長野県下諏訪町八島ビジターセンターの鉱物









          長野県下諏訪町八島ビジターセンターの鉱物

1. はじめに

    長野県にある「八ヶ岳中信高原国定公園」の中核をなす霧ケ峰高原を走る「ビーナスライン」が無料化
   したのが2001年ごろだった。それ以前は、和田峠に行くのにも料金のかからない旧道をもっぱら利用して
   いた。
    霧ヶ峰には、付近の動植物や鉱物を展示している「霧ヶ峰自然保護センター」があり、その内容について
   2001年に次のページで紹介した。

    ・ 長野県諏訪市霧ケ峰自然保護センタの鉱物
    (Minerals of Kirigamine Nature Protection Center , Suwa City , Nagano Pref.)

    2015年8月、HPを読んでメールをくれたTさん一家を和田峠に案内するため、待ち合わせ場所を最初
   「霧ヶ峰自然保護センター」にしようとしたが水曜日で定休日のため、「八島ビジターセンター あざみ館」に
   変更した。
    「八島湿原」は知っていたが、ビジターセンターは初耳だった。それもそのはず、2015年4月24日にオー
   プンして間もないのだ。

    待ち合わせの短い時間の間に入館すると、湿原の植物や昆虫の展示のほかに地学・地質の展示もあり、
   和田峠産のりっぱな「満バンざくろ石」がショーケースの中にあった。
    和田峠の地質や鉱物を理解するのであれば、「霧ヶ峰自然保護センター」のほうがおすすめだが、「満バ
   ンざくろ石」を見るだけでも価値はありそうだ。
    ( 2015年8月 訪問 )

2. 場所

    霧ヶ峰から旧ビーナスラインを和田峠に向かって走ると、左側に八島湿原の駐車場があり、霧ヶ峰寄り
   の場所に新しくできたのが「あざみ館」だ。
    夏休みなどは、駐車場への入場待ちの車が長い列を作っているので、訪れるならその期間を外すのが
   賢明だろう。

      
               「八島ビジターセンター あざみ館」
                   【センターのHPから引用】

3. 「八島ビジターセンター あざみ館」のあらまし

 3.1 展示内容
      ここには、「八島湿原」を中心とする、霧ケ峰の動植物のほか地学・地質関係を展示してあります。
     さらに展示だけでなく有料の「ガイドウオーク」もあって、実際に湿原を歩きながら学芸員が観察できた
     植物や動物について、その場で解説してくれるサービスもある。

 3.2 地質関係の展示
      地学・地質関係の展示物は、館の一番奥に一マスあるだけだ。

      
                    地質関係展示コーナー

  (1) 「八島湿原」の成り立ち
       今からおよそ130万年前から75万年前にかけて、霧ヶ峰高原では霧ヶ峰火山が活発に活動して
      いた。霧ヶ峰火山は富士山のような美しい形をしており、山頂は車山の東側にあったと考えられる。
       霧ヶ峰火山は何回か噴火を繰り返した後、大爆発を起こして山頂が吹き飛んだ。そのときできた
      ピークが霧ヶ峰高原の主峰・車山(1,925m)だ。
       その後、雨などによって霧ヶ峰高原は浸食され、八島湿原は、鷲ケ峰((1,798m)の溶岩と霧ヶ峰
      火山の溶岩によってできた窪地に発達した。

       
                   「八島湿原」の成り立ち

  (2) 「霧ヶ峰火山群」の地質
       霧ヶ峰火山群の地質図が展示してある。「満バンザクロ石」が産出するのは、この図で黄色く塗ら
      れた『和田峠・大門溶岩』帯のようで、その範囲はかなり広い。「鉱物採集フィールド・ガイド」に掲載
      された沢は、この溶岩帯のごくごく狭い範囲だ。

       
                   「霧ヶ峰火山群」の地質図

 3.3 鉱物・岩石展示
  (1) 「満バンざくろ石」
       分離結晶が桐箱に入った状態で展示してある。左の単晶は、大きさが1センチ以上あり見ごたえの
      ある標本だ。
       その脇の箱に入った標本は、”これくらいだったら自分でも採れそうだ”と自信を与えてくれる標本だ。

       
             和田峠産の「満バンざくろ石」

  (2) 黒曜石
       古代人が石器の材料にした黒曜石が展示してある。灰色がかっている標本なので、「黒曜石」と
      呼ぶには少し物足りない。

       
                    「黒曜石」

4. おわりに

 (1) 新産地
      和田峠産の満バンザクロ石の人気は高い。しかし、分離結晶が採れる「鉱物採集フィールド・ガイド」
     に載っている沢は「採集禁止」になって久しい。
      今回訪れたビジターセンターなどで入手した情報をもとに、これに代わる産地を探し続けている最中
     だ。
      皆さんを「新産地」に案内できる日も、そう遠くない予感がする。

 (2) 気になる環境変化
      霧ヶ峰は四季折々の風景が素晴らしい。2015年6月に訪れると、「レンゲツツジ」が満開で、全山を
     紅色に染めてきれいだった。

       
                       霧ヶ峰を紅色に染める「レンゲツツジ」
                              【2015年6月】

      だが、待てよ。何か変だ。和田峠に通い始めた25年以上昔の平成元年ごろ、霧ヶ峰で「レンゲツツジ」
     の花など見た記憶がないのだ。霧ヶ峰は本来草原で灌木などは生えてはならないはずなのに、この茂り
     ようだ。

      霧ヶ峰の夏の花といえば黄色い「ニッコウキスゲ」だが、「レンゲツツジ」に駆逐されてしまうのではないと
     と危惧している。単なる杞憂に終わればよいのだが。

5. 参考文献

 1) 長野県霧ケ峰自然保護センター:霧ケ峰高原パンフレット,同センタ,2000年3月
 2) 本間 不二男著;信濃中部地質誌,信濃教育会小県上田部会,昭和6年
 3) 草下 英明:鉱物採集フィールド・ガイド,草思社,1988年

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