2015年夏 T大学地学ゼミ ミネラル・ウオッチング in Nagano










               2015年夏 T大地学ゼミ
           ミネラル・ウオッチング in Nagano

1. はじめに

    あれはたしか、今から10年前の2005年8月20日だった。長野県川上村の気になっていた産地を
   コッソリ探査するつもりで、夫婦で湯沼鉱泉に入山料を払いに行った。
    すると、社長から、「 T県から来た家族が小川山に行きたいって言ってるが、初めてじゃ無理だ
   から、甲武信鉱山を案内してやってくれ 」、と頼まれた。
    こっちはこの日の予定があるのに、と渋っていると、「おめえさんのパソコン(HPのこと)を見て来た
   たんだから」、と私に案内する責任があるかのような口吻だ。(仕方なく)、この日の予定を急きょ
   変更して、甲武信鉱山を案内して回った。これが、T県・Sさん夫妻と娘・Yさんとの出会いだった。

    ・長野県甲武信鉱山の松茸水晶(その2)
     ( Scepter Quartz of Kobushi Mine - Part 2 - , Kawakami Village , Nagano Pref. )

    あれから10年、当時小学6年生だったYさんは、小さい頃からの志望通り理系に進み、2013年と
   2014年の夏、T大地学ゼミの仲間を連れ、湯沼鉱泉に宿泊してくれたので、ミネラル・ウオッチングを
   案内した。

    ・2013年夏 T大学地学ゼミ ミネラル・ウオッチング in Nagano
     ( T Univ. Geology Semi. Mineral Watching Tour , Aug. 2013 , Nagano Pref. )

    ・2014年夏 T大学地学ゼミ ミネラル・ウオッチング in Nagano
     ( T Univ. Geology Semi. Mineral Watching Tour , Aug. 2014 , Nagano Pref. )

    このとき採集した、「△△沢の水晶巨晶」、「甲武信鉱山のベスブ石」、そして「〇〇峠のきれいな
   ざくろ石」などの標本と宿泊した「湯沼鉱泉」のBBQなどの料理の美味しさ、さらに宿泊料金の安さ
   に、「2015年も湯沼鉱泉に宿泊して『地学巡検』したいので後輩をよろしく」、と4年生になり参加
   できないYさんからメールがあった。

    幹事役のSさんからもメールがあり、学生たちの希望も入れ、2015年は、3泊4日で次のようなコー
   スで、男女学生13名を案内した。半分以上の7名が1年生というのが今年の特徴だ。

    第1日目・・・・・・・希産鉱物産地とクロム鉱山跡
    第2日目・・・・・・・甲武信鉱山
    第3日目・・・・・・・川上村の水晶産地
    第4日目・・・・・・・きれいなざくろ石産地

    地学ゼミは化石採集がメインで、本格的な鉱物採集経験は浅い学生がほとんどだったが、訪れ
   たそれぞれの産地で、珍しい標本やきれいな鉱物を採集でき、そのたびに歓声があがり、私自身
   産地の奥深さと健在なことを再確認した。さらに、「古希」の祝いを済ませた『天呆穿人』だが、厳し
   い産地の双璧・「甲武信鉱山」と「△△沢」を連荘(れんちゃん:続けて)で回れたのは自分でも意
   外だった。
    こうして、多くの人に湯沼鉱泉を利用してもらえれば、広く「水晶洞」も知ってもらえるし、何よりも
   売り上げに寄与できると思い、ボランティアで案内している次第だ。これがT大の恒例行事になって
   くれれば、と願っている。
    ( 2015年8月 案内 )

2. 第1日目【希産鉱物産地とクロム鉱山跡】

 (1) 「佐久平駅」に集合
      帰省先から参加する学生が多いので、長野新幹線「佐久平」駅に12時に集合することにした。
     私は7時過ぎに自宅を出て、湯沼鉱泉に立ち寄り、荷物や2日目以降分のスイカ、そして「標本
     玉手箱」用の鉱物などを部屋に置いて佐久平駅に向かった。
      途中の川上郵便局で記念に風景印と日付印を押印する。

