最近、東北、中部や北陸地方の産地を中心に巡っているため、すっかりご無沙汰して
いる千葉県のYさん一家、東京のMさん、Tさん親子など関東の石友に会うことができた。
景気の本格的回復(?)を反映してか、会場内はごった返しており、特に国産標本を売る
ブースには黒山の人だかりが見られたが、「レインボー柘榴石」「○○の紫水晶」などは
飽きられたのか、それらがメインのブースは閑古鳥が鳴くありさまだった。
私は、「日本産鉱物50種」の残り6種を求めてあちこちのブースを覗いて見たが、全く
見当たらなかった。
それでも、この夏訪れた石川県能登鉱山で得られなかった ”幻の方解石菱面体結晶”を
袋入りで、しかも格安で購入できた。まさに、”能登の仇を池袋で討つ”の思いである。
このように、今まで訪れた産地で採集できなかったり、文献で読んだだけの鉱物に
思いもかけず出会えるのもミネラルショーの楽しみの1つである。
2005年のミネラルウオッチングの締めくくりの1つとして、有意義な1日であった。
( 2005年12月情報 )
(1) 日本産鉱物50種
HPに掲載した「日本産鉱物50種」の内2種は2005年に自力採集することができ
残り6種を求めて、国産標本を販売しているブースを重点に物色したが、全く見当
たらなかった。
No | 産地 | 鉱物 |
5 | 秋田県太良 | 方鉛鉱(八面体と六面体の集形) |
9 | 秋田県荒川 | 黄銅鉱(三角式結晶) |
19 | 徳島県眉山 | ルチル |
30 | 秋田県日三市 | 荒川石(ベスジェリ石<原文のまま>) |
45 | 大分県尾平 | 灰鉄輝石(結晶) |
【番外】 | 北海道手稲 | 手稲石 |
(2)里帰り標本
里帰り品には、良いものが沢山ある。以前、20cmを超える市ノ川鉱山の輝安鉱や
秩父鉱山の紐状自然金などを、今になって思うと比較的廉く購入した。
今回、Ms.Hisami は、里帰り品を持参していなかった。アメリカでも良品は得難くなって
いるらしい。
(3)国産標本購入品
今回購入したのは、2005年訪れた産地で採集できなかったもの、石友と話題にしている
もの、そして未公開の産地の標本などで、値段は500円〜1,500円と安価なものが多かった。
No | 鉱物名 | 化学式 | 産 地 | 標 本 | 価格 | 備 考 | 1 | 針銀鉱 (Argentite) | Ag2S | 秋田県 院内銀山 | 1,200円 |
愛知県・K夫妻から鑑定 依頼があった鉱物
晶洞の中の短柱状
輝銀鉱(Argentite)と |
2 | 重晶石 (Barite) | BaSO4 | 福島県 只見町 | 1,500円 | 新産地 | 3 | コランダム (Corundum) | Al2O3 | 福島県 玉川村 北須釜 (きたすがま) |
全体【青い点がサファイア】
| 1,000円 |
古典的産地 小室 吉郎氏によれば 40年以上前の採集品とのこと
神奈川の石友・Wさんは |
4 | ヘルバイト (Helvite) | Mn4Be3 (SiO4)3S | 栃木県 大芦鉱山 |
全体【黄緑色部分】
| 1,470円 |
HP掲示板に書込みが あったように長野県の 八木沢鉱山で良品が 産したらしいが 現品未見 ヘルバイトの見本として 購入した
ヘルビン(Helvine)と |
5 | 方解石 (Calcite) | CaCO3 | 栃木県 足尾鉱山 | 500円 | 自形結晶 | 6 | 方解石 (Calcite) | CaCO3 | 石川県 珠洲市 能登鉱山 |
各種自形結晶
| 500円/袋 |
”幻の方解石”
菱面体自形結晶 2005年残念産地 |
7 | 紫水晶 (Amethyst) | SiO2 | 京都府 広野 | 630円 |
紫水晶大好きの 妻へのお土産 |
8 | 自然金 (Native Gold) | Au | 兵庫県 中瀬鉱山 | 840円 |
有名産地 「日本鉱物」記載 |
9 | 含金石英 (Quartz including Gold) | SiO2/Au | 和歌山県 岩出町 | 500円 |
中学生が発見した産地 鉱区が設定されたと聞く
ひょっとして、稀産の |
10 | コニカルコ石 (Conichalcite) | CaCu (AsO4) (OH) | 山口県 喜多平鉱山 |
全体
| 840円 |
有名産地 「日本鉱物」記載 |
