秩父・渦の沢の燐灰石

秩父・渦の沢の燐灰石

1.初めに

東京の石友・Tさんにお会いした際、「秩父・渦の沢の燐灰石を採集に行ったが場所が
わからなかった」とのこと。
一応場所はお教えしたが、果たして今でも採集できるものか気になって、4年ぶりに行って
みた。
燐灰石を含む露頭は、跡形も無く、産地の変貌ぶりには驚かされましたが、転石の晶洞には、
頭付き結晶があり、うまく母岩・頭付き結晶を採集できました。
(2002年5月採集)

2.産地

私の住む山梨県・甲府から、国道140号線で、1998年に開通した雁坂トンネルを通り、
埼玉県に入り、中津川を経由して、「彩の国ふれあいの森・森林科学館」をめざす。
悪路を覚悟すれば、長野県川上村から、三国峠を越える道もある。
「彩の国ふれあいの森・森林科学館」の先、約300mに右に登る急な坂があり、その上が
「炭焼き体験場」になっている。この左奥に枯れ沢(幅は広い)があリ、この沢を
約250m遡上すると左手に、孔雀石が点々と見える枯れ沢があり、この合流点の高台が
産地です。「渦の沢」は、通称で、正式名は別にあるようです。
渦の沢燐灰石産地

3.産状と採集方法

ここの燐灰石は、磁鉄鉱の晶洞部分に、緑簾石や灰鉄輝石を伴って柱状結晶で産出する。
かつては、晶洞を含む磁鉄鉱の露頭があり、そこから採集したが、その露頭は、影も形も無い。
磁鉄鉱の塊の転石を探し、燐灰石を含む晶洞部分を、タガネとハンマで掻き採ります。
タガネを打ち込むまでは堅いのですが、打ち込んでしまえば、簡単に割れます。

4.産出鉱物

(1)燐灰石【Apatite:Ca5(PO4)3F】
表面の光沢は強く、白濁した水晶と似た形で、6角柱状で頭が尖った結晶で産出する。
神奈川県・玄倉(くろくら)の標本に優るとも劣らない。
渦の沢燐灰石
(2)このほか、磁鉄鉱、黄銅鉱とそれに伴う孔雀石、緑簾石、灰鉄輝石などが採集できます。
磁鉄鉱は、自形結晶も見られます。

5.おわりに

(1)「彩の国ふれあいの森・森林科学館」には、秩父鉱山と縁が深い平賀源内の展示コーナが
ある。源内の秩父での足跡と秩父で産出した石綿で作った「火完布」の写真が展示してあります。

左:平賀源内展示コーナ     右:「火完布」の写真
(2)雁坂トンネルの開通によって、甲府から秩父が身近な産地になりました。雁坂トンネルを
抜けた先からの「豆挽橋」の眺めは、春夏秋冬それぞれ趣があります。
豆挽橋
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