         
                  川上犬などを描く風景印                       日付印

      12時少し前に駅に着くと、学生たちが数人集まっていた。しかし、”隊長”の姿がない。新幹線
     の駅で事故があったらしく1時間ほどが遅れているらしく、到着を待つことにする。
      駅には駅周辺市町村の案内パンフレットがある。今夜の宿、湯沼鉱泉のある川上村のを見る
     と、地図には「湯沼鉱泉旅館」「∴天然水晶洞」が載っているの発見し、何部かもらってきた。

      
            「∴天然水晶洞」が載る川上村ガイドマップ

      
                        「湯沼鉱泉」案内

      この地図には、元祖・甲武信鉱山探査の時に発見した看板にあった「大原平」の位置が表示
     してあり、標高や地形などから考えて、看板は正規の場所ではなく別な場所に移動された、と
     いう仮説が正しいことが立証された。

     ・ 長野県 元祖・『甲武信鉱山』 の鉱物
     ( Minerals from Original Kobushi Mine , Kawakami Village , Nagano Pref. )

      
               「大原平」の正しい位置

       【後日談】
       宿に着いた翌日だったかに社長にこのガイドマップを1部渡し、「∴天然水晶洞」と「大原平」が
      載っていることを伝えた。
       気になっている『銅坑』の位置は、昔社長が探索した範囲にはないようなので、その外側を探
      してみようと思う。

      遅れていた”隊長”も到着し全員そろったので、産地に向け出発だ。

 (3) 「希産鉱物産地」
       駅を出て清里方向に進む。まずはコンビニで飲み水などの調達だ。私はドーナツを食べ、
      煎れ立てのコーヒーを飲む。
       訪れたのは古い鉱山跡だ。私が山梨に転勤になったばかりの四半世紀も前に訪れたとき
      は「耐火煉瓦」原料を採掘する現役の鉱山だったが今ではスッカリ藪に覆われている。露頭
      のあるところに落ちている「希産鉱物」を拾う。ここでは、「トパズ」が産出するという報告があ
      り、2014年S さんが採集した。”隊長”が採集した標本をルーペで見ると長さが2、3ミリ、
      縦に条線があり、これがこの産地の「トパズ」だ。おおぜいで探せば見つかるのだ。

         
                    採集風景                     「トパズ」を手にニッコリする”隊長”
                                   「希産鉱物」産地にて

 (4) 「クロム鉱山跡」を訪ねて
      ここは、2ケ月前の『2015年月遅れGWミネラル・ウオッチング』の2日目と『フォローアップ』で、
     おおぜいの石友を案内した場所だ。
      この地域には、第2次世界大戦中に蛇紋岩に伴う軍需鉱物のクロム鉄鉱を採掘した鉱山が
     あった。その選鉱場跡や露天掘り跡で希に『宝石級の灰クロム柘榴石」が採集できるので案
     内した。
      ズリの表面観察とズリ石をフルイやパンニング皿に入れて川まで運んで洗って探すグループに
     分かれて採集だ。

         
                 ズリ派                              水洗い派
                           「灰クロムざくろ石」産地にて

      この日は雲が厚く、日中でも薄暗くコンディションは良くなかったが、眼が慣れるに従い、全員
     が採集できた。
      川の冷たい水に冷やしておいたMH農園のスイカを切り分けていただき、引き上げだ。

      
                     スイカを食べる

 (5) 「湯沼鉱泉」の夜は更けて
      「18時過ぎに到着」と湯沼鉱泉に電話しておいたのだが、私の巡航速度の半分しかスピー
     ドを出さない慎重な運転の車があったり、「ナナーズ」で買い物したりで宿に着いたのは19時を
     回っていた。
      すでにBBQの用意はできていて、炭火が消えかかっていた。あわてて火おこしにかかるが勢い
     が今ひとつで、団扇(うちわ)で扇ぐと火勢が強まるのだが、止めると弱くなり、交代交代で扇ぎ
     ながらのBBQだ。
       それでも、お姐さんが準備してくれた肉、野菜は炭火で焼くと一段と美味しくなり、白いおに
      ぎりも焼いて食べると香ばしくて懐かしい味だ。
       BBQが終わったのは21時半で、この日は皆さんお疲れなので、これで解散とした。

