中学生とミネラルウオッチング 2012年10月







        中学生とミネラルウオッチング 2012年10月

1. 初めに

    2007年、東京の小中一貫校・S校の生徒と保護者を山梨県の水晶産地に案内させていただ
   いた。この話が広まり、いくつかの学校の伝統行事になった。

    2012年9月、S校のS先生から、「鉱物の授業の一環で中学生の野外授業の講師をお願いし
   たい」、とのメールをいただいた。快諾したものの、問題は日取りだった。10月も間近で、孫の
   七五三、中国人同僚とのミネラル・ウオッチング(観光旅行)、秋のミネラル・ウオッチング・・・・、
   と週末は既に埋まっていた。そこで、平日に会社の休みをとって、案内することにした。

    10月末の金曜日、山梨県内のJR駅で先発隊と合流、レンタカーを借り、生徒たちの到着を待
   つ。定刻に、S先生に率いられた一行が到着した。
    駐車場で、初対面の挨拶の後、私の車を先頭に、4台の車で目的地を目指す。約1時間で駐
   車場に到着し、ここからはちょっとしたハイキングだ。
    途中から、沢の中には石英や水晶が点々と姿を見せ、約1時間の歩きで、私が再発見した
   古い水晶鉱山跡に到着だ。

    広いズリに散らばって採集すると、次々と鑑定依頼が舞い込む。きれいな水晶、変わった形
   きれいなインクルージョンのものだけでなく数面の結晶面が見える水晶まで、『良いね!!』、
   『素晴らしい!!』、と誉めてあげると、子どもたちは大喜びだ。

    昼食の後も採集を続け、13時30分、皆さん名残惜しそうだったが、産地を後にした。行きしな
   に沢水に漬けておいた「スイカ」ではなく「リンゴ」を持参したナイフで半分に切り、みんなでいた
   だく。15時過ぎにJRの駅に到着し、皆さんとお別れした。

    私の持論の1つに、『鉱物採集は、水晶に始まり、水晶に終わる』がある。嬉々として水晶を
   探す中学生と保護者そして教育関係者を見ていて、その感を一層深くした。
   参加した皆さんが、鉱物を通して、自然を大切にする心を養ってくれることを祈っている。
    ( 2012年10月 観察 )

2. 水晶鉱山跡を目指せ!!

 (1) 「○○駅」に集合
      2012年10月末の金曜日、山梨県内のJR駅で先発隊と合流、レンタカーを借り、生徒たち
     の到着を待つ。定刻に、S先生に率いられた一行が到着した。
      初対面の挨拶の中でいつものように、次のような話をした。

      @ 鉱物は、植物、動物と違って再生しない。
        未来の子供や孫にも残せるよう、余分に採らない。採った標本は、洗浄・整理して記録
        (ラベル)に残し、家族にも見せて楽しんでもらおう。
      A 自然は美しい。
        しかし、危険が潜んでいるので引率の先生の注意を守って、事故のないようにしよう。

 (2) △△を目指せ
      初対面の挨拶の後、私の車を先頭に、4台の車で目的地を目指す。約1時間で駐車場に
     到着し、ここからはちょっとしたハイキングだ。途中、休憩ポイントで子どもたちに手伝っても
     らい、前の日に買っておいた「リンゴ」を沢水に浸す。

         
            元気な子どもたち                   リンゴを浸す
                              休憩風景

 (3) 水晶鉱山跡でミネラル・ウオッチング
      ここから少し進むと、沢の中には石英や水晶が点々と姿を見せ、約1時間の歩きで、私が
     再発見した古い水晶鉱山跡に到着だ。ここで、次のような説明をさせていただいた。

      @ ここには、明治時代から昭和20年代まで、水晶鉱山があった。掘り出した水晶のなか
        で、装飾品や印材などに使えないものを捨てた。
         中には、希だが見逃した素晴らしい水晶もある。
      A 花崗岩の割れ目に入った石英脈に水晶が生まれた。それは、今から1,200万年くらい
        前だった。

