北極圏をめぐる地球一周の旅 【スリランカ宝石採掘・準備】 ( Tour around the World & Arctic Circle 2016<BR>       - Preparation of Jwelry Hunting in Srilanka - )









   北極圏をめぐる地球一周の旅  【スリランカ宝石採掘・準備】

       ( Tour around the World & Arctic Circle 2016
                           - Preparation of Jwelry Hunting in Srilanka - )

1. はじめに

    この「地球一周の旅」に申し込んだ理由の一つが、スリランカ(旧セイロン)の首都・コロンボに入港
   することになっていたからだ。
    朝6時に入港し、22時に出港する予定だったから、入国審査と出国審査で前後1時間取られたとし
   ても、14時間は自由に活動できるはずで、宝石採掘で有名な町・ラトナプラで『スリランカで宝石探し』
   を十分楽しめるだろうと読んでいた。

    日本にいたときからインターネットでスリランカでの宝石探しの情報を収集していた。2016年2月9日、
   スリランカ在住のS氏のブログに行きついて、次のようなメールを送った。

    『 Dera Sir
      私は、世界一周旅行で4月27日朝6時にコロンボ港に着きます。船には、21時までに戻らなけれ
     ばなりません。
      あなたのブログにあった、「ラトナプラで宝石採掘」を体験したいのですが、可能でしょうか。今の
     ところ私一人しかいないのですが船の中で、行きたい人を集めることができる可能性もあります。
      よろしく、お願い致します。                                      』

    これを読んだS氏から、折り返し次のようなメールがあった。

    『 ご連絡ありがとうございます。
      「ラトナプラで宝石採掘ツアー」ですが、1名様ですと、利益がないため2名様以上での参加しか
     今まで受け入れたことがありません。
      また、ツアーは早朝開始のため、コロンボ港に6時着でバスでラトナプラまで2時間です。早くて8時
     過ぎに到着ですと、開始時間に間に合いません。

      しかし、せっかくの世界一周旅行でスリランカに来ていただくので是非、私の採掘所を見てほしい
     です。
      色石の種類、そしてブルーサファイアの品質は非常に良いです。ツアーは石が良く出るところを選
     んでお見せしています。

      そこでこれは私の提案ですが、中川様が船の中で3人以上の人を見つけてツアーに連れて来て
     いただけたら開始時間も早朝ではなく、好きな時間に変えられます。
      ツアー内容も、ご希望の内容にアレンジ出来ます。いかがですか?日本人、外国人問わず、
     お1人1万円です。日本語でも英語でも大丈夫です。船の中でお友達を見つけられたら、こちらも
     全力でご協力します。
      どうか再度考えてみてください。よろしくお願いいたします。                     』

    2月18日になって、S氏から次のようなメールが入ってきた。

    『 先日、MH様のホームページを妻と拝見しました。妻はMH様の鉱物に熱心な姿勢に共感し、是非
     私たちの採掘所に来て欲しいといいました。ですから、今回特別に一名でご参加でも大丈夫です。
     船で参加者が増えればもっといいです。
      妻は愛知県のT市出身なのでMH様の石友のKNさんやKDさんに是非宣伝してください。私自身、
     ビジネスは置いておいて、スリランカの石の魅力を広めてくれる人を探しています。
      この国の石の良さを伝えてくれるようなMH様のような人が必要です。是非、採掘現場でいい石を
     見つけて、日本の多くに人に魅力をたくさん伝えてください。
      僕の宝石採掘ツアーも宣伝してください!

      私たちは3月に仕事で日本に行きます。成田空港に到着後、愛知に帰ります。もしその時詳しく
     お話をされたければお電話ください。電話番号は080-XXXX-XXXXです。

      3月3日の早朝7時ごろ、スリランカンエアラインで成田に到着しますので、それ以降電話が通じま
     す。
      お会いできることを楽しみにしています。                               』

    このメールをいただき、S氏の奥さんが日本人だと初めて知った。S氏のブログが日本語で綴られている
   理由も私なりに納得した。
    3月は、自治会役員の引き継ぎ、MH農園の手入れ、ロシアビザ取得をはじめ旅行の準備に忙しくて
   S氏に電話したのは4月に入ってからだった。電話に出たS氏が、日本語を流暢(りゅうちょう)に話すの
   には驚いた。話したのは、次のようなことだった。