3. 第2日目【あこがれの甲武信鉱山】

    2日目は、幹事役のSさんから「ミニツイン坑に行きたい人が多いので是非コースに入れて欲しい」
   と頼まれていた。

 (1) 「磁鉄鉱」産地
      朝起きると夜中に降っていた雨は止んで、薄日が差し始めている。お姐さんから「MHがくると
     天気が良くなりますね」と言われ、社長からは「おめえさんは運がイイな」、と言われるのは、悪
     いがしない。

      朝食の後、宿を後にし、登山口に駐車し登りはじめる。第1テラスの湧き水にスイカを冷や
     して置くのはいつものことだ。
      あえぎながら第2テラスに到着。ここでは、「磁鉄鉱」や「ベスブ石」が採集できる。

         
                  到着した幹事・Sさん                      「磁鉄鉱」などを採集
                                     「第2テラス」にて

 (2) 「ベスブ石」産地
      こからジグザグに登ると露頭の下が「ベスブ石」の産地だ。今回は、希望者を露頭に案内す
     る。6月に、石友・Dさんが”ガマ(晶洞)”を開け、素晴らしいベスブ石を採集したので、その続
     きをと狙ったのだが、硬い露頭は生半可な装備や力では歯が立たない。

      
                 ベスブの露頭を叩くが・・・・・

      下のズリに戻ると、1センチを超える分離結晶を採集した人もいて、『古泉に水涸れず』

       【後日談】
       2日後に、兵庫の石友・N夫妻がここを訪れた。翌日、某産地に元小学生だった美女2人
      と家族を案内した時に偶然会うと、「学生たちがズリを”開墾”してくれた後、毎晩のように
      雨が降り、洗い出された「ベスブ石」が簡単に拾えた」、と感謝された。

 (3) 元祖・『松茸水晶」産地
      左上に登っていくと、目の前一面に開墾されたかのような風景が広がっている。ここが、元祖・
     『松茸水晶」産地だ。
      思い思いの場所に陣取って、ズリを掘り返す。

      
               「元祖・マツタケ水晶」産地にて

      学生の一人が拾い上げたのは、緑水晶の上に透明水晶の傘を被(かぶ)った、まぎれもない
     『松茸水晶』だ。さらに、女子学生が鑑定依頼で持ち込んだ平板水晶は、完全ではないが、
     『軍配型・日本式双晶』だ。このほか、1センチを超える大きくて結晶面が黒光りする「ざくろ石」
     を採集した人もいる。

         
               『松茸水晶』                    『軍配型・日本式双晶』

 (4) 「緑水晶」産地
      松茸水晶産地から真っすぐ上に150mほど登り、尾根に出て、尾根を50mも進むと「第2松茸
     水晶」産地だが、今では何も採れない。
      そこから急な尾根を70mも登ると「見晴らし台」だ。周りの木々が大きくなり、以前より眺望が
     悪くなってはいるが、晴れていれば梓川を挟んで見える五郎山(2,132m)などの頂きに近い
     高さまで登ったことを実感する。
      尾根を150mも進むと「緑水晶」産地だ。以前は、10m×10mほどの範囲が掘り込まれていた
     が、今ではその何倍も広い範囲が掘り返されている。
      思い思いの場所に散らばって、ズリの表面を観察したり、熊手で少し掘ると「緑水晶」が姿を
     見せるが、昔に比べるとその数は少ない。

      ここは、10年ほど前のミネラル・ウオッチングのとき、昼食の間に用足しに行った奈良・Aさん
     が発見し、その「緑水晶」のすばらしさに、食べかけのおにぎりを放り出して駆けつけた思い出
     のポイントだ。そんなわけで、『Aさんズリ』と呼んでいたが、今では「緑水晶」産地と呼ばれて
     いる。
      今回、Fさんが見つけたのは、7センチほどだが、「緑水晶」の素晴らしい逸品だった。

