福島県郡山市手代木の鉱物

福島県郡山市手代木の鉱物
1.初めに

福島県郡山市田村町手代木(てしろぎ)は、故櫻井 欣一博士が、昭和11年に
この地を訪れ、鋼玉、緑柱石とともに、不明の黒色鉱物を発見され、手代木石と仮称
された。
昭和12年になって、木村、井川両氏が、イルノメルチルに同定した。
郡山市の愛宕山採石場の採集の帰りに石友の高橋氏と一緒に立ち寄ったが、産地を探す
のに手間取り真っ黒い不明鉱物を何個か持ち帰っただけであった。
その後、長島乙吉氏の「日本希元素鉱物」の記述を読むにつれ、この真っ黒い鉱物は、
電気石とは思われず、手代木石であろうと考えています。
その後、凡地学を訪れると、手代木産の紅柱石があったので、迷わず購入した。
(2001年6月採集)

2.産地

石川町から須賀川市に向かい、須賀川三春線で北上し、国道49号線を
横切り、県道54号線に入る。手代木(てしろぎ)の集落を過ぎ(手前?)で右折し
舗装が途切れる墓地の脇に駐車する。
ここから、未舗装の山道を道なりに約100m進むと左側に、崩壊した家屋跡と
その奥に露頭がある。
さらに進むと、若干上りになった直進路と右に曲がる分かれ道を直進し、20m位
先を左に山の中に入ると、直径50m位の凹地があり、その壁面に、坑道(試掘跡?)
や露頭が残されている。

3.産状と採集方法

ここは、代表的なペグマタイト産地で、手代木石は長石の中に産出する。
露頭を叩いたり、大きな転石を割っての採集になります。

手代木での採集風景【高橋氏撮影】

4.産出鉱物

(1) 手代木石【Ilmenorutile;(Fe,Mn)x(Nb,Ta)2xTi1_3xO2
鉄黒色、不透明、鈍い亜金属光沢。手代木では、ペグマタイトの露頭近くに電気石と
ともに産出し、小さなものは柘榴石に付着して産したそうです。

手代木石(?)
手代木産の手代木石は、六方晶系のような感じで、長い結晶で、比重は4.78と電気石の
3.28に比べ重く、ペグマタイトに産する鉱物で、このような色、結晶をするものは
他にないと記述してあります。(しかし、素人の悲しさ、手代木石と断定できません。)

手代木石結晶図【「日本希元素鉱物」より引用】
(2) 紅柱石【Andalusite;Al2SiO5】
ここの紅柱石は、ペグマタイトの奥深くから産出し、手代木石とは共生しなかった
そうです。鋼玉(サファイア)をかなりの確率で含むとの情報もありますが、
今回購入したものには、含まれていませんでした。

手代木産紅柱石

5.おわりに

(1)塊状の電気石と思ったのですが、”怪しげな鉱物は持ち帰れ”の
鉄則に従い真っ黒な不明鉱物を2個体と柱状結晶の抜け殻を持ち帰った。
真っ黒い鉱物は、手代木石だろうと考えていますが、識者に鑑定をお願いする
ことになりそうです。

6.参考文献

1)長島乙吉,弘三:日本希元素鉱物,1960
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