・ 幻の鉱物 「山梨県産 斧石」
( Legend of Minerals , FERRO-AXINITET from Yamanashi , Yamanashi Pref. )
石友にいただいた標本があまりに見事なので、産地を訪れ、産状を確認し、自力採集してみた
くなり、今でも産地が健在なら恒例のミネラル・ウオッチングで皆さんを案内すればきっと喜んで
いただけるだろうという思惑から、下見を兼ねて産地の探査にでかけた。
石友に聞いたおおよその産地の場所への林道に差し掛かるとゲートが閉まっていた。ここから
歩くと片道6、7kmはありそうだし、カンカン照りで、”老体”にはこたえそうだ。さてさて、どうしたも
のか、しばし逡巡したが、”鈍った身体のリハビリにピッタリ”、と考えて歩き出した。ずっと上り坂の
連続だが、帰りは下り坂だから楽だ、とポジティブに考えて進んでいく。このあたりは春の訪れが
遅いのか、藤の花が満開だし、野鳥の囀(さえず)りがうるさいくらいだ。
1時間半ほどで教えてもらったあたりに着いたがコンクリートが吹き付けられていてそれらしい
露頭がない。もう少し先かと思って下って行くと沢に出会いこんな下ではないはずだ。
早めのお昼を食べた後、戻りながら少ない露頭と転石を観察すると「氷長石」や「鉄電気石」が
採集できた。さらに戻って露頭を観察するとペグマタイト質だ。軟らかいところを掘ってみると晶洞
が姿をみせ、壁にはこの地域で多産する「氷長石」のほかに「緑鉛鉱」や「白鉛鉱」など鉛の二次
鉱物も見られる変わった産状だ。
結局、目的とした「斧石」は出てこなかった。帰宅後、石友に電話すると「コンクリートが吹き付け
られたのでは採集は無理ですね」、というわけでオリジナルの産地は”絶産”のようだ。
こんなわけで、「山梨県産 斧石」は、『幻の鉱物』に終わってしまいそうだが、”瓢箪(ひょうたん)
から駒(こま)”で、面白い標本をいくつか入手できたからミネラル・ウオッチングは止められない。
加藤先生の「ペグマタイト鉱物読本」には、今回採集できた鉄電気石の共存鉱物として、「鉄斧
石」が載っており、涼しくなったら、鉄電気石を採集したあたりを引き続き探査してみるつもりだ。
( 2014年6月 採集 )
「 ・・・はっきりと2種の岩石が境目をつくっているのがわかるところ・・・・・・ 」
採集方法は、上の絵にもあるように、露頭や転石からハンマーとタガネを使って掻き取るか、露
頭の花崗岩の粒が粗いペグマタイト質のところを攻めて”晶洞”を開けるか、だ。
(2) 氷長石【ADULARIA:KAlSi3O8】
晶洞の中から、三斜晶系特有のクサビ型に尖った結晶で、真っ白というより透明な結晶が
晶洞壁に族生する形で産出した。
花崗岩の割れ目の両側から成長した結晶が鉄分で茶褐色に鉱染されたものも採集できた。
(3) 緑鉛鉱【PYROMORPHITE:Pb5(PO4)3Cl】
晶洞壁の茶色に鉄分で染まった割れ目の上に鮮緑色の皮膜状や短柱状結晶で産する。白
色柱状で先端がとがった白鉛鉱【CERUSSITE:PbCO3】も共生する。
なぜ鉛やリン酸塩(PO)を含む二次鉱物が産出するのか疑問に思った。この近く(地質学的
な規模での近く)には昭和の時代まで金・銅・鉛などを採掘した鉱山跡があり、林道沿いの花
崗岩に点々と緑色や青色シミ状の二次鉱物がみられることがあり、納得した。
(1) 「山梨県産斧石」
山梨県産の斧石産地を訪れたが、産地はすでに”絶産”状態だった。ここで産出したのは鉄
斧石【FERRO-AXINITE:Ca2(Fe,Mn)Al2BSi4O15(OH)】と考えられる。
今回採集した鉄電気石とは、ホウ素(B)を含むという点で共通だ。加藤先生の「ペグマタイト
鉱物読本」には、鉄電気石の共存鉱物として鉄斧石が載っており、鉄電気石を採集したあたり
に鉄斧石が隠れていそうな気もする。
しばらく、”絶産”宣言は出さないでおこうと思う。
(2) 庭木の剪定
暑かった5月も終わり、6月に入った。この春先、庭木を少し強めに選定した。庭の隅に「グミ
の木」があり、植えて20年近くになるのだが毎年数える数しか実がならない。「徒長枝」が多す
ぎるのだろうと思い至り、例に漏れず強めの剪定を施した。その効果があったのか、枝先には
鈴なりに実をつけ、野鳥たちも大喜びだ。人間もおこぼれを頂戴すると、種の周りに少し渋みが
あるものの、甘くておいしい。
何事も、行うのに遅すぎるということはなさそうだ。