2003年新春鉱物巡検の旅-伊豆を訪ねて-【ダイジェスト版】

2003年新春鉱物巡検の旅-伊豆を訪ねて-【ダイジェスト版】

1.初めに

今年の冬は寒さが例年になく厳しく、山梨をはじめ関東・甲信越の鉱物産地は
あちこちに雪・氷が残り、採集が難しい状況です。「掲示板」にも書いた様に
”この時期は伊豆がお奨めです”ので、2003年新春鉱物巡検の旅-伊豆を訪ねて-を
計画した。
私のHPを見て知り合った関東、中部のメンバ25名(内高校生以下10名)の皆さんと
2日間の採集を楽しんだ。
これだけ大勢で参加するので、訪れる産地ごとに誰かが良品を採集することがあり
採れたての原産地標本をみんなで見て、次回のリベンジを誓った人もいました。
河津鉱山ではTさんが、リュックを置く間もなく、取り上げた石の晶洞にテルル石が
あったのを皮切りに、締めくくりは、Oさんが、菖蒲沢で採集した1m離れても
見分けられる自然金など、いずれも素晴らしいものでした。
今回巡検で行った産地は、
@河津鉱山のテルル鉱、銅の二次鉱物のように稀産で、鑑定が難しい。
A寝姿山のラムスデル鉱、高根鉱山のランシー鉱など玄人好み。
で、水晶のようになじみのある鉱物が少なく、子どもたちには鑑定が難しいものも多く
次回以降、クラス分けが必要かな・・・・・とも考えています。
(2003年2月採集)

2.第1日目

【いざ行かん伊豆路へ】
「東名沼津IC」に集合の30分前に行くと、ほとんどのメンバが既に集まっている。
早い人は、途中で前泊や朝3時半に自宅を出てきたとのこと。(仕事では、なかなかこうは)
予定通り、8時ジャストにICをスタートするが、車が9台では、伊豆の産地の狭い駐車場に
止めるのが厳しいので、途中の公園で、乗り合わせて台数を少なくする。
それでも、日帰りグループもあり、5台の隊列で進む。
大仁金山跡を右に見て、国道136号線を南下、414号線に入り、浄蓮鉱山のある
浄蓮の滝を横目に、天城トンネルをくぐると途中降っていた小雨も止み、晴れ間が出る。
ジンクスどおり、雨は降らない。
湯ケ野から、蓮台寺を目指す。天城峠付近では固かった河津桜の蕾もこのあたりは既に
ピンクに色づいて、ほころび始めている。
大沢口のバス停に10:20、20分遅れで到着。現地集合のTさんとOさん家族が
既に待っていた。
鉱物同志会員で単独行の方も同行することになり、総勢26名!!。

【河津鉱山大沢・桧沢】
河津鉱山の大沢・桧沢は、傾斜が急で危険でもあり、子どもたちとその家族は私と一緒に
大沢バス停脇のズリ周辺で採集することにした。
中学生以上は、河津鉱山に詳しい、Mさんの案内で大沢・桧沢坑に向かう。
Tさんが、リュックを置く間もなく、取り上げた石の晶洞にテルル石の群晶があった。
筑波大学への推薦入学が決まり鉱物を専攻する初参加のF君が、自然テルルの良品を
採集した。
テルル石【採集・撮影 Tさん】

【河津鉱山大沢バス停脇】
採集を始める前に「日本の鉱物」で河津鉱山の「テルル石」など代表的な標本を
見てもらう。子ども達は、飴色で水晶のような形をしたテルル石の大きな結晶に目が
爛々と輝きだす。(写真倍率が、1.0Xとなっており、罪作りな写真です・・・・・)
子ども達は、アチコチで、石を叩き、「テルル石」の鑑定依頼が後から後から押し寄せるが
自然テルルやテルル石は見つからない。それでも、イネス石はかなり見つかり、Mさんの
娘さんのAさんが「ヨハンセン輝石」を採集する。
ヨハンセン輝石【採集・撮影 Tさん】
13時ごろ、大沢・桧沢組も戻ってきて、陽だまりで全員で昼食とする。
参加者

