京都府相楽郡和束町木屋(こや)の紅柱石

京都府相楽郡和束町木屋(こや)の紅柱石

1.初めに

紅柱石というと、茨城県の花園山産に代表されるように関東・東北では
針状結晶が集まった”丸太”状で、なぜ”紅柱石”なのかが理解できません。
しかし、ここ京都府相楽郡和束町木屋(こや)産の紅柱石を見れば、四角な
”柱”状で薄っすら”紅色”を帯び、正しく”紅柱石”そのもので、命名の
確かさに納得です。
木屋の紅柱石は、関西のある人に言わせると”腐るほど採れる”とのことで
関西の人にとっては、あまり珍しくないようですが、関東の私にとっては
貴重な標本です。
(2002年11月採集)

2.産地

国道163号線を笠置町に向かって走る。やがて、左側に奈良時代に
和銅開珎を作った鋳銭司がおかれたと言われる銭司(ぜす)の集落がある。
さらに進むと、左側に「和束採石場」がある。採集の許可をもらいに事務所に
行くと、女性がいる。
「山梨県から(ここを強調)来たのですが、石を採らせて下さい」とお願いすると
手馴れたもので「紅柱石ですか」との応答。無線で担当者に連絡をとってくれる。
その結果、3時過ぎだったので、稼動中で機械が動いているからダメとの事。
その代わり、台貫の後ろに積んである石なら自由に探してよいとの事。
紅柱石産地
写真の建物の裏にある小山が産地です。

3.産状と採集方法

ここは、領家変成帯とよばれる一帯で、数億年前の海底に堆積した泥が
地殻変動で地下深い場所に引きずり込まれ、熱と圧力で変成を受けた。
さらに、花崗岩の貫入時の熱で接触変成を受け、紅柱石が生まれた。
真っ黒い粘板岩に混じって、白い花崗岩があるのはこのような理由です。
ここでの採集は、真っ黒いフォルンフェルスのひと抱えもある塊を端から
見て回ると、紅柱石がビッシリついたものが所々にある。結晶の大きなもの
新鮮で紅柱石の名に相応しい”紅色”をしたものをハンマでかきとる。
良品が採れるかどうかは、ハンマで割ったときの”運次第”です。
フォルンフェルスは堅いので、2kgハンマが役立ちました。

4.採集鉱物

(1)紅柱石【Andalusite:Al2SiO5】
灰色〜薄紅色の四角柱状の結晶で産出する。スペインのアンダルシア地方で
最初に発見されたので、アンダルサイトと命名された。表面が金色の黄鉄鉱の
”薄皮”で覆われたものもあり、ハンマで叩いた拍子に紅柱石が脱落した跡
(メス型)にも見られる。
関東・東北の紅柱石のほとんどが、表面が白雲母に変質しているが、木屋のは
ほとんど変質していない。

  紅柱石【黄鉄鉱と共生】     曲がり紅柱石
            和束町木屋の紅柱石
ほとんどの紅柱石は真っ直ぐ柱状であるが、右の写真の標本はクネクネと曲がって
おり、結晶が晶出して”半生”状態でも変成を受け続けたことをうかがわせます。

化学式”Al2SiO5”からなる鉱物には、紅柱石のほか、藍晶石と珪閃石があり
生まれたときの圧力・温度の違いで何になるかが決まり、紅柱石は低圧・中温で
出来たことが分かります。このようなことを”同質異形”と呼びます。
紅柱石の仲間【関西地学の旅より引用】

(2)このほか、ここでは空晶石、菫青石、鉄電気石などが採集できるとありますが、
限られた範囲での採集でしたので、紅柱石以外は採集できませんでした。

5.おわりに

(1)心良く採集を許可していただいた和束砕石の皆さんに厚く御礼を
申し上げます。
(2)次回は、採石場が休みのときに、露頭での観察・採集を願っています。

6.参考文献

1)京都地学会編:京都の地学図鑑,京都新聞社,1993年
2)大阪地域地学研究会:関西地学の旅 宝石探し,東方出版,1998年
3)益富地学会館監修:日本の鉱物,成美堂出版,1994年
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