愛知県鳳来寺町黄柳野の霰石

愛知県鳳来寺町黄柳野の霰石

1.初めに

加藤・松原・野村先生共著の「鉱物採集の旅-東海地方をたずねて-」に
「愛知県東南部の鉱物」の章があり、中宇利鉱山はじめ、蛇紋岩とそれに伴う
鉱物産地が紹介してある。
黄柳野(つげの)の採石場は、東海地方で最高の霰石産地として知られ、
10年ほど前に訪れ、水晶のような透明感のある立派な結晶を採集した。
今回、妻と一緒に鉱物採集会の下見で訪れ、霰石が一面についた蛇紋岩の
大きな塊をキープしたものの、これを採り尽くすと目ぼしい霰石は見当たらない。
採石は既に廃業して久しいようで、跡地は建築廃材などの処分場になっており
幻の産地になりつつある。
(2002年7月採集)

2.産地

中宇利鉱山から県道81号線の福津峠を越え、国道257号線に向かうと
約2kmで左側に大きな採石場が見える。更に500mも行くと左側に
「柴田興業(株)採石場」の看板が残っており、ここを左に折れ黄柳川を渡り
山に入るように進むと突き当たりが採石場跡である。
正式な所在地は、南設楽郡鳳来寺町黄柳野字金床707−1です。
採集にあたっては、処分場で働いている人に了解を得ましょう。
黄柳野採石場

3.産状と採集方法

この採石場は、建材用にかんらん岩を露天掘りしていた。霰石は
蛇紋岩の隙間に成長しており、採石の残りに付着している霰石をハンマと
タガネで掻き採ります。
霰石が一面についた蛇紋岩大塊

4.産出鉱物

(1)霰石【Aragonite:CaAlSiO4(OH)】
白色〜透明で、1〜2cmの薄板状結晶が群晶をなすタイプと直径2mm程度で
長さ1〜2cm針状結晶が群晶をなすタイプの2種類がありましたが
今採集できるのは前者のみです。
霰石
このほか、蛇紋岩、苦灰石、水苦土石などが採集できました。

5.おわりに

(1)最初にここを訪れたのは、1993年7月でした。そのときは
  採石場にはダンプがひっきりなしに出入りし、活気に溢れていました。
入口の事務所の女性に名刺を渡して採集許可を頂く時に見せていただいた
名刺ファイルには、京都をはじめ遠くの方々のお名前がありました。
(2)京大採鉱冶金学教室内水曜会が大正14年に発行した「鉱業智識」を
最近読んだ。総論の中の次の一言は蓋し名言だと思います。
『採鉱業は建設的なる土木・建築・機械・電気工業とは違って1の掠奪工業である。
地下の鉱物は一度採ったら再び生れ返らない。甕の中の水を汲む様なものである。』
この言葉を反芻しながら、採集していました。

6.参考文献

1)加藤昭、松原聡、野村松光共著:鉱物採集の旅-東海地方をたずねて-,築地書館,1982年
2)京大採鉱冶金学教室内水曜会著:鉱業智識,裳華房,大正14年
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