和田鉱物標本展

和田鉱物標本展

1.初めに

東京大学総合研究博物館で平成13年9月28日まで、「和田鉱物標本展」が
開催されている。
夏休みの1日、妻と一緒に見学をした。乙女鉱山産日本式双晶とライン鉱や黒平産
トパーズなど、私の家がある山梨県関係の鉱物も多く、しかも質が高いのには目を
見張るものがある。
是非、見学されることをお勧めします。
(2001年8月訪問)

2.和田鉱物標本

和田維四郎肖像

和田鉱物標本は、東京大学理学部鉱物学教室の基盤を築いた日本人の初代教授で
ある和田維四郎(つなしろう)が収集した日本最大の鉱物標本コレクションである。
和田維四郎が終生変えなかった趣味が鉱物収集であった。
和田維四郎の逝去後、標本は全て岩崎家に買い取られ、現在三菱マテリアルの所有に
なっている。
和田鉱物標本は東大コレクションとも呼べるもので、その主要な標本については和田
維四郎著「日本鉱物誌(初版)」、同著「本邦鉱物標本」に残されている。
両書に記載されている鉱物は約1100の総覧標本と約370の大型標本である。この他に
和田維四郎が記載し整理した標本や未整理の標本を併せると4000点を越える膨大な
ものである。

3.和田維四郎とは

3.1略歴
安政3年(1856)   若狭国小浜藩に生まれる
明治3年(1870)   貢進生として大学南校に入学
明治8年(1875)   開成学校退学し開成学校助教
明治9年(1876)               「金石学」
明治10年(1877)  東京大学助教      「金石識別表」
明治11年(1878)  内務省地理局地質課   「本邦金石客誌」
明治12年(1879)              「品形学」
明治14年(1880)  農商務省地質課長
          東京大学理学部助教(兼任)
明治15年(1882)  農商務省地質調査所所長
明治18年(1885)  東京大学理学部教授(兼任)
明治19年(1886)  農商務省地質局長
明治22年(1889)  農商務省鉱山局長(兼任)「賓玉誌」
明治23年(1890)  農商務省地質調査所長
明治24年(1891)  帝国大学理科大学教授辞任
明治26年(1893)  農商務省鉱山局長・地質調査所長辞任
明泊30年(1897)  製鉄所長官
明治35年(1902)  製鉄所長官辞任
明治37年(1904)              「日本鉱物誌」
明治40年(1907)              「本邦鉱物標本」
大正9年(1920)   逝去
3.2プロフィール
明治初期の日本に近代的な学問体系をもたらしたのは、有名なナウマン氏や北海道大学の
クラーク博士に代表されるお雇い外国人教師たちであった。
彼らの指導の下に多くの若き日本人の俊英達がエリート教育を受け、以後の教育研究を自らの
手で開拓していった。
その俊英の一人が和田維四郎である。
維四郎は64年間の人生の中で、東京大学教授として日本の鉱物学の基礎を築き、地質調査所を
創設して地質事業の基盤を確立し、鉱山局長として近代的鉱業法制を整備し、製鉄所長官と
して製鉄所を建設し、そして晩年、書誌学者として大家をなした。
類い希な才能を持ち、その上超人的な努力があって初めてなし得たと思う。
和田維四郎は、驚くほど多才で、驚くほどのコレクターであった。
最近私が読んだ、西尾_次郎著「日本鑛業史要」に、晩年の和田の書誌学者としての一端を
窺わせる記述が有る。
『(西尾が)大正4年ボストンにあり、・・・・・後数年を経て、同じ本(鼓銅図録)を古書籍
展覧会にて発見せしに、幸い和田維四郎氏来会したれば、同氏に勧めて購入せしめ置きたりき。』

4.和田鉱物標本展を見て

只、ただ標本の立派さに圧倒されたの一言に尽きます。
(1)標本の大きさ
市ノ川の輝安鉱に代表されるように、60cmを越す群晶がデンと鎮座していると、私が持って
いる20cm余りの単晶など、マッチ棒のように思えるくらいです。
(2)美しい
岐阜県恵那郡のトパーズは、茶のみ茶碗大で、透明、かすかに酒黄色で、宝石と呼べる美しさです。

左:市ノ川産輝安鉱、右:恵那郡福岡町産トパーズ
(3)量の多さ
一般の鉱物愛好家にとって、乙女鉱山の日本式双晶は1ケあれば「家宝」ものですが、ここには、
蝶羽、軍配と形態の違うものや大きさの違うものなど、10点位、所狭しと並んでおり、その
ボリュームに圧倒されます。
(4)有名産地の有名標本
荒川鉱山の三角黄銅鉱、尾平鉱山の柱状硫砒鉄鉱そして山梨県黒平産トパーズなど図鑑でしか、
あるいは図鑑でも見ることができない標本が間近に見ることができる。
今では、絶産、稀産となった産地の良品を見せられると、1世紀という時の流れのすごさを
しみじみと思い知らされます。

左:乙女鉱山産日本式双晶、右:尾平鉱山産柱状硫砒鉄鉱

5.おわりに

(1)幻の名著と言われ、古書店ではン十万といわれる和田維四郎著「日本鉱物誌(初版)」
同著「本邦鉱物標本」がセットで復刻され、和田鉱物標本のCD−ROM付で販売している。
21,000円と高いが、それだけの価値は十分あります。
(2)パンフレットを何部か余分にもらってきました。今回見学できない方で、
パンフレット(A4,4P)が必要な方、ご一報くださればお送りいたします。
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