      
          「緑水晶」の逸品を手にするFさん

 (5) 「砒鉄鉱」産地
      ここから右上に登り、さらに直登すると「砒鉄鉱」産地だ。砒鉄鉱の自形結晶など見たこと
     のある学生はいないので、”フカヒレ状で表面は茶色”と説明してもイメージできないようだ。
      「論より証拠」と見本を探し出し、見てもらうが、「これは判らない」の声が上がる。それでも、
     ”隊長”が持ち込んだのは間違いなく砒鉄鉱で、4年生の貫録だ。
      結局、私がもう一つ見つけ、全部で3個しか採集できず、”絶産”も近いかも知れない。

 (6) 「ミニツイン(日本式双晶)坑」
      少し下って、右横に進むと「ミニツイン坑道」だ。かなりハードなコースだが、女子学生も頑張
     ってついてくる。坑道前に荷物を置いて、坑内で採集だ。

         
                  険しいルートを移動                             入坑
                                     「ミニツイン坑」にて

      坑内は真夏だというのに肌寒いほどだ。長袖シャツを着こんで入坑する。「ミニツイン」が採集
     できる範囲は狭いので、私だけが潜り込んで、残りの学生たちはミネラ・ライトで照らして光る
      「灰重石」を探してもらう。

      ミニツインも数が少なくなっている。少なくても学生一人1つは持ち帰ってもらうように、数を数
     えながら採集する。1時間余りかけて、15個ほど採集できたので、坑の外に出る。皆で分配し
     てもらい、下山だ。

 (7) 「第4松茸水晶」産地
       ここから斜め右下に向かって急な斜面を下りていく。もちろん道などない。ガスが出てきて
      見通しが悪くなってきた。すぐ後ろについてくる1年生のIさんは、「MH、本当にこのルートで
      大丈夫ですか?」、と不安げだ。20分ほど下ると、「第4松茸水晶」産地がある。時間は
      16時を回っているし、周りも薄暗いのでパスだ。

 (8) スイカを食べて
       登りと違うコースをとっている。尾根を下って行くと第2テラスと第1テラスの中ほどに出る。
      重い採集品を背にした皆さんの膝が笑っているようだ。第1テラスの沢水に浸したスイカが見
      えて、一安心だ。

         
                  第1テラスが目の前だ                      「スイカ」が見えた!!

      第1テラスでは、ほどよく冷えたスイカがまっていた。近くにあった石をまな板代わりにして切り
     分けみんなで食べる。
       スイカを食べ元気を取り戻すと、駐車場まではもう一息だ。こうして、無事に登山口に帰り
      ついたのは、17時を回っていた。
       明日の山行のための飲み水やビールを飲まない人のためにジュース類を地元の何でも屋
      「ヤマナカ」に寄って買う。

 (9) 「湯沼鉱泉」の夜は更けて
       18時ごろ湯沼鉱泉に戻ると、お姐さんが「夕食は19時30分です」、といつもより遅い。
      Kさんはいないうえに、レタス畑作業者の夕食の準備もあり、テンヤワンヤのようだ。
       風呂場に行くが、お湯の出が良くない。それでも汗を流してサッパリしてから夕食だ。

 (10) 「標本玉手箱」
      夕食の後は、私の部屋に来てもらい恒例の「玉手箱」だ。自宅の標本を整理して不要にな
     った標本を選んでもらう。
      選ぶのに時間がかかる学生も多く、2巡、3巡していると22時近くになり、これでお開きだ。

      「疲れている人もいるので、明日の朝食は8時にしてもらえませんか」、と幹事・Sさんから申し
     出があったが、「70歳の爺さんでも大丈夫なんだから」と予定通り7時にする。
      ( ミネラル・ウオッチングを始めて20年近くになるが、朝食は7時の決まりだ )