この他、国産では奈留島の双晶が4,000〜5,000円/ケ、中宇利鉱山のヒーズルウッド鉱の
掌サイズが50,000円など、法外な(?)値段で売られているものもあったが、もちろんパス。
3.2 外国産標本
10cmを超える輝安鉱や両翼5cmの水晶の日本式双晶など中国産のものであれば
それぞれ500円、1,500円で購入でき、うれしい”価格破壊”が進んでいます。しかし
買う気は起らなかった。
これら以外でも、綺麗な色や変わった形の鉱物標本に食指を動かしそうになったが
今回購入したのは”結晶形態学”の資料として、ブラジル産の磁鉄鉱2種だけであった。
No | 鉱物名 | 化学式 | 産 地 | 標 本 | 価格 | 備 考 | 1 | 磁鉄鉱 (Magnetite) | FeFe'''2O4 | ブラジル | 50円/ケ |
八面体完全結晶 |
3.3 特別講座
いつものように、国立科学博物館名誉研究員の加藤博士による特別講座がレベル別に
2回に分けて実施され、両方とも受講した。
これらの内容については、折をみてHPにまとめてみたいと考えています。
レベル | 題 目 | 付 属 標 本 | 受講料 | 備 考 | 初級 | 系列を作る鉱物 | 方解石【Calcite:Ca[CO3]】 栃木県足尾鉱山産
菱マンガン鉱【Rhodochrocite:Mn[CO3]】 | 800円 | 中級 〜上級 | 同質異像鉱物 | 紅柱石【Andalusite:Al2[O|SiO4]】 福島県北須釜(きたすがま)産 藍晶石【Kyanite:Al2[O|SiO4]】 | 800円 |
3.4 特別展示
今回の特別展示は鉱物関係でなく、化石関係で「驚きの立体魚類化石展」が開催されて
いた。会場の一角では、マイケルシュビッケルト氏による化石のクリーニングの実演も実施
されており、小型のエアーチゼル【 空気圧(エアー)でうごくタガネ(チゼル)】とブラシだけで
母岩から立体的に化石を掘り出していく手腕はまさに”ゴッドハンド(神の手)”です。
私たちの標本もこのようにしてクリーニング(お化粧)すれば、1ランク、否、2ランクくらい
見栄えがアップすること請け合いです。
3.5 文献・切手など鉱物関係資料入手
地方にいると、なかなか入手できない、鉱物関係の文献や資料を入手する機会でも
ある。
最近、加藤博士による「鉱物種一覧 2005.9」が出版され、千葉の石友・Mさんからも
知らせていただいたので内容を見た。
全世界の鉱物 4,254種が記載されている。しかし、英名アルファベット順で記載され
日本名での索引がないため、英語名が分からないと引けないことが判明し、購入を
見送った。立派な本であり、早々に日本名と英語名の対応インデックスを付けていた
だけることをお願いしたい。
その代わりと言っては何だが、松原先生の「日本産鉱物種 第5版(2002)」(最新版)を
購入した。
(2) 2005年も残すところ2週間あまりのこの時期、今年のミネラルウオッチングを総括する一助と
鉱物コレクターの資格審査
(How Many Specimens do you have ? , Qualification of Mineral Collector)
してミネラルショーを訪れた。
その結果、2005年に訪れ、残念な結果に終わった産地の”幻の鉱物”を入手したり、多くの
石友とお会いするなど有意義な1日であった。
今回入手した『能登鉱山の菱面体方解石結晶』にしても、2005年7月に開催したミネラル
ウオッチングで石川県の石友・Yさんに産地を案内していただかなければ、はたまた
「ペグマタイト」誌に掲載された高田氏の論文「能登鉱山の方解石」を読まなければ
眼にはしても手にはしていなかったと思う。
今年も、直接、間接に出会った大勢の石友に恵まれ、良き1年だったと皆様に感謝して
います。
6. 参考文献
1)プラニー商会:第114回 東京ミネラルショー公式ガイドブック,2005年
2)松原 聰:日本産鉱物種,鉱物情報,2002年
3)加藤 昭:系列を作る鉱物 第14回東京ミネラルショー 特別講座参考資料,2005年
4)加藤 昭:同質異像鉱物 第14回東京ミネラルショー 特別講座参考資料,2005年
5)高田 雅介:能登鉱山の方解石 能登半島の思い出を訪ねて-その2- ,
ペグマタイト 第72号,2005年
6)益富地学会館監修:日本の鉱物,成美堂出版,1994年