妻と紅葉を愛でながら、南房総のドライブを兼ねて探査する事にした。(妻は、車の中で
待機)
Yさんに教えてもらった沢に行くと、確かに花崗岩が点々と落ちている。
確かに何となく変だ。角が鋭く、人為的に加工したような形状なのだ。さらに上流に詰め
ると、セメントで接合した花崗岩が現われた。何のことはない、護岸が崩れて、工事に使
った花崗岩が下流に流されたものだった。
しからば、例の晶洞の水晶はどこかと探したのだが、いくつにも枝分かれした沢のどの
あたりかもわからず結局探せず仕舞いだった。
道の駅「富楽里(ふらり)富山(とみやま)」で、地元の海産物を使った食事を終え、夕食
のおかずの「金目鯛」や秋のミネラル・ウオッチングPart2の「大人の時間」用に地酒などを
買っても未だ12時前だった。
千葉県産新鉱物の新たな情報があるかも知れないと思い、帰宅する途中に「千葉県立
中央博物館」を訪れることにした。
日曜日にもかかわらず、地学関係の学芸員がおられ、『千葉県産の新鉱物』の状況を
聞くことができた。
『新鉱物』が正式に認定されたなら、それに関する展示をしたいという意向のようだが
いくつかの課題があるような口吻(こうふん)だった。すでにHPで報告した通り、千葉県立
中央博物館に展示してある『石英』が『千葉県産新鉱物』だった。
『千葉県産新鉱物』を恵与いただいた石友・S氏と貴重な情報を知らせてくれた愛読者・
Yさんに厚く御礼申し上げる。
( 2010年11月訪問 )
入ってすぐが地学関係のコーナーになっていて、その中の控え目なショーケースの中に
@ 2009年3月、IMA(International Mineralogy Association)によって、新鉱物に認定さ
【後日談】
『 少なくとも2010年9月までは(IMA No. 2008-067)は新鉱物としての認定は無
A 新鉱物に申請して2年以内に論文を発表しなければ、認定が取り消されることもあり
せっかく訪れたので、『千葉県産新鉱物』を見て帰る事にした。
さて、石友・S氏から、『千葉県産新鉱物』を恵与いただいたことは、既にHPで報告した。
学芸員の言葉が気になり、改めて恵与品を見直してみた。結晶には、”白濁”したものと
石友・Sさんからいただいた『石英』が『千葉県産新鉱物』で間違いなさそうだ。2010
愛読者・Yさんから教えていただいた場所の『晶洞の結晶』も気になる。暖かくて年中
(2) 南房総を味わう
妻は、店の名をとった海の幸が一杯の「網納屋丼」、私は「サザエの壺焼き」と
鱗を落とし、腸(わた)を抜いてくれた「金目鯛」はその夜のわが家の夕食のおかず
( Minerals exhibited in Natural History Museum and Institute , Chiba , Chiba Pref. )
千葉県を代表する千葉県嶺岡山地の鉱物標本が10点ほど展示してある。
表示 展示ケース
「嶺岡山地の鉱物」
3. 千葉県中央博物館の『千葉県産新鉱物』
この日は日曜日だったが、さいわい地学関係の学芸員がおられ、『千葉県産新鉱物』に
ついて最新の情報をまじえて教えていただいた。
れ、『千葉石(ちばせき:CHIBAITE)』、となった。
この記述について、石友・Mさんから、正確には次のようになるのではないかと
メールをいただいたので、修正させていただく。
く、あくまで申請を受理しただけ。(IMA status: Approved 2009)
「千葉石」は、今のところ通称名である 』
得るが、2010年11月現在、まだ、論文は出ていない。
B 論文発表よりも先に、ミネラル・フェアなどで「千葉石」と銘打って売られているなど、
『新鉱物』でなくて、『公知の鉱物』と受け取られかねない状況がある。
( 2010年6月、ミネラル・マーケットと新宿ミネラル・フェアの会場で売っていたのは、
HPで既報の通り )
C 『新鉱物』は既に博物館に展示されている。
( これは、既にHPで報告した通りだった )
D 正式に『千葉県産の新鉱物』が承認されれば、それに関する展示をしたいという意
向のようだ。
標本 ラベル
『千葉県産新鉱物』
4. S氏の恵与品 『千葉県産新鉱物』
先ほどの学芸員から耳寄りな情報を得た。「展示してある”白濁”したものは、『仮像(か
ぞう)』であって、本当の千葉石は、透明のもの』、らしい。
つまり、仮晶(かしょう)と呼ばれることからわかるように、「千葉石」の外形をしているが
中身は単なる石英のこともあるようだ。
( インターネットに”Chibaite”として掲載されている写真は”白濁”したものだし、2010年
6月に売られていたものは、”白濁”していたような気がするが・・・・・・ )
( New Mineral from Chiba , Presented by Mr.S , Chiba Pref. )
”透明”なものが混在しているケースのようで、どちらに転んでも、『千葉県産新鉱物』で
間違いないようだ。
”白濁” ”透明”
『千葉県産新鉱物』【S氏恵与品】
5. おわりに
(1) 「石(鉱物)なし県」 返上
千葉県は、「石なし県」のイメージを持っている人も多いかも知れない。なぜなら、千葉
県では、どこの県でもありふれた鉱物の1つ、「水晶(石英)」が全く出ないとされていた
くらいだ。
その千葉県で、選りによって、「石英(SiO2)」を主成分とする日本産新鉱物が発見され
たのは、何とも皮肉なことだ。
年、千葉県への2回目の単身赴任の良き思い出がまた一つ増えた。
ミネラル・ウオッチングが楽しめる南房総なので、いつか探査してみたいと考えている。
今回は、妻と2人でのノンビリした産地探査だった。(妻は車の中で待機)
以前、テレビ番組で、南房総の海産物をタップリつかった、道の駅「富楽里富山(ふら
りとみやま)」の食事がおいしいというのを見た。
「サザエの刺身」に魅かれ、「A定食」を注文し、「石あり県」の山国・甲斐では味わえな
い磯の味で満腹になった。
「網納屋丼」 A定食
になった。
煮つけにした鯛は、脂がのり、骨までしゃぶりつくすほどの美味しさだ。一緒に炊いた
大根にも味がしみ込み、これも絶品だ。
6. 参考文献
1) 門馬 綱一 et al :千葉県南房総市荒川から産出した包摂化合物結晶について
日本鉱物科学会2008年年会講演要旨集,同会,2008年
2) 松原 聡:日本産新鉱物・新産鉱物 鉱物情報No.162,鉱物情編集部,2010年