2005年12月「第14回東京ミネラルショー」

        2005年12月「第14回東京ミネラルショー」

1. 初めに

   東京では、年に2回、国際的なミネラル・ショーが開催される。「第14回東京ミネラル
  ショー」が12/16〜19にかけて、池袋の「サンシャインシティ文化会館」で開催されたので
  12/17(土)に訪れた。( 妻は、風邪でダウンし不参加 )

    入場券

   最近、東北、中部や北陸地方の産地を中心に巡っているため、すっかりご無沙汰して
  いる千葉県のYさん一家、東京のMさん、Tさん親子など関東の石友に会うことができた。
   景気の本格的回復(?)を反映してか、会場内はごった返しており、特に国産標本を売る
  ブースには黒山の人だかりが見られたが、「レインボー柘榴石」「○○の紫水晶」などは
  飽きられたのか、それらがメインのブースは閑古鳥が鳴くありさまだった。
   私は、「日本産鉱物50種」の残り6種を求めてあちこちのブースを覗いて見たが、全く
  見当たらなかった。
   それでも、この夏訪れた石川県能登鉱山で得られなかった ”幻の方解石菱面体結晶”
  袋入りで、しかも格安で購入できた。まさに、”能登の仇を池袋で討つ”の思いである。
   このように、今まで訪れた産地で採集できなかったり、文献で読んだだけの鉱物に
  思いもかけず出会えるのもミネラルショーの楽しみの1つである。
   2005年のミネラルウオッチングの締めくくりの1つとして、有意義な1日であった。
    ( 2005年12月情報 )

2. 場所と規模

   JR池袋駅からサンシャインビルを目指して進み、「東急ハンズ」の脇から一旦地下に降り
  「文化会館」を目指す。ここの2Fが会場である。
   公式ガイドブックには、国内127社(120社)、海外61社(58社)が参加とあり、( )の昨年の
  参加数に比べ、国内外とも増加し、国内最大級のミネラル展示・即売会である。
   以前は、「鉱物化石ショー」だったが、2004年から「ミネラルショー」と銘打ってはいますが
  「化石」や「ジェム」がメインのお店も沢山あり、「ジェム」のブースは若い女性が半数以上
  だったような感があった。

    会場風景

3. ミネラルフェアの楽しみ

 3.1 国産鉱物標本
    国内の鉱山が閉山して久しく、しかもあちこちの産地が採集禁止になって、良品の採集が
   難しくなっている昨今、国産標本の人気が高く(ついでに値段も)、国産標本を扱うブース
   ( クリスタルワールド、小室宝飾、関東鉱物同好会、大江理工社など )は、比較的人だかり
   していた。
    一方で、「レインボー柘榴石」「○○の紫水晶」「逸見石」などをメインにしたブースは
   閑古鳥が鳴くありさまだった。

  (1) 日本産鉱物50種
       HPに掲載した「日本産鉱物50種」の内2種は2005年に自力採集することができ
      残り6種を求めて、国産標本を販売しているブースを重点に物色したが、全く見当
      たらなかった。

  No 産地 鉱物
 5 秋田県太良 方鉛鉱(八面体と六面体の集形)
 9 秋田県荒川 黄銅鉱(三角式結晶)
 19 徳島県眉山 ルチル
 30 秋田県日三市 荒川石(ベスジェリ石<原文のまま>)
 45 大分県尾平灰鉄輝石(結晶)
【番外】 北海道手稲手稲石

  (2)里帰り標本
      里帰り品には、良いものが沢山ある。以前、20cmを超える市ノ川鉱山の輝安鉱や
     秩父鉱山の紐状自然金などを、今になって思うと比較的廉く購入した。
      今回、Ms.Hisami は、里帰り品を持参していなかった。アメリカでも良品は得難くなって
     いるらしい。