      ここでの採集法は、つぎのように3通りあることも説明した。
      @ 表面を見て回り、「水晶」などを探す。
      A 落ち葉をかき分けて、隠れている水晶を探す。
      B 大きすぎる標本は、私が持参したハンマーを使ってもらい小さく割る。

      広いズリに散らばって採集すると、次々と鑑定依頼が舞い込む。きれいな水晶、変わった
     形やきれいなインクルージョンのものだけでなく数面の結晶面が見える水晶まで、1つひと
     つ『良いね!!』、『素晴らしい!!』、と誉めてあげると、子どもたちは大喜びだ。

      男の子たちは、ハンマとタガネで岩を割るのが面白くて、ハンマーは引っ張りだこだった。

       ハンマーで小割り

 (4) 産地を後に
      昼食の後も採集を続け、13時30分、皆さん名残惜しそうだったが、産地を後にした。来ると
     きに沢水に漬けておいた「スイカ」ではなく「リンゴ」を持参したナイフで半分に切り、みんな
     でいた

       リンゴをいただく

 (5) また会う日まで
      今回も事故もなく、無事15時過ぎにJRの駅に到着し、皆さんとお別れした。

3. 過去の観察品

    私が、大勢の皆さんを案内すると、面白い産状の標本や珍しい鉱物に出会うことも少なくない。
    それらを見せていただき、デジカメで記録に残せるのは私の”役得”だろう。過去の観察品の
   いくつかを紹介したい。

    なお、今回の私の採集品は何もなかった。

鉱物種名
俗名
【英名:組成】
 産 状   標 本 写 真  説    明
石英
水晶
【QUARTZ
 :SiO2
山入り    
 透明水晶に真っ白い山が
入った典型的な標本
黄鉄鉱入り      最初にできた水晶の表面に
結晶した黄鉄鉱がしばらく時間を
置いて後からできた水晶で
覆われている。
 成長が止まった時間が長かった
のか、酸化性の環境だったのか、
黄鉄鉱が「武石」に変化している
標本もある。
チタン鉱物と
共生

           鋭錐石


         板チタン石

   
           全体

 赤黄色、透明、ガラス光沢の
チタン鉱物が2種見られる。
 普通、黒色、不透明の
ものが多いのだが、今回採集
したものは、鉄(Fe)が少ない
のか(?)

 @ 鋭錐石【ANATASE:TiO2
     ピラミッドを2つ合わせた
    ような8面体で、反復双晶
    した際に生じたくびれ(条線)
    が見られる。


 A 板チタン石【BROOKITE:TiO2
     四角い薄板状で、表面に
    条線が見られる。








 根元とてっぺん附近の
赤く見える部分にチタン鉱物が
集合している。





4. おわりに

 (1) 『年年歳歳』
    2012年も小学生から大学生まで、いくつかの学校の関係者とミネラル・ウオッチングをご一緒
   する機会があった。
    子どもたちから保護者そして先生まで、嬉々として水晶を探している姿を見ていると、案内させ
   て良かったとツクヅク思う。

    面白いことに、案内する学校、学年、学級ごとに雰囲気がちがうのだ。

     年年歳歳花相似
     歳歳年年人不同

    こうした、いろいろな人との交流が、私の頭がボケたり、身体が鈍(なま)るのを少しでも防い
   でくれているかと思うとありがたいことだ。

6. 参考文献

 1) 谷山 四方一:鉱物鑑識の実際と鉱山探検,厚生閣,昭和14年(1939年)
 2) 山梨県・山梨県地質図編纂委員会編:山梨県地質誌 山梨県地質図説明書
                           同委員会,昭和45年(1970年)
 3) 益富 壽之助:鉱物  −やさしい鉱物学 -,保育社,昭和60年(1985年)
 4) 中川 清:山梨県の水晶 水晶Vol.11 No.1,鉱物同志会,1998年
inserted by FC2 system