Mさんと知り合うきっかけになった、『五無斎』こと保科百助は、写真のような姿で信州の
山野を駆け巡り、採集した鉱物・岩石で「長野県地学標本」を調製し、県下の諸学校に
配布した。
Mさんの書き込みを、そのまま引用させていただく。
『 寫眞は第二回信州地學標本配布の際に添布(ママ)したものの如く、氏の面目躍如
たるものがある。
つば廣の麦稈帽(むぎわらぼう)をかぶり、詰襟の洋服に半ズボン、紺はばき、甲掛
(こうかけ)足袋にわらじ掛、右肩からカバンをたすきにかけ、左肩には前後に振分け
に袋をかけ、右肩にハンマーをかつぎ゛、これも何か小さい袋をぶらさげている。
・・・・・・・・・・・・・・・
ところで、採集の足にはどのような靴を履いているのでしょう。登山用の靴、長靴
運動靴、等々予想されるのですが・・・・・・・・ 』
この書き込みに答える形で、『鉱物採集の技(2) 服装』のページをまとめてみた。
『服装』(ファッション)に関することなので、皆さんこだわりがあると思う。要は、”安全で、
動きやすい”ものであれば、何でも良いと思っている。
( 2007年8月作成 2007年9月「メガネ」の重要性追加 )
五無斎が着用している服装で、現在では全く眼にできないもの、姿を変えて今も使われ
ているものがある。それらを解説してみたい。
着用部位 | 装 備 | 説 明 | 備 考 | 頭 | つば広の麦稈帽 (むぎわらぼう) |
麦わらで編んだ 夏の日差しを避ける つばの広い帽子 軽くて通気性がよい 私も農作業などで 愛用している |
第二回信州地學標本 採集旅行は、4/5〜 9/18で、後半の暑い日に 特に役に立ったと 思われる。 もともと、この帽子は 明治41年(1908年)3月19日 朝日村西洗馬の三村氏が それまで被っていた カンカン帽が哀れなので 差し出したもの 丸1年以上使ったことに なり、五無斎が物を大切に した証左の1つ |
上半身 | 詰襟の洋服 |
現在も学生服として 一部の学生が着用 北朝鮮男子の国民服? | 師範学校の制服? | 下半身 | 半ズボン | 長ズボンを切った? | 脛(すね) | 紺はばき |
今も似たような機能の ものが洒落た名前で 出ている |
栃木県の石友 Sさんの娘・Yさん(中2)が 着用 |
足 | 甲掛(こうかけ)足袋(たび) |
底のない足袋で 足の甲を保護する |
京都の”大原女”も 着用したとされるが 今は白足袋を履いて いるようだ |
わらじ(草鞋) |
稲藁で編んだ履物 時代劇で旅姿の男女が 履いて登場する |
五無斎の名の由来
明治35年(1902年)
そこで、五無斎一首
「 おあし(お金の別名と足の掛詞)なし |
Mさんから書き込みがあったので、私が鉱物採集に出かけるときの服装を一覧表にして
みた。
服装は、採集する場所、採集する季節(寒暑)、その日の天候、そして採集する対象鉱物
によって、臨機応変にそれに相応しいものに合わせるようにしている。
着用部位 | 装 備 | 採 集 場 所 | 採集季節 | 備 考 (OP)は、オプションで場に 応じて着用 |
表面 ズリ | 露頭 坑内 | パンニング | 春 秋 | 夏 | 冬 | 頭部 | つば広帽子 | ○ | ○ | ○ | △ | △ | 日よけ、雨よけ 藪漕ぎには不向き |
タオル | △ | △ | △ | 藪こぎ時、頭にかぶる 冬は、頬かぶりや 首に巻いて防寒 |
毛糸の帽子 | △ | ヘルメット | ○ | (OP)露頭や坑道内 | 眼 | ゴーグル | ○ | ○ | めがねでも可 ただし、レンズにキズがつく
2007年8月 |
上半身 | 長袖シャツ | ○ | ○ | ○ | ○ | ○ | ○ | ジャンバー | ○ | ○ | ○ | ○ | (OP)表が防水 裏に毛を植えたものが具合良い ダウンジャケットはダメ |
レインコート | △ | (OP)雨のとき 坑内の水滴 |
ウインドブレーカー | △ | ○ | ○ | (OP)にわか雨や雪にも対応可 | 手 | ゴム手袋 | △ | △ | ○ | ズリを掘ったり、 ハンマを振るときなど 道具を持つ手が滑らないし 指先を保護 |
ゴム引き軍手 | 軍手 | ○ | ○ | ○ | (OP)採集には不向き 防寒、手指の保護用に 産地への往復時のみ着用 |
下半身 | 長ズボン | ○ | ○ | ○ | ○ | ○ | ○ | ゆったりしたもの Gパンはダメ |
ベルト | ○ | ○ | ○ | ○ | ○ | ○ | 幅広い皮か布製 カメラのケースを付けたり 短距離の移動時に ハンマや熊手を腰に差す |
レインコート | ○ | ○ | (OP)朝下草の露で濡れない ズリに座り込んでも ズボンを汚さない |
ウエーダー(胴長靴) | △ | (OP)パンニング時や 深い川を渡るとき |
足 | 靴下 | ○ | ○ | ○ | ○ | ○ | ○ | 夏冬、厚手のもの | 長靴 | ○ | △ | ○ | △ | △ | △ | ひざ近くまである長いもの 沢を遡上したり、川を渡る場合 |
運動靴 |
石友・Mさんから質問があった「採集の足」は、私の場合、次の3つを使い分けている。
種類 | 利点 (メリット) | 欠点 (デメリット) | 使用頻度 | 価 格 | 備 考 | 運動靴 | 軽い 長距離歩いても疲れが少ない | 防水性がない 石に挟まれると怪我の危険性 | 50% | 1,000円前後 | 妻はズック製の軽登山靴 | 長靴 | 防水性 泥濘(ヌカルミ)、水溜りなど どのような産地状況にも 対応できる | 長距離は歩きにくい 石に挟まれると怪我の危険性 | 45% | 1,000円前後 | ウェーダー (胴長靴) | 防水性完璧 | 2、300m歩くのが限界 長時間はいているとムレる | 5% | 2,980円 1,980円も有 | 冬は、足の冷え予防に 断熱材のインナー ソックス併用 |
スポーツと言えば、古代オリンピックが原点だろう。その当時の競技者(=採集者)は
円盤、槍などの競技用具以外何も身につけず、つまり裸だったことは読者の皆さんも
ご承知だと思う。
私は、採集の道具は極力少なくする性格(たち)で、手袋は使わず素手でガマに手を
突っ込み、雨が降れば濡れるに任せる採集スタイルを20年近く続けてきた。最近、同行
する機会が増えた”YYコンビ”に心配されたり、あきれられたりで、スタイルに変化が生ま
れ(進化?)、上の表のような形になっている。
(2) 『服装』(ファッション)に関することなので、皆さんこだわりがあると思う。要は、”安全で
動きやすい”ものであれば、何でも良いと思っている。
実際にフィールドに行って、雨、風、寒暑など自然環境の変化や産地の違いなどの
経験を積めば、自分なりのスタイルが出来上がっていくものだ。
(3) 「パンニング」に続いて、「鉱物採集の技」の2作目として「服装」を取り上げてみた。以
前のページで、鉱物採集の楽しみについて書いたが、採集用具、標本整形〜クリーニ
ング、そして鑑定から保管まで、石友それぞれその人のやり方がある。
それらについて、「鉱物採集の技」シリーズとして、少しずつまとめてみたいと考えてい
る。