  (3)国産標本購入品
     今回購入したのは、2005年訪れた産地で採集できなかったもの、石友と話題にしている
    もの、そして未公開の産地の標本などで、値段は500円〜1,500円と安価なものが多かった。

 No 鉱物名 化学式 産 地   標   本 価格   備  考
 1針銀鉱
(Argentite)
Ag2S秋田県
院内銀山
1,200円  愛知県・K夫妻から鑑定
依頼があった鉱物

 晶洞の中の短柱状
自形結晶は珍しい
 a面、d面が均等に
発達し、八角柱状に
見える
 頭は溶け(?)丸みを
帯び鏡面になり
柱面には条線がある

 輝銀鉱(Argentite)と
ラベルにあるが常温で
すべて針銀鉱に転移
 従って、正式名は
針銀鉱

 2重晶石
(Barite)
BaSO4福島県
只見町
1,500円  新産地
 3コランダム
(Corundum)
Al2O3福島県
玉川村
北須釜
(きたすがま)

 全体【青い点がサファイア】


  拡大【六角柱状を示す】

1,000円  古典的産地
小室 吉郎氏によれば
40年以上前の採集品とのこと

 神奈川の石友・Wさんは
「訪れたが採れなかった」
 絶産(?)

 4ヘルバイト
(Helvite)
Mn4Be3
(SiO4)3S
栃木県
大芦鉱山

   全体【黄緑色部分】


     結晶拡大

1,470円  HP掲示板に書込みが
あったように長野県の
八木沢鉱山で良品が
産したらしいが
現品未見
 ヘルバイトの見本として
購入した

 ヘルビン(Helvine)と
ラベルにあるがこれは
野外名で不適当
 ヘルバイトが正式名

 5方解石
(Calcite)
CaCO3栃木県
足尾鉱山
500円  自形結晶
 6方解石
(Calcite)
CaCO3石川県
珠洲市
能登鉱山

    各種自形結晶


   貫入双晶【最大2cm】

500円/袋  ”幻の方解石”

菱面体自形結晶

2005年残念産地

 7紫水晶
(Amethyst)
SiO2京都府
広野
   630円  紫水晶大好きの
妻へのお土産
 8自然金
(Native
 Gold)
Au兵庫県
中瀬鉱山
840円  有名産地
「日本鉱物」記載
 9含金石英
(Quartz
including
 Gold)
SiO2/Au和歌山県
岩出町
500円  中学生が発見した産地
鉱区が設定されたと聞く

 ひょっとして、稀産の
「○○○」が付いて
いないかと購入

10コニカルコ石
(Conichalcite)
CaCu
(AsO4)
(OH)
山口県
喜多平鉱山

       全体


       拡大

840円  有名産地
「日本鉱物」記載

    この他、国産では奈留島の双晶が4,000〜5,000円/ケ、中宇利鉱山のヒーズルウッド鉱の
   掌サイズが50,000円など、法外な(?)値段で売られているものもあったが、もちろんパス。

 3.2 外国産標本
     10cmを超える輝安鉱や両翼5cmの水晶の日本式双晶など中国産のものであれば
    それぞれ500円、1,500円で購入でき、うれしい”価格破壊”が進んでいます。しかし
    買う気は起らなかった。
     これら以外でも、綺麗な色や変わった形の鉱物標本に食指を動かしそうになったが
    今回購入したのは”結晶形態学”の資料として、ブラジル産の磁鉄鉱2種だけであった。

 No 鉱物名 化学式 産 地   標   本 価格   備  考
 1磁鉄鉱
(Magnetite)
FeFe'''2O4ブラジル   50円/ケ  八面体完全結晶

 3.3 特別講座
     いつものように、国立科学博物館名誉研究員の加藤博士による特別講座がレベル別に
    2回に分けて実施され、両方とも受講した。
     これらの内容については、折をみてHPにまとめてみたいと考えています。