4. 第3日目【川上村の水晶産地】

 (1) 雨が降っている!!
      朝6時過ぎに起きると小雨が降っている。社長に天気予報を聞くと「9時ごろには止むんで
     ネエか」、というので一安心だ。まずは、朝食をいただき、お姐さんが作ってくれたお弁当を持っ
     て8時に「湯沼鉱泉」を出発だ。

 (2) 水晶産地を目指せ!!
      産地への入口にある駐車場に着くころには、雨は止んでいた。そこから林道を歩き、水たまり
     に、夏のミネラル・ウオッチングの定番 MH農園産のスイカを漬けた。途中のお社で”安全”そし
     て”ガマ開運”祈願だ。
      有名水晶産地への分岐点に差し掛かるころ、空は晴れ上がり、青空が見える。

      
                  晴れ上がった青空

      1時間半ほどの歩きで産地に着き、産状の説明をして、”ズリ”、”露頭”に分かれて採集開
     始だ。

      6月の『2015年月遅れGWミネラル・ウオッチング』で訪れたときは、叩けばガマ(晶洞)が開き
     そうなポイントがいくつかあったのだが、一面叩かれてしまい、叩く場所が見当たらない。それでも、
     永年の経験(?)と感(??)でポイントを絞り、その周りを叩きはじめる。

      
                  一面叩かれた産地

      叩いてもなかなか開かないガマを諦めて”ズリ派”に転向する人もいる。露頭を叩き続けると
     ”ガマ(晶洞)”が開いて、キレイな水晶が出てくる。私が採集したものは、新聞紙を広げた場
     所に並べて置いてもらい、後で皆さんに分配だ。
      お弁当を食べながらも頭の中は、”どこを掘るか”で一杯だ。昼からも今まで掘ったところを
     叩き続けるが脈は途切れてしまったようだ。やがて、私なら叩かないようなところを叩いていた
     4年生のWさんが、「出ました!!」、と10センチクラスの美晶を手にしている。
      ”応援”と称してその脈を叩かせてもらうとさらに大きな結晶が出る。こうして、新聞紙の上も
     標本で一杯だ。

      下山と決めていた15時に合わせ、14時30分で採集を切り上げ、採集品の分配だ。私が
     欲しいと思っていた最初に開けたガマの天井を覆っていたゲス板についた「赤鉄鉱」は1年生が
     既に取っていた。

         
                     採集品の分配を待つ                       「赤鉄鉱」

      引き取り手のない群晶、単晶は私が持ち帰り塩酸できれいにクリーニングして、9月〜10月
     に湯沼鉱泉「水晶洞」を案内する何組かの小中学生の”サプライズ”に使わせてもらうことに
     した。

 (3) スイカを食べて
      林道に戻り、行きしなに沢水に漬けておいたスイカを引き揚げ、切り分けて皆さんに食べて
     いただいた。皆さんから、「美味しい!!」との評価で、今年のスイカもまずまずの出来だった。

      
                真っ赤に熟したスイカ

 (4) 湯沼鉱泉「水晶洞」見学
      湯沼鉱泉に無事戻ったのは、17時ごろだった。この日の夕食は19時からなので、タップリ時
     間がある。
      その間に「水晶洞」の見学ツアーだ。

      1時間以上かけ、「水晶洞」の見どころのである @ 「自然のままの緑水晶日本式双晶露
     頭」  A 穴沢(赤顔山)の扁平苦土電気石や川端下の日本式双晶と柱石など日本を代
     表する「川上村の鉱物」を解説した。
      帰りは、「春GWのころ咲き誇る水芭蕉の遊歩道」や「7月中旬にはホタルが乱舞する湯沼
     大池」などを見て回った。

      見学した学生たちから、「社長はすごいもの(施設)を作った」とか「標本が素晴らしい」
     などの感想を聞き、社長も満更ではなさそうだった。

 (5) 湯沼鉱泉の夜は更けて
      風呂を浴びて、19時から夕食だ。この日は、「豚肉の鍋」で、冷えた体が温まる。隣に座っ
     た女子学生・Wさんは、私と同じ市の出身で、中学の後輩だとわかった。世界は狭い。