【河津鉱山掛橋】
昼食の後、「イネス石」と「ブロシアン銅鉱」を求め、掛橋坑へ向かう。途中、入口が閉ざされた
旧坑が幾つも眼に入る。
ズリを掘り返しての採集となるが、子ども達には、苦手な産地でなかなか緑色やピンク色の
鉱物を見つけられない。
泥だらけのズリ石を掘って、緑色鉱物のついた石を子ども達に渡して割ってもらうが中々
ブロシアン銅鉱はでない。私が割った石にイネス石があり、近くの子ども達やOさんに渡す。
千葉のTさんは、昔、大先生の梃子としてここを訪れ、石割をさせられたそうで、流石に
年季が違い、ブロシアン銅鉱やイネス石の良品をゲットした。
掛橋採集
4時前に、掛橋を引き上げ、千葉のTさん差し入れのお菓子をいただく。
千葉のOさん親子3世代、三ケ日のYさんの息子達といとこのK君そして千葉のTさんとここで別れ
残りのメンバは、本日最終目的地の寝姿山に向かう。

【寝姿山】
先週下見した場所に、直行。流紋岩にラムスデル鉱の入った脈は比較的簡単に見つかるが
晶洞部分は少なく、頭付きは稀だが、Yさんが、針状結晶を発見する。
Oさんの御主人が、大ハンマで流紋岩と格闘。脇で、息子のTくんが応援。
Tくん【寝姿山】
Mさんは、露頭の上まで行き、晶洞部分を採集。流石に、行動力の違い歴然。
焼津から参加してくれた、Mさんご一家が先に帰り、暗くなってきたし、全員採集できたので
今夜の宿、白浜温泉「部屋荘」へ向かう。

【白浜温泉の夜はふけて】
この時期、下田周辺の宿泊場所は満杯で、結構良い値段をとられるので、宿泊先が悩みの1つ
だったが、東京のTさんが、以前泊まったことがある「部屋荘」を確保してくれた。
天然温泉につかり採集の汚れを落としたあと、「部屋荘」さん心遣いの大きな金目鯛の
煮魚サービスをはじめ、食べきれない料理が並ぶ。
何はさておき、愛知県のKさんの音頭で乾杯!!
愛知県のHさんが差し入れてくれた、田口鉱山のある設楽町田口の地酒「美」や数奇な運命を
辿って宴席に並ぶことになった金箔入りワイン、その名も「武田信玄公の隠し金山」を飲む。
金目鯛、金粉入りワインと明日の菖蒲沢の自然金に期待がかかる。
食事のあとは、お楽しみの「標本玉手箱」と「不明鉱物鑑定会」で盛り上がる。
(1)「標本玉手箱」
 採集した重品を持ち寄ってメンバに配布する、恒例になっている行事。標本の数より希望者が
多い時は、ジャンケンで勝った人が貰うことにする。標本の数が多くても、際立った良品がある
ものは、やはりジャンケンで選択の順位を決める。Uターン方式で、2順目は、負けた人から。
@真米の閃亜鉛鉱A洞戸の透輝石B都路の鉄電気石C八幡山の水晶D印西市の方解石(貝化石)
E愛知県の満バン柘榴石F愛知県の苦土電気石G千葉県のアルチニ石H武石村の武石
I五代松の水晶J福岡鉱山の緑柱石K河津の自然テルルLこの日、Mさんが採集したテルル石
などなど、全国各地の標本が並ぶ。
Eには、晶洞の中に、オレンジ色の綺麗な結晶がついたものがあり、私がゲット。
Fには、頭付きで、鉄バン石榴石と共生するものもある。これらの産地は、愛知県のHさんが
地図を作成してくれたので、翌日コンビニでコピーして、皆さんに配布。
メイン・イベントは、HとLで、ジャンケンに勝った人がH、負けた人がLを貰う事にして
熱戦の末、ジャンケンに負け続けていたHさんが、順当に(?)テルル石をゲット。
(2)不明鉱物鑑定会
Oさんがオークションで落札した4行5列の標本箱をひっくり返して、ばらばらになった
ものを元の位置に戻す、リ・コンストラクションに挑戦。Oさんが復元した通りで、決着。
(3)Oさん家族と私の妻は、それぞれ別の部屋をとり、男性8名は、17畳の大部屋で寝る。
採集の疲れもあって、あっという間に、Z z z・・・・・・。

3. 第2日目

【雨だ!!】
6時過ぎに起きてみると、外は暗く、時折激しい雨。Tさんが採集に行くと晴れるというジンクスは
破られてしまった。(格言『記録は、破られるためにある。』)
7時から、朝食を摂り、8時前に「部屋荘」を出発。途中、コンビニで昼食を調達し、最初の
採集地の高根鉱山のある下田に戻る。

