変化の少ない船の上の生活に比べて上陸するのは嬉しいのだが、今日フランス、明日イギリスの連荘(れん
ちゃん)となると話は少し違ってくる。上陸の準備が大変なのだ。第一、ドーバーに上陸して何をするのか決まっ
ていなかった。
第1の問題の「何をやるか」は、ロンドンまで行って「大英自然史博物館」見学したと思っていたが、往復の
時間を考えると無理そうなので、海岸沿いの「白亜の崖」が見られればそれで良いかな、位に思っていた。北九
州の旅友・S夫妻から「鉄道で古都カンタベリーに行きませんか」と誘われていたが今一つ気乗りしなかった。
船の中に訪問国全ての「地球の歩き方」が備えられていて、借り出してもう一度読んでみると、ロンドンまで
ローカル鉄道でも片道2時間、待ち時間を入れて往復5時間として、8時入港、23時出港だと前後2時間引い
ても、ロンドンで8時間は滞在でき、「大英自然史博物館」を見学できそうに思えてきた。
第2の問題はお金だ。イギリスの通貨を1ポンド(約150円)どころか1ペニー(約1.5円)も持っていないのだ。どう
しようかと思案しているところに東京・Aさんが、「MH ポンド要る?」、と耳寄りな話を持ってきてくれた。「○号
室の△さんが、円と交換してくれるって。私は交換した」、というのだ。まさに、”渡りに船だ”。船室にお邪魔して、
話を聞くと「娘がイギリス旅行した時の残りだから、レートはいくらでもよい」というが、50ポンド札2枚を日本円
16,000円で交換してもらった。この時、この50ポンド札がとんでもないものだとは、夢にも思わなかった。
こうして、イギリス上陸の準備は整った、はずだった。
( 2016年5月24日 体験 )
早朝ドンヨリと曇っていた空が、7時少し過ぎに船がドーバー港に入港するころには晴れ間が見えてきて、ドー
バーの街の高台にあるシンボルのドーバー城やその崖下の真っ白いチョークの層がまぶしく光って見えた。
船は接岸し、8時半過ぎに下船できた。ロンドンに行くには、ドーバー駅まで行って列車に乗るのだが、下の
地図でお分かりのように3キロ近く歩かねばならない。千葉に単身赴任していた時、朝夕2.5キロの道を往復し
ていたことを思えば何ともないのだが、道順が判らないのは不安だ。それでも、英語が通じるだけ他の国よりは
ましだ。
静かな町で、手入れの行き届いた邸宅がある。車や人通りは少ない。途中で道を尋ねながら、迷うこともなく、
30分ほど歩いて、ドーバー駅に着いた。駅の正式名称は ” DOVER PRIORY ”、「ドーバー 小修道院」とでも
訳すのだろうが、このままにする。
駅の改札口で切符を買うため「ロンドンまで往復」、といって50ポンド札を出したら、駅員が「この50ポンド札は
受けいれられない(Not Accepted )」、といって突っ返してきた。持っているのは50ポンド札2枚きりだから、これで
は切符が買えない。
「ロンドンには行くな」、ということかと思い、船に引き返そうと思った。背中のバッグにロンドンで投函するつもり
だった孫娘など友人・知人への絵葉書が入っているので、通りかかった保線担当者らしき人に、「これを投函す
るポストはどこか」と聞くと「駅構内にある」と言いながら、ゲートを開けてくれ、ポストに投函できた。
「仕方がないから船に戻って、昼でも食べてから白い崖でも見に行こうか」、と思って駅の構内からスゴスゴと出
た。
空を見上げるとスッカリ晴れ上がって青空が見える。「MH何しているんだ。らしくないぞ!!」、という大天使・
ミカエルの声が聞こえた。( あくまでも個人の感想です )。
ポンドがないのが手詰まりの原因だから、「この辺りに両替屋はありますか」、と聞くと近くにあるという。教えら
れたところに行くと、旅行者相手に ” Travel Money ” の表示を出していた。私の方は、” Trouble Money " だ。
持っていた日本円の内、2万円分をポンドに交換してもらった。レートは1ポンド177円だが、サービス料10.5%
さらに手数料3.5ポンド取られ、受け取ったのは97ポンド63ペンスだった。1ポンド205円というこれまた割の悪い両
替だった。50ポンド札が使えれば、悪い交換レートではなかったのだが・・・・・・・。
再び駅に行って、切符を買う。「地球の歩き方」には、往復で40ポンドくらいとあったのだが、22.6ポンドだった。
ラッシュ時を過ぎた10時からは割引になるのだ。”モタモタ”していたおかげで、20ポンド(約3,000円)得した気分
