は『宝飾の街』と謳っているが、ジュエリーのマーケット規模は、バブル期の
1/2で、それに伴い山梨産ジュエリーの生産高も減少している。国内に流通するジュエリーの
およそ1/3は今でも山梨で生み出されているが、海外ブランドの輸入、アジアの近隣諸国の
台頭、既存の販売ルートの衰退などの課題を抱え、国際競争力を持つ産業構造への転換を
迫られている。
それらの打開策として、山梨ジュエリーのブランド化に取り組むなど、グローバル市場に対応
した生産地としての新たな試みを始めているようだ。
2013年秋に開館した「山梨ジュエリーミュージアム」がこれらの拠点として発展するよう、
できる限り支援したいと思う。
(2) 一鉱物ファンの願い
今まで山梨県を代表する鉱物の逸品を収蔵していた山梨大学「水晶館」は、アクセスが良く
なく、土曜、日曜・祝祭日には見られず、”宝の持ち腐れ”のきらいがなくもなかった。
今回、「山梨ジュエリーミュージアム」で展示するようになり、これらの点は大きく改善された。
将来、「山梨県立鉱物ミュージアム」、として発展・独立できればと願っている。