このページをたまたま眼にした東京のK校、神奈川のS校から相次いで生徒たちを水晶
産地に案内して欲しい、とのメールがあった。両校の先生5名と2011年9月に下見を行なっ
た。
この時、先生方が夢中になるほどなので、生徒たちはさぞ大喜びするだろうと心待ちに
していた。
2011年10月はじめ、K校一行を案内し林道を進むとゲートが降りていた。なんでも、台風
15号による土砂崩れで、この先が通行止めになっていて年内開通の見込みがないとの
ことだった。
ここから駐車場まで10km前後あり、ここまでの往復で予定の時間を費やしてしまいそう
なので、急遽、別な産地を案内する事にした。
2011年11月になって、S校を案内する事になり、同じ場所を案内する事にした。この近く
には鉱山跡もあるすでに忘れ去られた古い鉱物産地で、ほとんど人が訪れた形跡がなか
った。
生徒たちは地表面の落ち葉をかき分けて小さな鉱物や水晶を発見するたびに、私の
ところに持ち込む鑑定依頼がひっきりなしに続いた。
大勢で探すとあるもので、5cmクラスの大きな水晶や「硫黄」などのインクルージョンが
入ったものなどを発見し、アチコチで歓声が上がった。
時間に余裕があるS校には、近くにある鉱山跡を案内した。ここでは水晶だけでなく、
黄鉄鉱、黄銅鉱、方鉛鉱などの硫化鉱物も採集でき、『へき開』など、鉱物の特性の不思
議さに眼を輝かせている生徒たちも多かった。
生徒たちを案内して10日ほど経ったころ、それぞれの学校から礼状が届いた。生徒一
人ひとりが描いた水晶や鉱物の絵には、楽しかったミネラル・ウオッチングの想い出がつ
づられていた。
今回、生徒たちと保護者そして先生たちを案内して、次のようなメッセージを伝えた。
(1) 自然を大切に
人の手で飼育や栽培ができる「動植物」と違って「鉱物」は人間が一度採ってし
まうと2度と生まれてこない貴重な地球の財産。
この産地の水晶は、1,200万年前に生まれ、この日初めてみんなの手に触れた。
@ 必要以上に採集しない。
次に訪れる人にも残しておこう。
A 採りっぱなしはダメ
家に持ち帰った標本を洗って綺麗に(クリーニング)し、鉱物の名前を書い
たラベルを付け、お菓子の空き箱などに保管しよう。
形の違いや内部に含まれる鉱物(インクルージョン)なども観察して、ラベル
に記入し、記録として残そう。
生徒たちに、益富先生の著書・「鉱物」と私が編んだ小冊子「君も水晶博士になろう!」
をプレゼントした。
このミネラル・ウオッチングを通して、生徒たちがより自然を大切にしてくれることと、理科
(=科学技術)への興味を深めてくれることを願っている。
( 2011年10月、11月 案内 )
積もった落ち葉をかき分け隠れていた水晶を探してもらい、持参した金槌でズリ石を叩
いて新鮮な硫化鉱物を採集してもらった。
鉱物種名 俗名 【英名:組成】 | 標 本 写 真 | 説 明 | 石英 水晶 【QUARTZ :SiO2】 |
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透明感のある 平板水晶 |
カリ長石/氷長石 【Adularia:KAlSi3O8】 |
明治時代この産地を 有名にした鉱物 双晶になっている標本 |
洋紅石 【CARMINITE:PbFe3+2 (AsO4)2(OH)2】 |
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鮮やかな紅色で 毬栗状の結晶が晶洞を 覆うように密集
近年この産地を有名にした |
車骨鉱 【BOURNONITE:CuPbSbS3】 |
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反復双晶をした形が 車骨(歯車のこと)に 似ているところから この名が付いたと される。 |
硫砒鉄鉱 【ARSENOPYRITE:FeAsS】 |
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硫砒鉄鉱は古くは 『毒砂』と呼ばれ、猛毒の 砒素の原料
”菱餅状”結晶で産出する |
採集して持ち帰った水晶は綺麗にクリーニングして、学校にも展示したところ、低学
年の子らが、『○年生になったら水晶探しに行けるんだ!!』、と今から楽しみにして
いる、と先生からの手紙にあった。
両校とも恒例の行事になりそうで、今から生徒たちと出会いが楽しみだ。
(2) 別れ
出会いがあれば別れがあるのが人の世の常。
先週末、H製作所時代の先輩の告別式に出席した。71歳で、突然の死だった。この
先輩は、図面の書き方など、仕事のイロハを文字通り手とり、足とり教えてくれた一人
だった。
個人的にも、私の実家に遊びにきてもらい泊まって頂いたりと親しくさせていただい
たが、最近は年賀状のやり取りしかできなかった御無沙汰を悔いている。
後輩から、定年退職の挨拶状をもらう歳になり、月並みだが『一期一会』を大切にし
なければ、としみじみ想う秋の夜だ。