「鉱物採集フィールドガイド」を読み直してみると、『千葉県安房鴨川の鉱物産地』
なる一章があり、「ソーダ沸石」などの沸石系のほかに”ラブラドライト”系の鉱物が
採集できるとある。
この本が書かれて、30年近くが経ち、産地の様子を石友・Yさん、Mさんに尋ねた
ところ、産地地図と採集品の写真が載った産地案内をメールしていただいた。
2008年2月初旬、単身赴任の”行状監督”に来た妻と、八岡海岸を訪れた。石友
Yさん、Mさんの情報のお蔭で、迷うことなく産地に到着でき、教えられたポイントで
沸石脈が走る転石を叩くと、「ソーダ沸石」などが採集できた。しかし、転石はかつて
採石場か鉱山(?)が稼行していた当時のもので、訪れる人に叩かれる度に減って
しまい、良品は得にくくなっているようだ。
”ラブラドライト”の正体は”中性長石”らしいが、桜井先生のコレクションにただ1点
あっただけという、『幻の鉱物』と言われるだけに、簡単には見つからなかった。
千葉県東南部、太平洋に面した暖かいはずの産地だが、この日は肌寒い1日だ
った。それでも、「長崎鼻のピンクの霰石」に勝るとも劣らない綺麗な沸石を採集で
き、『石(鉱物)なし県』と聞いていたイメージを修正しつつある。
産地情報を教えていただいたYさん、Mさんに厚く御礼申し上げる。
( 2008年2月採集 )
このほか、「方沸石」や稀れに「魚眼石」が採れる、との情報もあるが、確認で
きなかった。( ルーペを忘れてしまった )
千葉に来て2週間、落ち着いたころに、ご当地の石友・Mさんから次のような
メールをいただいた。
『 もうはハンマーの封印はハズレたのでしょうか?
科学博物館 データベース登録鉱物標本は50種 計223個ありました。
個人的にはNatrolite(ソーダ沸石)が千葉県の代表的美晶鉱物の一つだと
『石無し県』にしては多いのかもしれません。
主な産地としては、富津市 銚子市 鴨川市 南房総市 峯岡山 安房郡
等がありますが、中でも鴨川市の太海はNatrolite(ソーダ沸石)の産地として
有名で、房総の先っぽの方にはzeolite(沸石類)の産地が沢山あるようです。
太海(ふとみ)のNatrolite(ソーダ沸石)は多分MHさんの図鑑にも美晶が
載っていることでしょうね。
思っております。 』
全国各都道府県を代表する鉱物を『 県の鉱物 』として、HPに掲載した。
これによると、千葉県の鉱物は、『ソーダ沸石』である。産地は、「太海(ふ
(2) 鴨川のラブラドライト
『 かつて明治の末かか大正の初めころ、この地域の海岸から青紫色のみ
桜井先生のコレクションにただ1点あっただけという、『幻の鉱物』と言われる
( Mineral of Prefecture )
とみ) 」とあるが、今回訪れたと同じ場所を指しているようだ。
益富地学会館監修の「日本の鉱物」にも、千葉県鴨川市八岡山太海産の
「ソーダ沸石」が記載されている。
「鉱物採集フィールドガイド」には、鴨川地域で採集された”ラブラドライト”に
ついて次のように記している。
ごとな閃光を放つ長石がひと塊見つかったことがある。
・・・灰褐色の塊状でおそらくラブラドル長石だろうといわれていた。しかし
鴨川地区のどこから産したのかはっきりした報告がなく、幻の鉱物と言わ
れている 』
だけに、簡単には見つからなかったが、引き続き探してみる価値はありそうだ。
6. 参考文献
1) 草下 英明:鉱物採集フィールドガイド,草思社,1988年
2) 益富地学会館監修:日本の鉱物,成美堂出版,1994年
3) 松原 聰、宮津 律郎:日本産鉱物型録,東海大学出版会,2006年