千葉県立中央博物館の『千葉県産新鉱物』







      千葉県立中央博物館の『千葉県産新鉱物』

1. 初めに

    「 千葉県の某所の沢に花崗岩があった!!」、と私のHPの読者・Yさんからメールをい
   ただいたのは、2010年10月のことだった。その沢には、石英らしき白い脈に晶洞があり、
   結晶もあると写真が添えられていた。
    一刻も早く現地を訪れてみたいと思っていたが、初孫の1歳の誕生祝いや恒例の秋の
   ミネラル・ウオッチングなどがあり、なかなか訪れるチャンスがなかった。2010年11月中旬
   になり、ようやくその機会が巡ってきた。
    その少し前、Yさんから、「花崗岩は上流の構造物が崩壊したものだった」、とのメールが
   あり、納得したものの『晶洞と結晶』が気になっていた。

    妻と紅葉を愛でながら、南房総のドライブを兼ねて探査する事にした。(妻は、車の中で
   待機)
    Yさんに教えてもらった沢に行くと、確かに花崗岩が点々と落ちている。

     「花崗岩」の転石

    確かに何となく変だ。角が鋭く、人為的に加工したような形状なのだ。さらに上流に詰め
   ると、セメントで接合した花崗岩が現われた。何のことはない、護岸が崩れて、工事に使
   った花崗岩が下流に流されたものだった。

    しからば、例の晶洞の水晶はどこかと探したのだが、いくつにも枝分かれした沢のどの
   あたりかもわからず結局探せず仕舞いだった。

    道の駅「富楽里(ふらり)富山(とみやま)」で、地元の海産物を使った食事を終え、夕食
   のおかずの「金目鯛」や秋のミネラル・ウオッチングPart2の「大人の時間」用に地酒などを
   買っても未だ12時前だった。

    千葉県産新鉱物の新たな情報があるかも知れないと思い、帰宅する途中に「千葉県立
   中央博物館」を訪れることにした。

     秋色の「千葉県立中央博物館」

    日曜日にもかかわらず、地学関係の学芸員がおられ、『千葉県産の新鉱物』の状況を
   聞くことができた。

    『新鉱物』が正式に認定されたなら、それに関する展示をしたいという意向のようだが
   いくつかの課題があるような口吻(こうふん)だった。すでにHPで報告した通り、千葉県立
   中央博物館に展示してある『石英』『千葉県産新鉱物』だった。

    『千葉県産新鉱物』を恵与いただいた石友・S氏と貴重な情報を知らせてくれた愛読者・
   Yさんに厚く御礼申し上げる。
    ( 2010年11月訪問 )

2. 千葉県立中央博物館

    2008年1月、千葉県に初めて単身赴任して間もなく、千葉県立中央博物館を訪れ、その
   様子をHPに掲載した。

    ・千葉県立中央博物館の鉱物
     ( Minerals exhibited in Natural History Museum and Institute , Chiba , Chiba Pref. )

    入ってすぐが地学関係のコーナーになっていて、その中の控え目なショーケースの中に
   千葉県を代表する千葉県嶺岡山地の鉱物標本が10点ほど展示してある。

        
            表示              展示ケース
                「嶺岡山地の鉱物」

3. 千葉県中央博物館の『千葉県産新鉱物』

    この日は日曜日だったが、さいわい地学関係の学芸員がおられ、『千葉県産新鉱物』に
   ついて最新の情報をまじえて教えていただいた。

    @ 2009年3月、IMA(International Mineralogy Association)によって、新鉱物に認定さ
      れ、『千葉石(ちばせき:CHIBAITE)』、となった。

      【後日談】
         この記述について、石友・Mさんから、正確には次のようになるのではないかと
        メールをいただいたので、修正させていただく。

        『 少なくとも2010年9月までは(IMA No. 2008-067)は新鉱物としての認定は無
         く、あくまで申請を受理しただけ。(IMA status: Approved 2009)
          「千葉石」は、今のところ通称名である                        』

