千葉の石友・Mさんから、松原先生の近著『鉱物観察ガイド』に千葉県の産地も
@〜Bの3箇所が載っている、と教えていただき、早速注文した。
@ 平久里
A 鴨川市
B 鋸南町
これらの産地の一部は既に訪れ、平久里で採集した肉眼サイズの「自然銅」は
この産地として、初めての報告だろう。
平久里は「霰石」などの炭酸塩鉱物の産地として有名で、妻と2人で2008年2月末
(2) 方解石【CALCITE:CaCO3】
(3) ソーダ珪灰石/ペクトライト【PECTOLITE:Ca2NaSi3O8(OH)】
(4) 霰石【ARAGONITE:CaCO3】
(5) 水苦土石【HYDROMAGNESITE:Mg5(CO3)4(OH)2・4H2O】
(2) 平久里の「自然銅」
と、書いたところ、石友・Mさんから次のようなメールをいただき、訂正させ
『 出典は科学博物館主催の鉱物観察会の案内書だと思います。
( COPPER from Heguri , Tomiyama Town , Chiba Pref. )
訪れたのも「ゾノトラ石」を初めとする炭酸塩鉱物が目的だった。
このとき、肉眼サイズの「自然銅」という思いがけない”幸運”に恵まれ、興奮の
あまり、炭酸塩鉱物を紹介しなかったので、改めてまとめてみた。
( 2008年2月採集 同月 見直し )
2. 産地
千葉県富山町平久里は、館山自動車道「鋸南富山IC」でおり、10kmほどで
産地に到着する。
産地は、次の3箇所だが、1つ1つの範囲が広いので、思わぬ鉱物に出会える
可能性も高い。
なお、産地Aの稼行中の採石場は、休みで、たまたま居合わせた方に了解を
得て採集させていただいたが、いつも採集できるとは限らないので、悪しからず
了解願いたい。
@旧採石場 A稼行中の採石場
B沢
産地
3. 産状と採集方法
産地には、露頭がむき出し、転石がゴロゴロしている場所があり、それらの中で
白い炭酸塩鉱物の脈が入った部分をハンマとタガネで割って破断面をルーペで
観察する。
4. 産出鉱物
(1) ソーダ沸石【NATROLITE:Na2Al2Si3O10・2H2O】
透明〜白色、四角い柱状で、先端が低い錐面の特徴ある結晶で晶洞の中に
見られる。
変成を受けた緑黒くて硬い母岩に網目状に走る、脈状のソーダ沸石の太い
部分に晶洞が来ることが多いようだ。晶洞の幅は狭く、ソーダ沸石は限られた
空間の中で放射状に結晶している。
ソーダ沸石
泥岩が変成を受けた黒色をした母岩に網目状に方解石が見られ、隙間の
部分に、「犬牙状」「釘頭状」などの自形結晶が見られる。
「犬牙状」 「釘頭状」
方解石
はんれい岩を網目状に走る白い脈を割ると、その断面は脈に直角の繊維
状で産する。
珪灰石【WOLLASTONITE:Ca3Si3O9】のカルシウム(Ca)を
ナトリウム(Na)で置き換えたもので、この地域ならではの鉱物である。
ペクトライト
透明〜白、針状〜細板状の放射状結晶として「蛇紋岩」の割れ目に見られ
ることがある。
霰石
蛇紋岩の割れ目の表面に、小さな泡を思わせる白色球状結晶として見ら
れる。
水苦土石
5. おわりに
(1) 平久里の炭酸塩鉱物
千葉に単身赴任して2ケ月ぶりに山梨に戻った。書棚を見ると加藤・松原
両先生が1982年に著した『鉱物採集の旅 東京周辺をたずねて』があった。
それを開くと、「平久里の鉱物」なる一章がある。ここ平久里では、「ゾノトラ
石の針状結晶」「トベルモリ石」などの珍しい鉱物が産出し、既に25年以上前に
千葉県は『石なし県』の”汚名”(?)を返上していたことを知った。
『鉱物採集の旅 東京周辺をたずねて』に、「・・・新鮮なはんれい岩に・・・
・・・まれには自然銅なども見つけることができます」、なる一文があり、「関東
地方の鉱物」の出典がここにあるようだ。
ていただく。
その後、「 鉱物情報 ,39,463-465(1980), 加藤 昭, 千葉県平久里の鉱物」
にも載っております。 』
6. 参考文献
1) 加藤 昭、松原 聰:鉱物採集の旅 東京周辺をたずねて,築地書館,1982年
2) 松原 聰:関東地方の鉱物,鉱物情報100号記念出版物企画委員会
池田重夫技官退官記念会,平成10年
3) 松原 聰、宮津 律郎:日本産鉱物型録,東海大学出版会,2006年