【高根鉱山】
高根鉱山は、住宅街の裏にあり、駐車に苦労する。10年近く前に、ランシー鉱を採集した場所に
行くが、金網で護岸工事されていて望み薄。私は別なズリを探して、ランシー鉱を発見。
「あったぞー」と大声で他のメンバを呼び集める。「どれですか?」と言われて、見てもらうが
サンプルが小さいこともあり、皆さん「???」
母岩の特徴を伝え、それを割ってもらうとアチコチから「これですか?」と発見の声が出始め
ほとんどの人が自力で採集。水晶がメインのKさんは水晶も採集した。
高根鉱山採集風景
しかし、千葉のYさんが採集できない。時折、雨は強くなるが、ひるむことなくハンマを振り続け
やがて、「あったー」とYさんの声。皆駆け寄ってみると、人頭大の母岩の5cmを超える晶洞に
ランシー鉱がビッシリ。まさに「赤褐色半透明の燃え立つ炎」のような結晶。いつもながら
最後の5分間に強いYさんでした。

   ランシー鉱の晶洞【右】     晶洞部拡大
         ランシー鉱【採集・撮影 Yさん】

【やんだ】
下田から白浜温泉に一旦戻り、さらに北上し、亀の博物館先の路肩の駐車スペースに車を止め
海岸に向かう。事前にインターネットの潮見表で調べるとこの日は大潮で、干潮は11:48分
干潮1時間前から採集を始める。磯の突端は、時折風が強く、冷たい雨が横殴りに吹き付ける。
汚れた手を洗った海の水の何と温かいことか。
やんだ採集風景【風雨はやんだ? やまず。】
皆さん、モルデン沸石、輝沸石、犬牙状方解石、ダキアルディ沸石、水晶、玉髄など代表的な標本を
一通り採集した。私は、Tくんへのお土産に蟹、ヤドカリ、ウニなども採集して、引き上げる。
車に戻り、昼食を食べ、濡れた身体を乾かしたあと、最後の採集地、菖蒲沢海岸に向かう。

【菖蒲沢海岸】
下見の時と同じように、海岸には含金石英礫が沢山打ち上げられている。ここでも最初は皆さん
銀黒を含む石英礫が見つからず苦戦していたが、1つ見つかると次々と発見。
Tさんの息子のT君も、小さいながらシッカリ銀黒が入り、数粒の自然金が肉眼で見える良品をゲット。
Oさん一家のTくんも、波で研磨された色とりどりのガラス片などを採集して大喜び。
菖蒲沢のOさん一家
私は、パンニングによる浜砂金採集を試してみるが、重鉱物は全くなく、早々に撤退する。
一通り採集後、Mさんに、近くのズリとおぼしき所に案内してもらう。ここでは、紫水晶を狙うが
紫石英と限りなく透明に近いアメジスト(早く言えば、白水晶)のみ。
私が海岸に戻ると、ニコニコ顔のOさんが近づいてくる。差し出された、石英礫には、真一文字に
銀黒が入り、その角の部分に、2〜3mmはあろうかと言う自然金だ!!皆、集まって、拝観。
昨夜の金目鯛、金粉入りワインの霊験あらたか。

       含金石英礫【中央銀黒部に自然金】          自然金拡大
               菖蒲沢自然金【採集・撮影 Oさん】
千葉県のOさん3世代は、朝10時頃に菖蒲沢に行き海岸で、子供二人と雨の中、小1時間頑張って
ルーペサイズで凄く小さいながら自然金と思しきものが付いた石をなんとか1つだけ拾う事が
出来た、とのメールをいただきました。

【いざ、帰りなん】
後ろ髪を引かれる思いで、3時前に採集を切り上げ、天城峠を経て、4時半過ぎに、狩野川脇の
公園で解散。それぞれ、採集品と想い出を乗せて、帰途についた。

4. おわりに

(1)ピーク時には26名での採集で、安全確保が一番心配でしたが、参加していただいた
皆様の意識の高さもあり、無事終了することができ、ホッとしています。
参加していただいた皆様はじめ、宿の手配、産地案内、玉手箱標本寄贈そして差し入れをして
下さった皆様に、厚く御礼申し上げます。
(2)今回、滋賀県以西の皆さんの都合が悪く、参加がありませんでしたが、次回参加して
いただけるような、計画を作成したいと思います。
(3)ただ、大勢でしかも子どもからベテランまでが一緒に楽しめる産地は、そうそう多くは
ありませんので、候補地の選定が楽しみでもあり、苦しみです。

5. 参考文献

1)加藤昭ほか:鉱物採集の旅―東海地方をたずねて―,築地書館,1983年
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