だ。
ホームに行くと間もなくロンドンからの列車が入ってきた。この列車が折り返しでロンドンまで行くのだ。ホームを
見渡すと客はまばらで、船で見かけた人たちが2グループ、5人ほどいただけで、列車でロンドン、という人は少な
かった。(鉄道を使ったのが正解だった、知ったのは翌朝の事だった)
列車は、日本の地方都市を走るものと似たようなものだった。確か、10時16分にドーバー駅を出発した。すぐ
に、ドーバー城のある高台の下のトンネルに入り、その先も切通のような中を走る。単線区間で、両側から伸び
た木の枝葉が車体に触れる箇所もある。切り通しの露頭を見ると、白いチョークで海岸と同じ層が内陸でも続
いているようだ。
切り通しを抜けると、田園風景が広がっていた。畑一面に植えられているのは季節からして収穫前の小麦の
ようだ。車掌が検札に回ってきた。ボールペンで印をつける味気ないというか合理的だ。
最初に見る大きな町が「古都カンタベリー」だ。歴史を感じさせる石造りの建物が多くて、降りてみたいのだが
停車中あるいは走行中のわずかな時間で撮影だ。
田園風景が見られなくなり、線路の両側は市街地の延長線のようだ。駅があっても停まらずに走る。日本の
大都市周辺を走る特急とか快速電車と同じだ。それだけロンドンに近づいたということだろう。お昼を少し回った
ころ、ロンドンのヴィクトリア駅に着いた。ちょうど2時間かかったことになり、帰りにここを出発する時間は遅くても
18時と決めた。
終着(始発)駅なので、カマボコ屋根の下のホームにイギリス南部や南東部に行き来する列車が並んでいる。
人気映画「ハリーポッター」の一場面を思い出させるような光景だ。
「大英自然史博物館」に行くには地下鉄が便利で、2駅だか乗って「サウス・ケンジントン駅」で下りれば良い
と事前学習してあった。地階に降りて、窓口で切符を買って来た電車に乗り込む。何気なく壁面のモニターを
見て驚いた。50ポンド札に赤い斜め線が引かれ、” £50 NOTES NOT ACCEPTED " とあるではないか。
これだけPRしているから、ドーバー駅で50ポンド札を受け取ってもらえなかったのは当然だったのだ。だが、なぜ
なのか、その理由がわかるのはもう少し先のことだった。
「大英自然史博物館」の正面に行ったら、出入り口は右手の方で、回り込んで正面から入場する。あまりに
大きな建物で、全体を採りきれなかった。
大英自然史博物館は、ロンドン自然史博物館やイギリス自然史博物館とも呼ばれ、その収蔵品の質と数で
イギリスはもちろん世界屈指の自然史博物館だ。外国人観光客でも”入館料は無料”だ。
この博物館は大英博物館の一部門としてスタートした。大英博物館自体は、1753年にアイルランドの医師
ハンス・スローン卿から英国政府に遺贈された彼のコレクションを、ブルームズベリーのモンタギューハウスに収めた
ことに始まる。このコレクションには、書籍・コインなどに加えて動物・植物・鉱物のコレクションも含まれていた。
しかし、およそ一世紀も経つと標本・資料類が増え、モンタギューハウスに収蔵しきれなくなって、新しい博物
館を建てるべきと主張したのが1856年から大英博物館の自然史部門長を務めていたリチャード・オーウェンであ
る。この主張は受け入れられ、1860年に新館の建築と大英自然史関係標本の移動が決定し、サウスケンジン
トンで1862年に開催されたロンドン万国博覧会跡地が新しい博物館のために購入され、1881年に「大英自然
史博物館」が開館した。
1963年、この博物館は独自の評議委員会を持つ独立した博物館となり、大英博物館の分館扱いではなく
なった。さらに、1985年にはこの建物の東側に隣接して建てられていた英国地質調査所の地質博物館が併合
された。館の英語名が ” The Natural History Museum " に変わったのは、1992年からである。
ミュージアムショップで購入した絵葉書の中から、訪れたときから135年前の創建当時の外観と鉱物展示室の
様子を紹介する。
博物館には、7000万点以上もの収蔵品がある。日本最大の国立科学博物館の鉱物・岩石標本収蔵数が
20万点弱(岩石13万、国産鉱物4.5万、外国産鉱物1.5万、鉱床0.15万)だから、その規模がわかろうという
ものだ。
・ 動物標本:5500万点(内、昆虫標本が2800万点)
・ 化石標本:900万点