      この日は、歩く距離が長く、私の万歩計は14,871歩を示していた。皆さんお疲れのようなの
     で、早めに散会とした。

5. 第4日目【きれいなザクロ石産地】

 (1) 「湯沼鉱泉」、また来る日まで
      朝6時過ぎに起きると、空は快晴だ。しかし、肌寒い。気づくと、ストーブに火が点いている。

      朝食を食べ終わり、支払いだ。お姐さんの配慮で学生は少し安くしてくれていた。ビール代
     を私が負担したこともあって、学生は3泊4日(全て3食付き)で 18,000円だった。

      出発の朝、恒例になっている社長とお姐さんを交えて記念写真だ。

      
                       「湯沼鉱泉」記念写真

      3台の車の集合場所をカーナビで「霧ヶ峰自然保護センター」にセットし、出発だ。

 (2) 「霧ヶ峰自然保護センター」見学
      諏訪ICで下り、コンビニで昼食や飲み物を調達し、集合場所を目指す。私の車が到着して
     しばらくすると全台揃った。センターは入場無料で、内部には動植物そして少しだが地学展示
     として、この地域の「ざくろ石」、「黒曜石」そして「鉄平石」などが展示してあり、みなさんの期
     待も高まる。

         
                       外観                               地学展示コーナー
                                    「霧ヶ峰自然保護センター」

 (3) 母岩付ききれいな柘榴石
      まずは、母岩付きのきれな柘榴石の採集だ。ここは、すでに何年か前のミネラル・ウオ
     ッチングで石友の皆さんを案内した場所だ。
      以前探しておいた脈を追い掛けると、5mmクラスの母岩付ききれいな柘榴石が出てく
     る。何とか人数分確保し、いつものように分配だ。ちょうどお昼時になり、みんなで昼食をいた
     だく。

 (4) きれいな柘榴石分離結晶
      この後、分離結晶を採集できる沢に向かった。ここは、新たに開拓した規制対象外の場所
     で、フルイやパンニング皿を使って採集する。ポチポチと皆さんきれいな柘榴石を手にしている
     ようだ。

      
                  パンニングで分離結晶採集

       この日は、15時30分に集合したと同じ「佐久平」駅に行くため、スイカを食べて13時30分
     に撤収だ。
      曲がりくねった峠道を下り、少し走ると「道の駅」があり、ここでトイレ休憩だ。売店をのぞくと
     この地域で有名な黒曜石が売られている。高いものには5,000円を超える値段がついている
     のには、皆さん」”ビックリ”だ。

      
                 売られている「黒曜石」

 (5) 「また逢う日まで」
      この後、渋滞もなく順調に車は進み、予定通り15時30分に「佐久平」駅に到着した。こう
     して、4日間のT大学地学ゼミのミネラル・ウオッチングは無事終了した。
      今年は、1年生が多かったこともあり、来年もまたお会いできそうだ。

6. おわりに

 6.1 巡検案内
      最近のMineralhuntersは、ボランティアとして小学生から大学生、そして社会人まで、老若の
     善男・善女をフィールドに案内するのがミネラル・ウオッチングのメインになりつつある。
      9月、10月には恒例の学校行事となった小中学生を案内して、回る予定だ。
      そんなわけで今回持ち帰った自分用の標本もごくわずかで、人が欲しがるようなものは少な
     いだろう。

      いつも、できるだけ発見されて間もない新しい産地を案内したいという思いをもっているが、
     なかなかそのような産地を探すのは難しいのが現実だ。それでも、湯沼鉱泉社長やその関係
     者、そして石友のお蔭げで、再発見を含めて新しい産地を毎回のようにコースに組み込むこと
     ができ、参加者に少しは”美味しい思い”をしていただいている。

      涼しくなってきたので、そろそろ、秋のミネラル・ウオッチングのコースを決めたいと思い、湯沼
     鉱泉の社長と候補地を下見して回ろうと思っている。

7. 参考文献

 1) 草下 英明:鉱物採集フィールドガイド,草思社,1988年
 2) クリスタル・ワールド編:主なパワーストーンの一覧表,同社,2013年
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