2003年10月鉱物採集会-<BR>     愛知県音羽町久田野の満バンザクロ石

2003年10月鉱物採集会
    愛知県音羽町久田野の満バンザクロ石

1.初めに

 私のHPを見て頂き、産地の情報を提供したり、案内して差し上げた人たちと
採集会を開催するようになって、3年目を迎えた。
 今回は、「岐阜・愛知の鉱物産地を訪ねて」と題して、2日目に満バンザクロ石を
求めて愛知県音羽町久田野の採石場を訪れた。
 2003年2月、伊豆での新春採集会に、愛知県のHさんが、久田野の満バンザクロ石を
「標本玉手箱」に出品したところ、余りの美しさに、一座がざわめいた。

2003年新春鉱物巡検の旅-伊豆を訪ねて-【ダイジェスト版】
(Digest Version of Mineral Hunting Tour at Izu Peninsula in Feb. 2003 , Shizuoka Pref.)

 Hさんの家はこの採石場のすぐ近くとのことで、偶々、採石場を覗いたら、1cm近い
ザクロ石が母岩についたものが、ゴロゴロしていたそうだ。
 最盛期には、東京ナンバーの車まで押し寄せるほどの人気だったが、稼行中の採石場の
宿命で、脈が途切れると、パッタリと出なくなってしまった。
 新たな脈が出たら、採集会を開催しようと話し合い、Hさんが頻繁に覗いて情報を
知らせてくれていたが、露頭の現れる気配はない、とのことであった。
 今回、”ダメ元”で採集会のコースに組み入れた。
 広大な採石場の規模に度肝を抜かれ、小さいながらも満バンザクロ石の結晶や、苦土電気石を
採集し、それなりに満足した。
 度々下見していただいたHさんと、採集を心良く許可していただいた採石場関係者に
厚く御礼を申し上げます。
(2003年10月採集)

2. 産地

  「音羽蒲郡IC」の北東、「久田野」に採石場があります。
  採石場の入口で入場を許可してもらい、露頭近くまで車で行く。その規模の大きさに
  圧倒されます。

  久田野採石場

3. 産状と採集方法

  この一帯は、変成を受けた堆積岩に胚胎した小規模なマンガン鉱体で、石英脈の晶洞中に
  満バンザクロ石が産出します。
   満バンザクロ石を含む石英脈を探し、晶洞部分から欠き採りますが、産出する場所は
  限られているようです。

  久田野採集風景

4. 採集鉱物

(1)満バンザクロ石【Spessartine:Mn3Al2(SiO4)3】
   満バンザクロ石と言えば、長野県和田峠の”真っ黒い”ものを思い浮かべますが
  久田野のものは、黄橙色透明で、”宝石”を思わせます。

  満バンザクロ石

(2)苦土電気石【Dravite:NaMg3Al6(BO3)3Si6O18(OH)4】
   石英脈の中に、赤褐色〜黒色貝殻状断口を示すガラス質の塊状で産出する。
   鉄とマグネシウムが置換しあって、鉄電気石と組成が連続する。透過光で見ると
   赤褐色に見え、苦土電気石としてあります。
   柱面は、殆ど発達していません。また、隣接して、黒雲母が見られます。

  苦土電気石

(3)その他
    ここでは「燐灰石」が産出し、Hさんが採集した標本を頂きましたが
   今回は、採集できませんでした。

5.おわりに

(1)ここぞと狙った場所で採集したが、Hさん、Yさんの下見情報にもあったように
  かつて1cmを越える「満バンザクロ石」を産した岩体は採掘し尽くされていた。
   これが、現役の採石場の悲しいところ。(この逆に、行ったらドサッとある例は
  少ないようです。)
   それでも、小さいが美しい「満バンザクロ石」結晶や苦土電気石は全員採集できた。
(2)Hさんから”新しい露頭出現!!”の報が届くのを、待っています。

6.参考文献

1)松原 聰:日本の鉱物,学習研究社,2003年
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