・ 植物標本:600万点
・ 岩石・鉱物標本:50万点以上
・ 隕石:3200点
標本以外にも、自然科学関係の蔵書コレクションは100万冊をこえ、さらに50万点を超える絵画コレクションが
ある。絵画のほとんどが博物画である。保存用標本にする以前の生息時の姿を残すには、写真が無い時代に
は絵画に頼るしかなく、探検には博物学者の他に専門の画家が同行するのが常だった。
博物館に入ったのが13時半ごろで、帰りの列車に18時に乗るとすると、見学したりお土産を買ったりする時間
は4時間足らずだ。とても全てを見るのは不可能だから、鉱物、隕石などを重点に見て回る事にした。そのため
には、どこに何が展示してあるのかを調べる必要がある。
展示してあるテーマ別に、館内は奥から手前に @レッド A グリーン B ブルー C オレンジ 4色の
ゾーンに分かれている。
@ レッド ゾーン(地球の光景 Visions of Earth)
主に旧地質博物館の建物に位置しており、岩石・鉱物など地学関係のギャラリーが集まっている。
・ 地球の今日・明日( Earth Today and Tomorrow )
・ 始原より( From the Biginning )
・ 地球の宝物庫( Earth's Treasury )
・ 内なる力( The Power Within )
・ 休む事なき地殻( Restless Surface )
・ 地球ラボ( Earth Lab )
・ 今に遺る痕跡( Lasting Impression )
地球の宝物庫の入り口には、「珪素からシリコンへ」の展示がある。水晶、瑪瑙など珪素(Si)を含む鉱物は
古代から宝飾品として珍重されてきた。現在では薄い水晶片に電圧を加えると正確な固有の周波数で振動
するという性質が時計などに応用されている。何よりも元素としてのシリコンは、半導体電子回路の基板材料
としてPC,スマホ、タブレットなど現代文明にはなくてはならない物質になっている。
半世紀にわたり半導体技術の成長期を支えた、名もない技術者の一人として、誇らしく思いながら観た。
宝庫と言えば、金銀・宝石そして色とりどりの美しい鉱物たちが大勢の見学者の眼を惹きつけている。しかし、
騙されないようにご用心。小学生などを課外授業で案内するとき、『愚か者の金』の話をすることがある。
" Fool's Gold (愚か者の金)" の説明書きがついた標本があったので写真に撮ってきた。「黄鉄鉱」を俗に
こう呼ぶと、堅いイギリス英語で書いてある。
水晶の双晶に「傾軸双晶」があった。フランス産の平板になっていない六角柱状結晶が日本式双晶になって
いる珍しいタイプなので写真に写しておいた。
帰国して鈍った身体のリハビリに訪れた長野県川上村で、同じ産状の標本をいくつか手にするとは、この時
夢にも思わなかった。
・ 『 2017年 ミネラルウオッチング計画 』
( Mineral Watching Plan 2017 )
地球ラボでは、実際に様々な岩石鉱物を手に取ることができ、自分で持ち込んだ岩石・鉱物を標本・資料
と照らし合わせて自分で鑑定・同定することができる。そのための岩石顕微鏡、データベースなどが用意されて
いて、自分の手で情報を集め、自分で考えて答えを出す、という博物館のコンセプトに則っているためだ。
また、阪神・淡路大震災の揺れを体験できる施設では、いきなり日本(神戸)のコンビニに入った錯覚に
とらわれ、日本人なら妙な懐かしさを感じるはずだ。
A グリーン ゾーン
地下から3階までギャラリーが配置されている。地下には"investigate" という区画があり、学校や一般向けの
科学教育を行っている。来館者は、大人も子供も実際に標本に触れることができ、その標本の種類も動物・
植物・鉱物など多岐にわたる。それらの標本についての講義を聴くのではなく、investigate(調査・研究)の
名の通り、顕微鏡・各種計測装置・データベースなどを駆使して自分で調べる事により、その標本についての
知識と科学的方法論そのものを習得できる。
・ 中央ホール( Central Hall1 )
・ 化石海生爬虫類( Fossil Marine Reptiles )
・ 英国の化石( Fossils from Britain )
・ 生態学( Ecology )
・ 地を這うもの( Creepy Crawlies )
・ 鳥類( Birds )
