静岡県河津町やんだの沸石

静岡県河津町やんだの沸石

1.初めに

 今年の冬は例年になく寒さが厳しく、山梨では3月に入ってこの冬一番の
積雪を記録したほどです。
 「2003年新春鉱物巡検の旅-伊豆を訪ねて-」のフォローアップを兼ね、ほぼ
1ケ月後に、同じコースで回り、2日目の午後、沸石産地の「ヤンダ」を再訪した。
 潮見表で調べた干潮の1時間前、2時ごろ海岸につくと、千葉県のYさん一家が
既に来ており、一緒の採集となった。
 午前中の雨も上がり、海上はるかに伊豆七島が見渡せ、ウララカな陽気の中で
大ハンマを振るう、爽快な採集であった。
(2003年3月採集)
伊豆七島

2.産地

「亀の博物館」の北、道路脇に釣具店があります。その先の河津寄りの路肩に
駐車し、畠の中を海岸に向かって下って行く。途中二又に分かれるので、右に行くと
正面に溶岩の平坦な汐溜まり(俗に言う千畳敷)があります。
 その右手から菖蒲沢までの溶岩の露頭が産地です。
菖蒲沢海岸【沸石産地】

3.産状と採集方法

ここは、海底火山の噴火に伴って噴出した枕状溶岩の中に脈状や芋状に沸石や
玉髄など各種の鉱物が結晶している。
露頭の高さ約3mくらいの位置にサッカーボール大の気泡の内壁に真っ白い沸石が
結晶したものを見ることができますが、危険で手が出ません。
溶岩をタガネとハンマで叩いて採集しますが、溶岩は、緻密で硬いので前回の採集会で
大ハンマの必要性を痛感し、今回持参したのが大正解でした。
 また、溶岩に白色や緑色の脈が入った付近を叩くのがポイントです。
やんだ採集風景1
  博士君 「大ハンマ持って、おじさんの仕事は何?」
   私   「五無斎流にいうと、”地球をブッカク商売”かな 」

やんだ採集風景2
     仲睦まじい、Yさんご夫妻です。

4.産出鉱物

(1)モルデン沸石【Mordenite:(Na2,Ca,K2)Al8Si40O96・28H2O】
 毛状で産出する沸石の代表で、球形をなす「毛玉状」で産するものと、束をなす
  「扇状」で産出するものの2通りがある。緑色の脈の周囲を叩けば、確実に採集
できます。
モルデン沸石の大晶を採った博士君
(2)方解石【Calcite:CaCO3】
ここでは、自形菱面体透明なもの、犬牙状、塊状で薄くピンク色をした方解石が採集
できる。
犬牙状方解石
(3)輝沸石【Heulandite:Ca(Al2Si7O18)・6H2O】
ここでは、玉髄を伴う晶洞の中に、玉髄の上に透明な六角板状結晶で産出します。
太陽光の下で見るとその名の通り、結晶面が”キラッ、キラッ”と輝いて見える。
輝沸石
(4)菱沸石【Chabazite:CaAl2Si4O12)・6H2O】
透明〜白色で自形の菱面体(マッチ箱を押しつぶした形)で産出します。ここでは
同じような菱面体をなす鉱物として方解石があリますが、外見上次のように識別できます。
(塩酸があれば、発泡すれば方解石、しなければ束沸石ともっと確実です。)
@方解石は、劈開が3方向に完全で、どこまでも菱面体に割れる。
 菱沸石は、劈開がない。
A菱沸石は、透入双晶をなすことが多い。
菱沸石
(5)魚眼石【Apophyllite:KCa4(F,OH)Si8O20)・8H2O】
透明〜白色、ガラス光沢を示す。劈開面では、真珠光沢を示す。

         群晶        分離結晶
              魚眼石
(6)玉髄【Chalcedony:SiO2】
 ここでは、各種の玉髄が採集できます。晶洞の内面を埋めるように小さな仏頭状
そこから成長した細紐状そして球形の魚卵状をなすものなどがあり、中には芸術品と
思われるものもあります。
Yさんも私も、魚卵状玉髄を採集しました。
魚卵状玉髄
(7)このほか、ダキアルディ沸石、束沸石などが採集できることがあります。

5.おわりに 

(1)モルデン沸石の毛玉をつぶさないよう持ち帰るためには、新聞紙で回りを包み
   菓子の空き箱などに入れると良いでしょう。
(2)出かける前に、潮見表を調べておくことが絶対必要です。
   @空振りにならない。
   A危険防止
   満潮時には採集になりませんし、無理をすると、波に持っていかれる危険性も
   あります。
   最近は、インターネットで簡単に潮見表を入手することができます。
潮見表【2003年3月9日の下田】

潮見表


6.参考文献 

1)加藤 昭ほか:鉱物採集の旅-東海地方をたずねて-,築地書館,1983年
2)加藤 昭:沸石読本,関東鉱物同好会事務局,1997年
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