    A 新鉱物に申請して2年以内に論文を発表しなければ、認定が取り消されることもあり
      得るが、2010年11月現在、まだ、論文は出ていない。
    B 論文発表よりも先に、ミネラル・フェアなどで「千葉石」と銘打って売られているなど、
      『新鉱物』でなくて、『公知の鉱物』と受け取られかねない状況がある。
      ( 2010年6月、ミネラル・マーケットと新宿ミネラル・フェアの会場で売っていたのは、
       HPで既報の通り )
    C 『新鉱物』は既に博物館に展示されている。
       ( これは、既にHPで報告した通りだった )
    D 正式に『千葉県産の新鉱物』が承認されれば、それに関する展示をしたいという意
      向のようだ。

    せっかく訪れたので、『千葉県産新鉱物』を見て帰る事にした。

        
                 標本                      ラベル
                         『千葉県産新鉱物』

4. S氏の恵与品 『千葉県産新鉱物』

    先ほどの学芸員から耳寄りな情報を得た。「展示してある”白濁”したものは、『仮像(か
   ぞう)』であって、本当の千葉石は、透明のもの』、らしい。
    つまり、仮晶(かしょう)と呼ばれることからわかるように、「千葉石」の外形をしているが
   中身は単なる石英のこともあるようだ。
    ( インターネットに”Chibaite”として掲載されている写真は”白濁”したものだし、2010年
      6月に売られていたものは、”白濁”していたような気がするが・・・・・・        )

    さて、石友・S氏から、『千葉県産新鉱物』を恵与いただいたことは、既にHPで報告した。

     ・S氏の恵与品 「千葉県産新鉱物」
      ( New Mineral from Chiba , Presented by Mr.S , Chiba Pref. )

    学芸員の言葉が気になり、改めて恵与品を見直してみた。結晶には、”白濁”したものと
   ”透明”なものが混在しているケースのようで、どちらに転んでも、『千葉県産新鉱物』で
   間違いないようだ。

        
                 ”白濁”                     ”透明”
                     『千葉県産新鉱物』【S氏恵与品】

5. おわりに 

 (1) 「石(鉱物)なし県」 返上
      千葉県は、「石なし県」のイメージを持っている人も多いかも知れない。なぜなら、千葉
     県では、どこの県でもありふれた鉱物の1つ、「水晶(石英)」が全く出ないとされていた
     くらいだ。
      その千葉県で、選りによって、「石英(SiO2)」を主成分とする日本産新鉱物が発見され
     たのは、何とも皮肉なことだ。

      石友・Sさんからいただいた『石英』が『千葉県産新鉱物』で間違いなさそうだ。2010
     年、千葉県への2回目の単身赴任の良き思い出がまた一つ増えた。

      愛読者・Yさんから教えていただいた場所の『晶洞の結晶』も気になる。暖かくて年中
     ミネラル・ウオッチングが楽しめる南房総なので、いつか探査してみたいと考えている。

 (2) 南房総を味わう
      今回は、妻と2人でのノンビリした産地探査だった。(妻は車の中で待機)
     以前、テレビ番組で、南房総の海産物をタップリつかった、道の駅「富楽里富山(ふら
     りとみやま)」の食事がおいしいというのを見た。

      妻は、店の名をとった海の幸が一杯の「網納屋丼」、私は「サザエの壺焼き」と
     「サザエの刺身」に魅かれ、「A定食」を注文し、「石あり県」の山国・甲斐では味わえな
     い磯の味で満腹になった。

        
               「網納屋丼」                      A定食

      鱗を落とし、腸(わた)を抜いてくれた「金目鯛」はその夜のわが家の夕食のおかず
     になった。
      煮つけにした鯛は、脂がのり、骨までしゃぶりつくすほどの美味しさだ。一緒に炊いた
     大根にも味がしみ込み、これも絶品だ。

6. 参考文献 

 1) 門馬 綱一 et al :千葉県南房総市荒川から産出した包摂化合物結晶について
                日本鉱物科学会2008年年会講演要旨集,同会,2008年
 2) 松原 聡:日本産新鉱物・新産鉱物 鉱物情報No.162,鉱物情編集部,2010年
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