・ 進化上の我々の位置( Our Place in Evolution )
・ 鉱物( Minerals )
・ 霊長類( Primates )
・ 樹木( Tree )
鉱物関係で見たいのは、「日本産の鉱物」だった。事前調査では、「輝安鉱」と「水晶の日本式双晶」が
あるはずだったが、「日本式双晶」の展示してあるエリアは残念ながら見学できなかった。
その代わり、伊予(愛媛県)市之川鉱山産の長さ60〜80センチはありそうな「輝安鉱」の群晶は、高温多湿
の日本と違って保存状態が良いのか、120年以上経っているのにガマから掘り出したばかりのような新鮮さだった。
ギリシャのアテネ大学を訪れたときも、市之川鉱山産の「輝安鉱」が展示してあった。やはり日本を代表する
鉱物は、「輝安鉱」か「日本式双晶」だと思うのだが・・・・・。
・ 北極圏をめぐる地球一周の旅 【アテネ第二日目】
( Tour around the World & Arctic Circle 2016
- 2nd Day in Athens - )
入口から突き当たりの中央ホールには巨大な恐竜・ディプロドクスの全身骨格が展示され、博物館の目玉
になっている。このディプロドクスの複製骨格は1905年にアメリカの鉄鋼王アンドリュー・カーネギーが寄贈した
もので、ロンドン以外にパリ・ベルリン・ウィーン・ボローニャ・ラプラタ・メキシコシティの各都市の博物館に、同じ
複製が送られている。
2015年1月、アルゼンチンの「ラ・プラタ自然史博物館」を訪れたが、鉱物ばかり眼に入って、同じようなものが
あったような気もする・・・・・・。なかなか全体像を写せるスポットが少ないので一部だけだが、見学にきた小学
生の一団と比較していただければ、その巨大さも伝わるだろう。
中央ホールには他に樹齢1,300年のジャイアント・セコイアの輪切りや、シーラカンスなどが展示されていると
ともに、正面階段の踊り場には2.2トンにもなるチャールズ・ダーウィンの大理石像が設置されている。この像は
大英自然史博物館が開館してまもなくの1885年に公開された。しかし、あちこち移動させられた挙句、ダーウ
ィン生誕200年記念にあわせて、2002年に公開当時の場所に再設置された。
鳥類の展示には、人間によって絶滅させられた種が展示してあり、最も凶暴な動物は”人間”だと思い知らさ
れる。
B ブルー ゾーン
ブルー・ゾーンはグリーン・ゾーンとは反対側にあり、地球上の生命の多様性を示すと共に、人間もまたその
一部だということが理解できるようになっている。
・ 恐竜( Dinosaurs )
・ 魚類・両生類・爬虫類( Fishes, Amphibians and Reptiles )
・ ヒトの生物学( Human Biology )
・ 海生無脊椎動物( Marine Invertbrates )
・ 哺乳類( Mammals )
・ 哺乳類(シロナガスクジラ)( Mammals (blue whale) )
C オレンジ ゾーン
オレンジ・ゾーンは本館・東館のどちらにも位置してはおらず、ダーウィン・センターは、増設された新館に、
野生生物公園は建物の外にある。
・ ダーウィン・センター( Darwin Centre)
・ 野生生物公園( Wildlife Garden)
【ミュージアム・ショップ】
日本の博物館や美術館と同じように、出口にミュージアム・ショップがある。売っている物も鉱物・化石・人形・
そしてTシャツに至るまで、似たり寄ったりだ。
一通り見まわしてみて購入したものは次のような品々だった。
・ 鉱物関係の本
1) ” ROCKS & MINERALS ” 岩石・鉱物・(化石)図鑑(16.99ポンド 約2,600円)
2) ” Minerals ” きれいな岩石と鉱物図譜(3ポンド 約500円)
・ 博物画
オークションなどに博物画が出品されることがあるのだが、動植物だけで鉱物はほとんど言って良いくらい
見かけなかった。16種(4行×4列)の鉱物を描いた1枚があった。横40センチ×縦50センチと大きいので、折れ
たりせず無事に持ち帰れるか不安だったがここでしか手に入れられないと思い、思い切って購入した。
(25ポンド 約3,800円)
・ アメシスト(紫水晶)
船の中での旅友や孫娘にと思い頭付を選んで10本購入。(1本1.5ポンド 約230円)
・ 絵葉書
先に紹介した創建当時の博物館を描く絵葉書。0.15〜0.75ポンド(約20〜110円)ディスカウントしていて、
