2002年秋の鉱物観察会-秩父鉱山・渦の沢の燐灰石-

2002年秋の鉱物観察会-秩父鉱山・渦の沢の燐灰石-

1.初めに

2002年秋の鉱物観察会初日最後に渦の沢を訪れた。8月に、東京のMさんと
下見に訪れたときには、既に燐灰石を含む露頭は跡形も無く、燐灰石を含む転石も
めっきり少なく産地がまるで変ってしまっており、大いに驚いた。
頭付き結晶を探すのは、非常に難しく、『絶産』と言ったのですが、大勢で観察すれば
誰かが発見することもあろうかと思い、今回の観察会のコースに加えた。
案の定、何人かが頭付き結晶を観察しましたが、『絶産』と言って良いでしょう。
(2002年10月観察)

2.産地

私の住む山梨県・甲府から、国道140号線で、1998年に開通した雁坂トンネルを
通り、埼玉県に入り、中津川を経由して、「彩の国ふれあいの森・森林科学館」をめざす。
悪路を覚悟すれば、長野県川上村から、三国峠を越える道もあるが、夜間5時以降通行止
なので、注意が必要です。
「彩の国ふれあいの森・森林科学館」の先、約300mに右に登る急な坂があり、その上が
「炭焼き体験場」になっている。この左奥に枯れ沢(幅は広い)があリ、この沢を
約250m遡上すると左手に、鉱山跡を思わせる石組みがあり、孔雀石が点々と
見える枯れ沢があり、これとの合流点の高台が産地です。
「渦の沢」は通称で、2万5000分の1の地形図「中津峡」での正式名は「ベッドの沢」です。
渦の沢燐灰石産地

3.産状と観察方法

ここの燐灰石は、磁鉄鉱の晶洞部分に、緑簾石や灰鉄輝石を伴って柱状結晶で
産出した。かつては、晶洞を含む磁鉄鉱の露頭があり、そこで観察したが
その露頭は、影も形も無い。磁鉄鉱の塊の転石すらほとんどない。
緑簾石(?)の塊の転石には燐灰石が入ったものがあるが、石が硬い上に
空隙が無いため、へき開してしまい、頭付きは観察できません。

4 観察鉱物

(1)燐灰石【Apatite:Ca5(PO4)3F】
表面の光沢は強く、白濁した水晶と似た6角柱状で頭が尖った結晶です。神奈川県
玄倉(くろくら)の標本に優るとも劣らないものでしたが、頭付きは。
それでも、ズリ上部にある露頭で、千葉県のK君が頭付き美晶を観察したのをはじめ
愛知県のHさんも頭付きを観察しました。

 分離結晶【10mm】    母岩付き結晶【10mm】
(2)磁鉄鉱【Magnetite:Fe2O4】
千葉県の”博士君”は、大きな磁石にヒモをつけてズリを引きずって、八面体をした
磁鉄鉱の分離結晶を採集しました。
水晶の晶洞に伴って、母岩付き磁鉄鉱も観察できます。
母岩付磁鉄鉱【結晶5mm】
(3)その他、黄銅鉱とそれに伴う孔雀石、緑簾石、灰鉄輝石などが観察できます。
千葉県のYさんは、ズリで”松茸水晶”の分離美品を採集した。

5.おわりに

(1)「燐灰石」を確実に観察できる1つの産地が消えてしまった。
露頭を掘り込めば、新たな脈がでてこないとも限らないが・・・・・・・。
(2)ズリから沢の反対側には、ポッカリと坑口が開いていますが、まだ内部を
調べていません。”博士君”が坑口付近を偵察したところでは、目ぼしい鉱物は
観察できなかったようです。

6.参考文献

1)梅沢俊一:鉱物産地案内シリーズ 鉱物産地をたずねて<増補改訂版>,梅沢俊一,1995年
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