     @ 一人参加受け入れのお礼
     A 船の中で同行者を募り、参加人数をシンガポールに入港する前日(4月21日)までに連絡する。

    こんな経過で、『スリランカで宝石探し』の計画が固まりつつあった。
    ( 2016年2月準備開始 4月実施 )

2. 「自主企画」とは

    106日間の長旅で船客が退屈しないように、船では毎日のように各種のイベントが開催される。それ
   らの中には、船側が著名人を「水先案内人」として招聘して行う講演会などの他に、船客が自主的
   に企画・運営する『自主企画』なる仕組みがある。

    『スリランカで宝石探し』の同行者を募集しようとすると、この『自主企画』で聴衆を集め内容を説明
   した上で参加を呼びかけるのが一番手っ取り早くて確実だと思われた。そこで、参加費を振り込み終
   えた出発3ケ月前の段階で、「自主企画相談用紙」を送って相談しておいた。

     
              「自主企画相談内容」
   

    相談内容に対する回答も出発前にもらっておいた。

     @ プロジェクターが使えるか(PC持参)
       → 使用可能
     A 船内で配布資料のコピーは取れますか。
       → 可能(有料)

3. 自主企画開催まで

    自主企画を開催すると言っても勝手に開催できるわけではない。まずは、開催する場所を確保しな
   ければならない。船という限られた場所で、大勢の人を集めてプロジェクターを使ってプレゼンができる
   場所は限られ、”陣取り合戦”の様相を呈してくるのだ。そのためには、実施2日前に「自主企画申請」
   を行って場所を確保し、プロジェクターやマイクなどを使うためには音響スタッフの支援を要請しておく
   必要もある。

        
              自主企画申請書                      場所取り

    開催場所・時間がかぶると当事者間の話し合いで”譲り合う”ことになる。申請書が受け付けられる
   と、前夜に配られる翌日号の「船内新聞」に掲載され、それを読んだ関心のある人々が集まってくる
   ことになる。
    船内新聞4月16日号のイベントページ(一般紙のテレビ番組のページのように、開催場所と時間を
   一覧表にしたページ)に『スリランカで宝石ゲット!!』が掲載された。

        
                 「船内新聞」4月16日号                 『スリランカで宝石ゲット!!』

    【後日談】
    陸上の自宅では、その日の新聞はその日の朝に配達される。船内では翌日の新聞が各船室に配
   布されるのは夜20時前後だった。船は横浜(神戸)を出港し西回りで横浜(神戸)に戻るので、数日
   に一度時差が発生し、時計を合わせる必要がある。イギリスからロシアに向かう時のように東に進む
   場合やマレーシアのように国の地理的な位置と関係なく時刻を決めている国では、時計を進めるケー
   スもあるから話は簡単ではない。
    出港して間もないころ、新聞に「本日の24時、またはお休みの前に時計を1時間遅らせ(進め)て
   ください」という記事が載るとその日のうちに時差調整してしまう人が何人もいた。新聞にある「本日」と
   は、実際には「翌日」のことなのだ。
    こんなわけで、最初の頃は時間を取り違えて1時間早く起きて、所定の場所に行ったが誰もいなかっ
   たり、逆に集合時間に遅れたりするトラブルが絶えなかった。
    そのうち、食事のテーブルの上に、「時差調整」のサインが出ていることに気づき、お互いに注意し合
   うようになって、トラブルは少なくなっていった。

    同時進行の形で、プレゼンの資料の作成も進めておいた。聴衆は「鉱物」やその採集方法などに
   なじみが少ない人がほとんどだろうと思い、以前小学生を対象に開催した課外授業でつかった資料や
   過去に開催したミネラル・ウオッチングの写真、そして今回訪れるスリランカの宝石の町・ラトナプラにつ
   いてネットや本で調べた資料などをパワーポイントでまとめておいた。

4. 自主企画「スリランカで宝石ゲット!!」

    4月16日の16時15分から30分の予定で自主企画の説明会を実施した。8階中央にある「アゴラ」と
   いう一番人が集まりやすい場所で、約50名が集まってくれた。以下に示すプレゼン資料を中心に説明
   した。

