山梨県北部の「板チタン石」

             山梨県北部の「板チタン石」

1. 初めに

    2009年12月、千葉県の石友・Mさんから、『オフ・シーズンの楽しみ』、というメールをい
   ただいた。
    私のオフ・シーズンの楽しみの1つは、採集した標本を仔細に観察し、”Our Colection”
   として残すか「玉手箱」行きか分別、写真の撮影、HP作成などシーズン中と変わらずに
   鉱物と触れ合うことだろう。

    2009年11月初め、石友・ASさんと山梨県北部のフィールドを訪れると、すでに初雪が
   降ったらしく、日蔭は真白に薄化粧していた。

      薄化粧したフィールド
  

    このとき採集した水晶をほかの産地のものと同様に、塩酸→水洗→蓚酸→水洗→乾
   燥、のステップでクリーニングしてからジックリ観察したところ、肉眼でもはっきりわかる
   「板チタン石」があった。
    この産地の「板チタン石」は、何回か報告しているのだが、このように大きなものは初
   めてなので、改めてまとめてみた。

    このような、素晴らしい「板チタン石」を採集でき、同行いただいたASさんに、厚く御礼
   申しあげる。
    ( 2009年11月採集 )

2. 産地

    ここは、有名産地なので、詳細は割愛する。

3. 産状と採集方法

    黒平の古老に聞くと、○○○では、マサ化した花崗岩に挟まれたペグマタイト脈の晶洞
   から水晶を掘ったようだ。産地には、コケに覆われたり木が生えた”窪地”がアチコチに見ら
   れるが、黒平の人々による掘り跡のようだ。
    2009年8月ごろ、子ども達を案内し、ズリを掘っていると、水晶掘りの人々が使ったと
   思われる土砂を運ぶ『箕(み)』が出てきたこともあった。

      水晶掘り遺物
  

    ここでの採集は、ズリを掘るのが一般的だ。危険な場所が少なく、手軽に採集できるので
   女性や子供向きでもある。

    しかし、「水晶の群晶」を狙うとなると、花崗岩がマサ化した”ボロボロ”崩れる露頭を出し
   て、石英脈を追って『晶洞』を見つけるしかない。

      「水晶」産状【細い石英脈に伴う】
  

4. 産出鉱物

    各種のインクルージョン入り水晶が採集できるほか、「日本式双晶」や「エステレル式
   双晶」も採集できる。今回は、「板チタン石」だけを紹介する。

   鉱物名
【英語名:化学式】
  産   状          写      真
板チタン石
【BROOKITE:TiO2


水晶の表面に成長しており
水晶成長の終わりのころに
できたと考えられる。

飴色、透明、ガラス光沢で、
C軸方向に”条線”が観察
できる。













「板チタン石」の上に見える
黒い針状鉱物は、「鉄電気石」
と思われる。
















薄板状結晶図







             拡大

   
         全体【高さ 25mm】

   
            結晶図
    【System of Mineralogyから引用】


5. おわりに

 (1) 「水晶産地」
      2009年12月に届いた、東京にある鉱物同好会誌を読むと、この産地で初心者を
     対象に採集会が開催されたらしい。20名以上が参加し、6cmの水晶や10cmの武石
     などが採集でき、産地は健在のようだ。

      このとき、「鋭錐石」も採集できたようで、写真入りで紹介してある。この周辺では
     「板チタン石」だけでなく、このように「鋭錐石」、「ルチル」の”チタン3兄弟(姉妹?)”
     が採集できる。

      来年も、子ども達を楽しませてくれそうだ。

 (2) 「産地情報」
      千葉にいる間、全国の石友やHPの愛読者の方から、産地情報の提供依頼があり
     山梨に一時帰宅している間に、地図を添えてメールでお送りした。
      そのため、「産地情報」を電子データにまとめるという、新しい課題ができ、取組を
     始めた。

      依頼があった産地は、「福井県仙翁坑の水鉛鉛鉱」、「石川県利賀村のサファイア」
     「石川県尾小屋鉱山の紫水晶・緑鉛鉱」そして「岐阜県東洞の緑水晶」などで、やはり
     ”美しい”、”珍しい”鉱物には誰しも惹かれるようだ。

      そういう私も、『徳島県眉山(びざん)のルチル』の情報を集めはじめたところ、”採れ
     る可能性がある場所”は特定できたので、あとは、”いつ行くか”だが、初孫のお宮
     参りが終わるまでは、身動きが取れそうもない。
      ( そうすると、すぐにお正月、長男の嫁の出産で、来春以降か・・・・・ )

6. 参考文献

 1) E.S.Dana:The System of Mineralogy ,John Wiley & Sons.Inc. ,1920
 2) 益富 寿之助:鉱物 −やさしい鉱物学−,保育社,昭和60年
 3) 中川 清:山梨県の水晶 水晶Vol.11 No.1,鉱物同志会,1998年
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