蛭川村遠ケ根鉱山の砒鉄鉱

蛭川村遠ケ根鉱山の砒鉄鉱

1.初めに

 私のHPを見て頂き、産地の情報を提供したり、案内して差し上げた人たちと
採集会を開催するようになって、4年目を迎えた。
 最近では、参加メンバーが新たに開拓した産地を案内していただくスタイルに
変貌しつつある。
 2004年6月ミニ鉱物採集会は、「ベルチェ鉱の古里と蛭川村の有名・無名鉱山を訪ねて」と
題して、愛知県の石友・HさんとIさんに案内していただいた。
 長野県戸沢鉱山、中津川市の無名鉱山の後、蛭川村に入り、「鉱物採集の旅」にも
紹介されている遠ケ根鉱山を愛知県のHさんに案内していただいた。
 ここの「砒鉄鉱」は、全員採集できたと思いますが、私の妻のように「砒鉄鉱」に殆んど
関心を示さない参加者もいました。
 しかし、これは、有名鉱山の標本なので1つは欲しいし、1つ持っていれば十分でしょう。
 案内いただいた、Hさんに改めて、御礼申し上げます。
(2004年6月採集)

2. 産地

   加藤・松原・野村先生による「鉱物採集の旅 東海地方を訪ねて」に記載してある有名な
  産地です。地図を参考に示しますが、近年道路が新しくできて、昔の地図は役に立たないかも
  知れません。

    遠ケ根鉱山【鉱物採集の旅から引用】

3. 産状と採集方法
   遠ケ根鉱山は、濃飛(のうひ)流紋岩に類する流紋岩や石英斑岩や花崗斑岩の中に脈をなす
  鉱床で、鉄マンガン重石、砒鉄鉱を含む石英塊がズリに見られます。
   案内のHさんによれば、それらのズリ石が、3ケ所(A,B,C)にあり、そのどこでも同じような
  鉱物が採れる様です。
   ズリ石のうち石英塊を割り、新鮮な砒鉄鉱や鉄マンガン重石を含む部分を掻きとります。
  なお、この一帯は、「松茸山」になっていますので、採集する時期を選ぶなどの配慮が
  必要です。

    採集風景【ズリA】

4.採集鉱物
   ここで採集できるのは、砒鉄鉱とその2次鉱物のスコロド石、鉄マンガン重石、自然蒼鉛
  などで、砒鉄鉱はふんだんにありますが、蒼鉛鉱物は採集できなかった。

 (1)砒鉄鉱【Loellingite:FeAs2】
     ズリにある表面には黄褐色の鉄錆が見られ、割ると劈開が強く、新鮮な面は銀白色で
    金属光沢を示す。硫砒鉄鉱と似ているが、ここのものは、「砒鉄鉱」としておきます。

 (2)鉄マンガン重石【Wolframite:(Fe,Mn)WO4】
     外側は赤褐色の鉄錆が見られ、劈開が強く、割れ口は黒色・亜金属光沢を示し
    大きなものは数cmの長さがある。砒鉄鉱と石英を挟んで共生するものもあり
    生成のプロセスを暗示しています。

    砒鉄鉱と鉄マンガン重石

 (3)スコロド石【Scorodite:FeAsO4・2H2O】
     砒鉄鉱のように砒素(As)を含む鉱物が分解してできる2次鉱物で、普通は皮膜状で産出
    することが多いが、石英や砒鉄鉱の晶洞部分に、灰緑色をした結晶がみられることがある。

    スコロド石【自形結晶】

5.おわりに

 (1)遠ケ根鉱山では砒鉄鉱のほかに、蒼鉛鉱物、満バン柘榴石、燐灰石などが採集できたと
    あります。
    今回は、時間の関係で、ズリの入口を認めたに過ぎませんので、次回はもっと広い範囲の
    探索をと考えています。

6.参考文献

1)加藤昭・松原聡・野村松光:鉱物採集の旅 東海地方を訪ねて,築地書館,1983年
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