と言いつつ、梅田鉱山を訪れようと思ったのは、いくつか理由がある。
(1) Nさんに地図を描いて送ろうと思ったが、入り口がどのあたりだったか
記憶が定かでなくなっていたので、再確認する必要があった。
(2) 北関東で開催される「骨董市」のついでに回る心算(つもり)
(3) 近くの「茂倉沢鉱山」にも、”運試し”で立ち寄れる。
(4) 2007年5月に採集した水晶をHPに掲載したところ、透明感がある綺麗な水
晶の群晶、ということで何人かから問い合わせがあった。
産地のその後も知りたかったし、2007年以降、「露頭叩き」にも慣れた
ので、もしかしたら、前回より素晴らしい晶洞(ガマ)が開くのではないか
という”助平心”
「骨董市」を回って、桐生市街に入ったのは、10時近くだった。ここだろうと思っ
た場所に行くと、案の定 ”目印”が見当らない。しかたなく、上流に向かうと、
ようやく”目印”があった。
いくつかある坑道の中も調査しようと思い、沢を遡るが、大きな滝に行く手を
阻まれ、迂回して、梅田鉱山のズリに到着した。
露頭を見て驚いた。石英脈を抜くような形で大きく掘り込まれている。掘り方、
最後の始末をみると、”ド素人”ではなく”手馴れたグループ”の仕業と読んだ。
幸い露頭の一部に透明感のある、この産地特有の水晶を含む晶洞が残っていて、
大きめに掻き取って下山した。「褐鉄鉱」で覆われているので、蓚酸液に漬け、
クリーニングして、どんなに”化ける”かが楽しみだ。
帰途、遅い昼食を食べに「梅田ふるさとセンター」に立ち寄ると、『桐生之銘石』の
コーナーに、「サラサ石」と「桜石」が展示してあった。
この後、「茂倉沢鉱山」に立ち寄ったが、鈴木、長島両氏とも不在だった。念の
ため、バラ輝石は全て持ち帰った。暇をみて、ルーペ片手に日だまりで小割りす
るのが楽しみだ。
『 2011年のミネラル・ウオッチング初 』は、”目出度さも中ぐらいおらが春”
のようで、今年も仕事の傍ら、多くの石友とミネラル・ウオッチングを楽しみたいと
思っている。
( 2011年1月採集 2011年5月 洗浄後写真掲載 )
沢筋に、古い時代のものと思われる手掘りの小さな坑口と戦時中に機械掘りされた
比較間口の大きな坑口がいくつか見られ、その前に小規模なズリが残されている。
日本地質学会 会員 藤井 光男氏撰文の説明書きがあるので、引用させて
いただく。
『 「サラサ石」
「桜石」
桐生川の「サラサ石」は、その模様が織物の更紗(さらさ)に似ている、
ということで付けられた名前ですが、岩質からいえばチャートです。
本来チャートは、微生物が海底に堆積してつくられます。しかし、「サラサ
石」は、普通のチャートと大分異なっています。「サラサ石」は、いつ頃どの
ようにしてできたのか謎となっています。
想像するに、今から2億年前頃に地下の深部で、チャートが何らかの熱
を受けてつくられたものと思われます。なぜ他の色でなく、赤と白の「サラ
サ石」なのか全くの謎です。
「サラサ石」が桐生川の銘石ならば、「桜石」は、渡良瀬川の銘石です。
「サクラ(桜)石」は、今からおよそ1億年前に深さ何千メートルもの地底
で、砂岩や粘板岩がマグマの熱を受けて部分的に変質したものです。
この変質した部分が結昌(晶)して、ちょうど桜の花びらに見える訳で
す。したがって、「サクラ(桜)石」の学名は、「キンセイ石(菫青石)フォル
ンフェルス」といいます。
このように、真暗な地の底で咲いた1億年前の石の花弁、これが「サク
ラ(桜)石」なのです。
平成5年(1993年)夏日 田中 慎太郎 84歳 』
ご承知の方も多いかと思うが、群馬県桐生市は「織物の町」として夙(つと)に
有名だ(だった?)。
織物の町にふさわしい、「サラサ石」だ。
「桜石」は、足尾町から流れる渡良瀬川とその支流で産出する「菫青石」で、
紫水晶で有名になった「鉛沢」附近の川でも採れることは、別なページで紹介
した。
・栃木県足尾町鉛沢の気泡入り紫水晶
( Amethyst of Namarisawa including Water & Gas , Ashio Town , Tochigi Pref. )
このページでは、「桜石」の写真を掲載していないので、下に、「サラサ石」と
並べて紹介する。
(2) ミネラル・ウオッチング専門用語
群馬県のNさんに、産地情報をお知らせして間もなく、「 お蔭さまで、迷わず
産地に到着できました。雪が積もっていたので、MHが残しておいてくれた水晶
のついた石を拾って帰ってきました」、とお礼のメールがあった。
ただ、「露頭というのは鉱脈のことですか? ・・・・ズリというのは捨石のこと
ですか?最近になって調べているのですが的確な説明がなされているページが
インターネットで見つけられずにいます。教えていただけると有難いです。」、と
あった。
私が、当たり前に使っている用語が通じていなかったことに愕然とすると同時
に、真面目な用語集も必要だな、と痛感している。
・ミネラル・ウオッチング用語集
( Terminology of Mineral Watching , Ibaraki Pref. )