河津町やんだの鉱物

河津町やんだの鉱物

1.初めに

今年の冬は寒さが例年になく厳しく、山梨をはじめ関東・甲信越の鉱物産地は
あちこち凍結状態で、採集が難しい状況です。「掲示板」にも書いた様に
”この時期は伊豆がお奨めです”ので、2003年新春鉱物巡検の旅-伊豆を訪ねて-を
計画した。
私のHPを見て知り合った関東、中部のメンバ25名(内高校生以下10名)の皆さんと
2日間の採集を楽しんだ。
その2日目、通称「ヤンダ」と呼ばれる河津町菖蒲沢海岸に隣り合う海岸沿いの露頭で
モルデン沸石はじめ、各種の鉱物を採集した。
ここは潮溜まりにあり、満潮時には採集ができないので、事前に潮見表で干潮時間を
確認しておくと良いでしょう。
(2003年2月採集)

2.産地

「亀の博物館」の北、道路脇に釣具店があります。その先の河津寄りの路肩に駐車し
畠の中を海岸に向かって下って行く。途中二又に分かれるので、右に行くと正面に溶岩の
平坦な汐溜まり(俗に言う千畳敷)があります。
その右手から菖蒲沢までの溶岩の露頭が産地です。
菖蒲沢海岸【沸石産地】

3.産状と採集方法

ここは、海底火山の噴火に伴って噴出した安山岩質の角礫岩の中に脈状や芋状に沸石や
玉髄など各種の鉱物が結晶したものである。
露頭の高さ約3mくらいの位置にサッカーボール大の気泡の内壁に真っ白い沸石が結晶した
ものを見ることができます。溶岩をタガネとハンマで叩いて採集します。
溶岩は、緻密で硬いので、大き目のタガネとハンマが望ましい。また、溶岩に白色や緑色の
脈が入った付近を叩くのがポイントです。
やんだ採集風景

4.産出鉱物

(1)モルデン沸石【Mordenite:(Na2,Ca,K2)Al8Si40O96・28H2O】
毛状で産出する沸石の代表で、球形をなす「毛玉状」で産するものと、束をなす「扇状」で
産出するものの2通りがある。緑色の脈の周囲を叩けば、確実に採集できます。

      毛玉状           扇状
       菖蒲沢海岸のモルデン沸石
(2)方解石【Calcite:CaCO3】
ここでは、自形菱面体透明なもの、犬牙状、塊状で薄くピンク色をした方解石が採集できる。
犬牙状方解石
(3)輝沸石【Heulandite:Ca(Al2Si7O18)・6H2O】
ここでは、玉髄を伴う晶洞の中に、玉髄の上に透明な六角板状結晶で産出します。太陽光の下で
見るとその名の通り、結晶面が”キラッ、キラッ”と輝いて見える。
輝沸石
(4)菱沸石【Chabazite:CaAl2Si4O12)・6H2O】
透明〜白色で自形の菱面体(マッチ箱を押しつぶした形)で産出します。ここでは、同じような
菱面体をなす鉱物として方解石があリますが、外見上次のように識別できます。
@方解石は、劈開が3方向に完全で、どこまでも菱面体に割れる。
 菱沸石は、劈開がない。
A菱沸石は、透入双晶をなすことが多い。
菱沸石
(5)魚眼石【Apophyllite:KCa4(F,OH)Si8O20)・8H2O】
透明〜白色、ガラス光沢を示す。劈開面では、真珠光沢を示す。

         群晶        分離結晶
              魚眼石
(6)このほか、ダキアルディ沸石、束沸石などが採集できることがあります。

5.おわりに 

(1)モルデン沸石の毛玉をつぶさないよう持ち帰るためには、新聞紙で回りを包み
   菓子の空き箱などに入れると良いでしょう。
(2)最近は、インターネットで簡単に潮見表を入手することができます。
   出かける前に、調べておくと便利です。

潮見表


6.参考文献 

1)加藤 昭ほか:鉱物採集の旅-東海地方をたずねて-,築地書館,1983年
2)加藤 昭:沸石読本,関東鉱物同好会事務局,1997年
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