2005年8月ごろ、京都府の石友・Nさん一行を山梨県北部の水晶産地に案内した。この
とき出会った親子連れが、ズリで採集した水晶を見せてくれた。その中に、「エステレル
双晶」があるのを目敏いN氏は見逃さなかった。
この産地で「日本式双晶」が産出することは広く知られ、私も何回か採集しているが、
2009年9月〜10月、『出前授業』で生徒に配る水晶を探しに何回かこの産地を訪れ、
2009年11月、この産地を石友・ASさんと訪れると、林道の日蔭には雪が残り、この年
この後山梨を離れ、2週間ぶりに戻ってみると、産地付近の山々が白銀色になってい
念願だった「○○○のエステレル式双晶」を採集でき、同行いただいたASさんに、厚く
ここでの採集は、ズリを掘るのが一般的だ。危険な場所が少なく、手軽に採集できるので
しかし、「緑水晶群晶」を狙うとなると、花崗岩がマサ化した”ボロボロ”崩れる露頭を出し
この産地には、「日本式」と「エステレル」はじめ各種の双晶があり、”群晶を見たら、
「エステレル式双晶」は、鑑定が難しいものの1つのようで、「エステレル式」、と思い
しかし、”例外のないルールはない”の諺通り、山梨県北部のの双晶産地で
『 エステレルは、独特の晶癖を示すタイプと示さないものがあり、難しい。想像以上の
@ エステレル式双晶は、成長の初期段階にブイ字の谷間(凸入角)に他の結晶が
エステレル式双晶と日本式双晶の産出条件の差は、どこにあるのだろうと、深く考
ASさんが採集した標本の1つは、『上から見て”ハの字”晶癖のエステレル式だが
群馬の石友・Tさんに聞いた、「日本式−エステレル複合双晶」ではないだろうか
(2) 「ミネラル・ウオッチング」のシーズン終了
これで、山梨県北部でのミネラル・ウオッチングは、来春まで待たねばならないだろ
(3) 「干し柿」づくり
北風が吹く始める11月初旬、干し柿用の「百匁(ひゃくめ)柿」が売り出される。重さが
正月前に取り込んで、紙袋に入れておくと、真白な”粉(こ)”をふき、一段と甘味が増
「談合坂SA」、と言えば、下り線の駐車場に建っているタワーは、先端が尖った六角
( Green Quartz of Suisyo Pass , Yamanashi Pref. )
この産地の「エステレル双晶」を見たのは初めてだった。
「日本式双晶」
片翼の先端が欠けた「エステレル双晶」を採集した。その後、石友・ASさん親子がここで
大きめの「エステレル式双晶」を採集した、と聞き、何とか両翼がそろった標本を採集した
いと思っていた。
最後の採集になるかもしれない状況だった。この日の狙いは、『緑水晶の群晶』だった
が、一向に姿を見せなかった。ASさんが掘り出した石英脈を叩くと、晶洞部分から、「エ
ステレル式双晶」が現れ、” Our Collection ”に加わった。
るのを遠望することができ、今年のミネラル・ウオッチングのシーズン終了を告げていた。
御礼申しあげる。
( 2009年11月採集 )
2. 産地
ここは、有名産地なので、詳細は割愛する。
3. 産状と採集方法
黒平の古老に聞くと、○○○では、マサ化した花崗岩に挟まれたペグマタイト脈の晶洞
から水晶を掘ったようだ。産地には、コケに覆われたり木が生えた”窪地”がアチコチに見ら
れるが、黒平の人々による掘り跡のようだ。
女性や子供向きでもある。
て、石英脈を追って『晶洞』を見つけるしかない。
「緑水晶」産状【細い石英脈に伴う】
4. 産出鉱物
各種のインクルージョン入り水晶が採集できるほか、「日本式双晶」や「エステレル式
双晶」も採集できる。今回は、エステレル式双晶だけを紹介する。
鉱物名
【英語名】 産 状 写 真
エステレル式双晶
【Esterel Twin】
晶洞中の群晶の
一対が双晶関係に
なっている。
上から【ハの字形】
前から【V字形】
双晶と思え”と覚えて置いて欲しい。
双晶かどうかの判定は、乙女鉱山産日本式双晶を傾軸式双晶と呼んだ時期があった
ことからも分かるように、2本の水晶の”C軸がなす開き角度”が大きな決め手になる。
古くからの石友・東京のTさんは、『角度ゲージ』を産地に持参している。これに習って
私も以前名刺大の厚紙で作ってみたので、その測定法方法を含めて紹介する。
ゲージ 測定方法
【左:日本式 右:エステレル】
角度ゲージ
込んでいるものも少なくないようだ。あるHPによれば、半分以上がそうではないとの
記述もある。
採集を一緒にした、群馬の石友・Tさんから、次のような、貴重なコメントをいただいた。
このことは、この産地の双晶にもそのまま、当てはまると考えています。
数のエステレルが紛れ込んでいるので、トッコをじっくりと眺めていると楽しいです。
いくつか気付いたことを示します。
挟まってしまうと、独特の晶癖を示しません。
A 左右の大きさの差がありすぎるとやはり晶癖を示しづらくなるようです。
B 片方が寝てしまうと、なかなかわかりません。
えされられる一日でした。 』
5. おわりに
(1) 「日本式−エステレル複合双晶」?
この1、2ケ月でこの産地の「エステレル式双晶」と思われるものを自分の採集品を
含めいくつか観察する機会に恵まれた。
2つの水晶のC軸がなす角度は90度弱で日本式』、というものだ。
とも思い始めている。
今度お会いした時に、ジックリ拝見したいものだ。
11月19日、久しぶりに甲府に帰った。「甲府昭和IC」を下りる寸前、甲府盆地の北
を見て驚いた。金峰山など一帯が、白銀色の雪に覆われていた。例年よりも冬の
訪れが早いようだ。
山梨北部の冬景色
う。
甲州(山梨県)には、古くから「八珍果」、と呼ばれる果物がある。中央道下り線・「談
合坂SA」に説明プレートがあるので、ご覧になった読者もおられるかもしれない。
「ぶどう」、「桃」が入るのは当然として、次の8種の果物が「八珍果」とされている。
@ クリ
A 柿
B ブドウ
C 石榴(ザクロ)
D リンゴ
E 梨
F 銀杏(ぎんなん)
G 桃
これらの中で、「干し柿」は『甲州ころ柿』と呼ばれ、東京方面で年末・年始の贈答品
として、庶民には手が出ない高値で取引されているらしい。
百匁=375グラムもある大きなところから名づけられたようだが、2009年は不作(裏)
の年で、買ったものも重さは平均300グラム弱だった。
毎年、100個ほど買うのだが、2009年は家族が増えることもあって、120個あまりを
買ってきて、私が皮をむいて、軒先に紐でつるした。
全体 1つの大きさ
我が家の「干し柿」
し、帰省する息子達夫婦や遊びに来る老母達が喜んでくれるはずだ。
柱で、まるで『水晶』をイメージさせる。東京方面から来た皆さんに、『甲斐(山梨県)の
名産は水晶と葡萄(ぶどう)』をアピールしているようだ。
談合坂SA の『水晶塔』
6. 参考文献
1) 益富 寿之助:鉱物 −やさしい鉱物学−,保育社,昭和60年
2) 中川 清:山梨県の水晶 水晶Vol.11 No.1,鉱物同志会,1998年