茨城県雪入のペグマタイト鉱物

茨城県雪入のペグマタイト鉱物

1.初めに

故日下先生の「鉱物採集フィールドガイド」には、1975年2月に、茨城県雪入で
日本で最初の燐酸塩ペグマタイトを発見した経緯が記述してある。
ここには、10年ほど前に訪れ、鉄電気石と鉄バン柘榴石を採集した。
10年ぶりに訪れ、産地の様変わりには驚いたが、産地は健在で、緑柱石、
鉄電気石、鉄バン柘榴石等のペグマタイト鉱物を採集したので報告する。
(平成13年1月採集)

2.産地

国道6号線から、千代田町の「雪入ふれあいの里」を目指して進む。
「雪入ふれあいの里」遠望
かつての採石場の跡に、自然観察・学習の場として建物が作られ、ズリが
整備され、10年前の面影はかろうじてコンクリートの擁壁に残っている
くらいです。
ここの、駐車場に車をとめ、左側から建物の裏に回り込み、自然観察路を
約500mほど登ると「風の池」がある。自然観察路のそこここに白い
ペグマタイト脈が見られ、晴れた日には白雲母がキラキラ光っている。
「風の池」の西側には、ペグマタイト脈の説明板があり、それによると
粘板岩(ホルンヘルス)と両雲母花崗岩に幅数メートルのペグマタイト脈が
入り込んでいるのが観察できる。また、池の北側の採石場の壁面であった
所にも、幅数十センチの白いペグマタイト脈が数条認められる。
各種のペグマタイト鉱物は、風の池の水辺近くで採集できる。
「風の池」

3.産状と採集方法

ペグマタイト鉱物は、白い両雲母花崗岩の中や、それらが粘板岩
(ホルンヘルス)と接する付近に集まっていますので、白い転石や露頭が
あったら注意深く観察すると緑柱石が付いていることがある。大きなものは、
割ってみる。

4.産出鉱物

(1)緑柱石【Beryl:Be3Al2Si6O18】
「鉱物採集フィールドガイド」には、30cmくらいの緑柱石の巨晶が採れたとの
記述があるが、採石場が稼働していない今では難しい。
径1〜2mm針状で、水色〜緑色がかった、透明の緑柱石の母岩付きが採集できた。
雪入の緑柱石
(2)鉄電気石【Schorl:NaFe3Al6(BO3)Si6O13(OH)4】
一抱えもあるペグマタイトの巨晶鉄電気石がビッシリ付いた転石があり、その
傍らに、最大のものが径1cm長さ4cmの鉄電気石が10本近く付いた握り拳大の
標本があった。残念ながら、頭付きは採集できません。
「鉱物採集フィールドガイド」に掲載してある母岩付き鉄電気石の母岩がいやに丸みを
帯びているのが気になっていたのですが、採石を水洗いするため筒の中に入れて
回転させた(一種の川ずれ?)ためだろうと想像しています。
同じ状態のものを10年ほど前に、採石場の排水溝で採集して、上記の想像は確信に
変わりました。
雪入の鉄電気石
(3)鉄バン柘榴石
ペグマタイトの巨晶部分やホルンヘルス部分から母岩付きの鉄バン石榴石が
採集できる。10年前には、径5mmの母岩付きが採集できたのですが、今回は、
径1mm程度のものがプチプチと付いたもので、立派な標本では有りません。
(4)燐酸塩ペグマタイト鉱物
実物を見ていないため、燐酸塩ペグマタイト鉱物がどのようなものか分からず、
しかも稼働を止めて十数年経ち、転石・露頭の表面が苔、サビで覆われ、現地での
鑑定、採集は困難でした。

5.おわりに 

10年ぶりの雪入訪問であったが、緑柱石が採集できるなど、まだまだ楽しめる
産地ですが、岩石、鉱物の採集が禁止されていますので、節度ある行動が求められます。
建物裏には、大きな「珪化木」を展示してありますので、見て帰りましょう。
珪化木【径0.7m長さ2.5m】
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