 (1) 表紙
      今回の「スリランカで宝石ゲット!!」は、私なりの『地球一周の旅の楽しみ方』をシリーズで
     紹介しようという企画で、その第1回目に当たる。
      船客の60%以上がリピーターで、中には10回以上「地球一周の旅」に出かけている人々を前に
     「旅の楽しみ方」を講釈する失礼を詫びるMHだった。

      
                            表紙

 (2) 内容・自己紹介
      「博多のあねご」に「スリランカで宝石を採りに行く同行者を探している」と話すと、「山梨から来
     て、『宝石を探す』などと言うと、怪しいと思われるから、キチンと自己紹介した方が良いですよ」と
     アドバイスされた。確かに、昔甲州商人がガラス製のものを水晶製だと騙して全国を売り歩いた時
     期があったと聞いているので、自己紹介には数ページを割いて詳しく説明した。

      
                          プレゼン内容

      
                          自己紹介@

      
                          自己紹介A

      
                          自己紹介B

 (3) 「宝石」って何?
      スリランカで探しに行く「宝石」とはどういう性質を備えているのかを説明。宝石の条件は、次の
     3つだ。

      @ やたらと産出しない(珍しい)
      A 色や形が美しい
      B 高度が高い(硬い)

      
                         「宝石」の条件

      鉱物の硬さは、「モース硬度」で表示され、例外がないわけではないが、硬度7の水晶よりも硬
     いものを「宝石」と呼んでいる。

      
                          「モース硬度」

 (4) スリランカの宝石
      われわれが探しに行こうとしているスリランカの宝石は、紀元前10世紀ころから世界的に有名だっ
     た。
      
                       スリランカの宝石の歴史

 (5) 宝石はどうやって採るの?
      宝石の特徴の一つに「比重が大きい」があげられる。金は同じ体積の水に比べて20倍重いし、
     サファイア(青玉)は約4倍重い。普通の土砂(石英)は2.7だから、この比重の違いを利用して採
     るのだ。
      
                           「比重」とは

      
                       いろいろな鉱物・宝石の比重

 (6) 採集方法(揺り分け法・パンニング)
      一番簡単なのは、パンと呼ぶ底の浅い鍋のような容器を使って、水の中で比重の小さい土砂を
     洗い流し、比重の大きい宝石を揺り分けるパンニングという方法だ。

      
                        パンニングでトパズを探す孫娘

 (7) 宝石の町・ラトナプラ
      われわれが宝石探しで訪れるラトナプラの町は、船が停泊する首都・コロンボの南東およそ100
     キロの位置にあり、バスで3時間かかる。
      古代ヒンディー語で、ラトナは宝石、プラは都、文字通り「宝石の町」だ。

      
                           宝石の町・ラトナプラ

      町の周辺には、宝石の採掘場があり、そこでは、井戸のような縦穴から宝石を含む土砂を掘り
     出し、昔ながらの大きなザルのような道具を使って土砂の中から宝石を探している。

      
                    宝石を含む土砂を掘り出し、揺り分ける現地の人

 (8) 同行者募集
      一緒に「宝石探し」をしてみたいという人を募集する。これは、自主企画であって営利目的では
     ないので、透明性を高めるため、参加者の中から「会計」を選任する。

      

      

      説明の後、いくつかの質疑応答があって、説明会は終了となった。

5. おわりに

 (1) 『宝石探し』参加者
      説明会の会場に、参加希望者の受付名簿を置いたところ、またたく間に20名を超える人が名前
     を書いてくれた。
      参加者の動機は、「ルビー(宝石)を買いたい」、「現場を見たい」、「昔からの夢だった」、そして
     単純に「面白そう(笑)」までいろいろだった。
      中には、スリランカで予定していたオプショナル・ツアーをキャンセルしたというご夫妻もいた。(この
     後、OPツアーのキャンセルが続出することになり、旅行会社が何事かと思ったらしい)

      10名も集まれば上出来と思っていたが、嬉しい誤算だった。これで、現地のS氏にも喜んでもらえ
     そうだ。一方、これだけの人数を勝手の解らない未知の国で安全にミネラル・ウオッチングを楽しん
     でもらえるか、責任の重さもヒシヒシと感じ始めたMHだった。

6. 参考文献

 1) 地球の歩き方編集室編:各国編,ダイヤモンドビッグ社,2013年


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