産地とされるの初鹿野(はじかの)駅周辺は急斜面が多く、平らなところは”猫の額”くらしか
なく、道路も複雑で、20号線沿いの空き地に駐車し、歩いて探し回った。文献にある崖は、崩
落防止の擁壁工事が済み、コンクリートに覆われていて採集できなかった。
探しあぐねて、作業中の方に聞くと、「ときどき学生を連れた大学の先生が来るのは、100mも
行った砂を採ったザラザラしたところ」、と教えてくれた。
しかし、行けども行けどもそんな場所は見つからない。ミネラル・ウオッチングの鉄則・その2
『産地が判らなければ沢筋を攻めよ』、に従い、自分の勘を頼りに「徳波沢」に降りて、沢の
砂を手ですくって、選り分けると「蛭石」があった。
私の得意業の”フルイ掛け”なら冷たい思いもせず、簡単に採集できると知ったが、後の祭り
だった。
さて、「蛭石」は、黒雲母が風化したもので、熱すると結晶中の水分が膨張してへき開面を押
し広げるため伸び、そのありさまが”ヒル”に似ているので名づけられた、と言われる。
帰宅後、フライパンの上で熱してみたが、一向に伸びないのだ。そうなると、「蛭石」ではなく、
単なる「黒雲母」で、鉱物学的には「主に金雲母と鉄雲母の中間」となってしまうのだろうか。
こんな疑問を抱えながらも、表題は「蛭石」としてある。
( 2010年3月 採集)
記号 | 出 典 | ポ イ ン ト | 現 状 | A | 「鉱物採集の旅」 | 大菩薩ハイキングコースの 道の左(北)側にある花崗岩露頭 | 擁壁工事中 場所不明 |
B | 「山梨の自然をめぐって」 | 大和中学の西約500m、徳波沢に ある細い山道のカーブしたところ にある風化した花こう岩や風化土 | 風化したマサから採集可能 量は極めて少ない |
C | インターネット | 「古部」地区 | 場所不明 Aと同じ? |
D | Mineralhunters | 徳波沢の中 | 手で土砂をすくって採集可能 ”フルイ掛け”すれば、 |
注意)
産地Bは、中央線のトンネル近くの線路脇にあり、安全には十分注意されたし。
「黒雲母」が風化した「蛭石」を加藤先生は「鉱物採集の旅」では『加水黒雲母:Hydro
Biotite』としていたが、「造岩鉱物」では『苦土蛭石』【Vermiculite:(Mg,Fe3+,Al)3[(OH)2|
(Si,Al)4O10]・4H2O】としている。
黒雲母があまり酸化されることなく、その主成分のカリウム(K)の代りに、水(H2O)が置き
換えて入っているもののようだ。
「蛭石」は、熱すると結晶中の水分が膨張してへき開面を押し広げるため伸び、そのあり
さまが”ヒル”に似ているので名づけられた、と言われる。
(2) 『 鶴瀬の輝水鉛鉱 』
今回、甲州市を訪れた最大の目的は、JR初鹿野駅の西にある「鶴瀬」集落に日本で一番
古い輝水鉛鉱鉱山があった、と文献にあり、それを探すことだった。
産地探査を始めたのが15時過ぎで、短時間では探し出すことができなかった。いずれ折
を見て再探査を考えているが、苦戦しそうな雰囲気だった。