     加藤博士講演

レベル  題   目   付 属 標 本受講料   備  考
初級系列を作る鉱物方解石【Calcite:Ca[CO3]】
栃木県足尾鉱山産

菱マンガン鉱【Rhodochrocite:Mn[CO3]】
埼玉県秩父鉱山産

 800円  
中級
〜上級
同質異像鉱物紅柱石【Andalusite:Al2[O|SiO4]】
福島県北須釜(きたすがま)産

藍晶石【Kyanite:Al2[O|SiO4]】
ブラジル・ミナスジェライス産

 800円  

 3.4 特別展示
     今回の特別展示は鉱物関係でなく、化石関係で「驚きの立体魚類化石展」が開催されて
    いた。会場の一角では、マイケルシュビッケルト氏による化石のクリーニングの実演も実施
    されており、小型のエアーチゼル【 空気圧(エアー)でうごくタガネ(チゼル)】とブラシだけで
    母岩から立体的に化石を掘り出していく手腕はまさに”ゴッドハンド(神の手)”です。
     私たちの標本もこのようにしてクリーニング(お化粧)すれば、1ランク、否、2ランクくらい
    見栄えがアップすること請け合いです。

     化石クリーニング実演

 3.5 文献・切手など鉱物関係資料入手
     地方にいると、なかなか入手できない、鉱物関係の文献や資料を入手する機会でも
    ある。
     最近、加藤博士による「鉱物種一覧 2005.9」が出版され、千葉の石友・Mさんからも
    知らせていただいたので内容を見た。
     全世界の鉱物 4,254種が記載されている。しかし、英名アルファベット順で記載され
    日本名での索引がないため、英語名が分からないと引けないことが判明し、購入を
    見送った。立派な本であり、早々に日本名と英語名の対応インデックスを付けていた
    だけることをお願いしたい。
     その代わりと言っては何だが、松原先生の「日本産鉱物種 第5版(2002)」(最新版)を
    購入した。

5. おわりに 

 (1) HPに掲載した日本産鉱物50種【番外含めて54種】の未収集品を求めてリスト片手に会場を
   駆け回りましたが、1点も追加できなかった。
    結局、2005年には、岐阜県木積沢で「苗木石」、京都府白川で「褐簾石」の2点を自力で
   採集できたにとどまった。
    今までに48種(48/54≒89%)が揃ったことになり、達成率89%と大台の90%も目前なので
   気長に取り組んでみたい。

   ・「あなたはおもちですか?」
       鉱物コレクターの資格審査
    (How Many Specimens do you have ? , Qualification of Mineral Collector)

 (2) 2005年も残すところ2週間あまりのこの時期、今年のミネラルウオッチングを総括する一助と
    してミネラルショーを訪れた。
     その結果、2005年に訪れ、残念な結果に終わった産地の”幻の鉱物”を入手したり、多くの
    石友とお会いするなど有意義な1日であった。
     今回入手した『能登鉱山の菱面体方解石結晶』にしても、2005年7月に開催したミネラル
    ウオッチングで石川県の石友・Yさんに産地を案内していただかなければ、はたまた
    「ペグマタイト」誌に掲載された高田氏の論文「能登鉱山の方解石」を読まなければ
    眼にはしても手にはしていなかったと思う。
     今年も、直接、間接に出会った大勢の石友に恵まれ、良き1年だったと皆様に感謝して
    います。

6. 参考文献 

 1)プラニー商会:第114回 東京ミネラルショー公式ガイドブック,2005年
 2)松原 聰:日本産鉱物種,鉱物情報,2002年
 3)加藤 昭:系列を作る鉱物 第14回東京ミネラルショー 特別講座参考資料,2005年
 4)加藤 昭:同質異像鉱物 第14回東京ミネラルショー 特別講座参考資料,2005年
 5)高田 雅介:能登鉱山の方解石 能登半島の思い出を訪ねて-その2- ,
          ペグマタイト 第72号,2005年
 6)益富地学会館監修:日本の鉱物,成美堂出版,1994年
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