岐阜県中津川市遠ケ根鉱山のトパズ

      岐阜県中津川市遠ケ根鉱山のトパズ

1. 初めに

    11月9日、私たちの3男夫婦のところに初孫(娘)が授かった。嫁さんの実家が面倒
   みるのが普通らしいが、母親が主催するピアノ教室の発表会があるなどで忙しく、私
   たち夫婦にお鉢が回って来た。
    11月初めから、山梨を離れ、千葉の3男の家に執事兼運転手と家政婦として、夫婦
   で住み込んでいるので、HPも古いネタが続くが、ご了解願いたい。

    2009年10月、長野県の石友・Mさんと、岐阜県苗木地方の産地を1泊2日で回った。
   2日目、高根鉱山、一柳鉱山の次に訪れたのは、遠ケ根鉱山だった。狙いは、2007
   年11月に採集した「洋紅石」【CARMINITE:PbFe3+2(AsO4)2(OH)2】だった。

   ・ 岐阜県中津川市遠ケ根鉱山の洋紅石
    ( CARMINITE from Togane Mine , Nakatsugawa City , Gifu Pref. )

    しかし、叩けど、叩けど、それらしい石は姿を見せなかった。それらしい石をいくつか
   持ち帰り、実態顕微鏡で観察すると、「洋紅石」はなかったが、産状の違う「トパズ」が
   確認できた。

    苗木地方では、「トパズ」は格別珍しい鉱物ではなく、「木積沢」や「関戸川」周辺で
   は、100グラムを超える大きなものや『美晶』も採集できるのだが、それに比べると貧
   弱な印象なのは否めない。

    この先、遠ケ根峠を越えた加茂郡白川町での「トパズ」産出の情報は確認していな
   ので、遠ケ根鉱山あたりが「トパズ」産出の北西限と思われ、ある意味では貴重とも
   思い、報告したい。

    同行いただいた、Mさんに御礼申し上げる。
    ( 2007年11月採集、2009年10月再訪 )

2. 産地

    加藤・松原・野村先生による「鉱物採集の旅 東海地方を訪ねて」に記載してある
   有名な産地の1つである。参考に地図を示すが、近年道路が新しくできて、昔の地図
   は役に立たないかも知れない。
    2007年のとき、私は、新道と思われる場所から和田川の朽ち果てた橋を渡り、中津
   川市が建てた「看板」を見つけ、2004年に愛知の石友・Hさんに案内していただいた
   ズリに30分近くかかって到達した。
   今回は、ズリに直行できたので、10分足らずで到達できた。

    また、ここも『松茸山』になっているようで、テープが張ってある区域があり、そこには
   立ち入らないほうが無難だ。

   遠ケ根鉱山
      ↓
    遠ケ根鉱山【「鉱物採集の旅」から引用】

3. 産状と採集方法

    遠ケ根鉱山は、濃飛(のうひ)流紋岩に類する流紋岩や石英斑岩や花崗斑岩の中
   に脈をなす鉱床で、鉄マンガン重石、砒鉄鉱を含む石英塊や母岩がズリに見られる。
   これらのズリが、4ケ所にあり、ズリによって採集できる鉱物に少し違いがあるようだ。

     ズリ@

     ズリA【ズリC?】

     ズリB【ズリB?】

     ズリC【ズリA?】
     遠ケ根鉱山ズリ【2007年11月】
       【ズリ@が山頂にある】

    ズリ石の中で、茶褐色の鉄サビに覆われ、やや重そうなものを選んでハンマで割り、
   割れ口をルーペで観察しながらの採集となる。したがって、採集効率の点から、太陽
   光を十分に浴びた晴れの日に訪れるのが望ましい。

4.採集鉱物

 (1) トパズ(黄玉)【TOPAZ:Al2SiO4(F,OH)2
      砒鉄鉱と斑状を示す石英の中に、透明、細柱状結晶が放射状に集合している。
     グライゼン化した気成鉱床のトパズは、細い柱状(針状)になると聞いたことがある
     が、その通りの産状である。
      @ 狭い晶洞の中に頭付き自形柱状結晶 A 石英脈に埋もれた放射状集合
     の2つの産状が観察できる。
      大きさは、前者が2mm以下、後者が5mm以下と、小さなもので、ルーペがないと
     確認できない大きさだ。

         
            産状@自形結晶           産状A放射状集合
                          トパズ

5. おわりに

 (1) 「遠ケ根鉱山の自然銅」
      産地で、Mさんが「この赤いのは何でしょう?」、と差し出した大きな塊があった。
     ルーペで見ると「自然銅」だ。その片割れをいただき、小割りすると、いくつかの標
     本を採集できた。
      遠ケ根鉱山での『自然銅』の産出報告は、初めてだと思うので、産状などをまと
     めて、本稿でお知らせする予定だった。

      その後、出前授業や秋のミネラル・ウオッチングそして初孫の誕生とイベントが
     続き、ようやく11月半ばに「自然銅」標本を見直して見たのだが、”酸化”してしま
     ったのか、見つからない有様だ。

      Mさんにお願いして、標本の写真が入手できたら、報告したいと考えている。

 (2) 自家農園「スイカ」の食べ納め
      自家農園産、無農薬スイカは、この夏のミネラル・ウオッチングにたびたびお供
     し、賞味いただいた皆さんから好評を得た。9月でも暑い日が多い甲府盆地では
     9月末に最後のスイカを収穫し、このミネラル・ウオッチングに持参した。

      最後に訪れた、恵比寿鉱山の湧水につけておき、帰りしなパンニング皿をまな
     板代わりにして切り分けると、甘い香りが漂い、今年最後のスイカの食べ納めを
     した。
      来年は、孫がもう一人増える予定なので、もう少し苗の数を増やそうと思ってい
     る。

         
            湧水に冷やす            切り分け後
                  2009年スイカの食べ納め

6. 参考文献

 1) 加藤 昭・松原 聡・野村 松光:鉱物採集の旅 東海地方を訪ねて,築地書館
                        1983年
 2) 山田 滋夫:日本産鉱物五十音配列産地一覧表,クリスタル・ワールド,2004年
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