1枚0.6ポンドだったので、まとめて11枚購入。
・ マグネット
博物館の建物をセラミックで作ったマグネット(3.5ポンド (約 500円)
【英国地質調査所・地質博物館】
英国地質調査所( Buritish Geology Survey )の地質博物館があり、事務所のようなところで地質関係の
本や文献などを販売している。残念ながら、博物館の展示まで見る時間がなく、次のような書籍を購入した
だけだった。
1) ” WHERE TO FIND FOSSILES イギリス南部の化石産地(1.5ポンド 約230円)
IN SOUTHERN ENGLAND "
2) ” Minerals ” きれいな岩石と鉱物図譜(3ポンド 約500円)
3) ” A guide to common Minerals ” 身近な鉱物図譜(3.8ポンド 約600円)
ここで件(くだん)の50ポンド札を出してみた。受け取ったレジの女性は紙幣を機械にセットして、紫外線を
照射して、何事もなかったかのように釣銭を返してくれた。
50ポンド札は偽札が横行し、本物かどうかをチェックする機械がない場所では受け取ってくれないのだと事情が
呑み込めた。もう一枚の50ポンド札も、両替を兼ねてここで使ってしまった。
時計は16時を回り、これから先の予定を考えると、鉱物の主なものを”さーっ”と見ただけで、”後ろ髪をひかれる
想い”で、博物館を後にせざるを得なかった。半日や一日で全部見ようなどとは、虫が良すぎたのだ。
局の中に入って、自然史博物館で買った絵葉書を書いて孫娘に送ることにして、切手を現金で購入した。
切手だけでなく記念コインなども売っていて、ショーケースの中に「第一次世界大戦100周年記念」コインなどが
展示してある。「ロンドン大火350年記念」 2ポンドコインがあったので購入した。( 10ポンド 約1,500円 )
そとに出て、ポストに投函するところを ” 自撮り ” しようと四苦八苦しているのを見かねて通りがかりの男性が
シャッターを押してくれた。
街角の食料品店をのぞくと、各種の紅茶を売っていた。イギリスと言えば紅茶だろうと思い、2種類をそれぞれ
数缶ずつ購入した。
地下鉄に乗って、ヴィクトリア駅に着いたのは17時少しすぎだった。ドーバー行きのホームに行くと列車が入って
いて、電光掲示板を見ると、17時27分発だ。退勤時間帯なのだろうか、列車はほぼ満席で何とか席を確保し
た。
時刻表通りに列車は出発し、いくつかの駅を通過する快速運転だ。前に座った勤め人らしい女性が私を
日本人だと思ったらしく話しかけてきた。一度日本に行ったことがあるという。「日本の宗教について教えてくれ」
というので、「日本人のほとんどが、”仏教徒”ということになっている。しかし、”仏教徒”らしい行為をするのは
お葬式の時くらいのもので、聖職者たるお坊さんも似たようなものだ」、というようなことを話した。
すると、「 ” SINTO ” はどうなっている」、と突っ込まれた。「神道を信じる人は少なく、結婚式などが神道に
則って行われるだけだ」、というようなことを話した。
日本語で話しても難しい、というより普段考えてみたこともないことを英語で話すのは、いかに厚顔のMHにしても
冷や汗ものだった。
外に出て、いかに自分が住んでいる国、地域の歴史・文化などに疎(うと)いのかを思い知らされる。
女性が途中駅で降り、車内はガラ空きになり、ドーバー駅に着くころには数えるほどだった。ドーバー駅に着い
たのは19時少し前だが、日本の5月末と大違いで、まだまだ明るかった。
このまま船に戻るのも芸のない話だと思い、暗くなるまで、「白い崖」でミネラル・ウオッチングに挑戦することに
した。
1) 地球史の至宝たち
・日本初公開 進化論の象徴「始祖鳥」化石
2) 革新と不正の足跡
・ダーウィンの「種の起源」肉筆原稿
・20世紀最悪のねつ造事件「ピルトダウン人骨」標本
3) 久々の里帰り
・日本では絶滅したとされる「ニホンアシカ」標本
4) 不幸呼ぶ輝き
・持ち主に不幸をもたらしたとされる紫水晶のアクセサリー
最後の持ち主の英国人が捨てても、数か月後に戻ってきたという逸話が残る。
ついでがあれば見に行こうと思うが、イギリスは無料だったのに、1,600円もとるという。日本では次の選挙で
勝つように要りもしない道路を作ったりして税金を無駄使いするが、イギリスと税金の使い方が違うのだ。