岐阜県中津川鉱物博物館「田上(たなかみ)地方の鉱物展」

岐阜県中津川鉱物博物館「田上(たなかみ)地方の鉱物展」

1.初めに

2002年の夏は、7月の蛭川・中津川・愛知県での採集会の下見やフォローアップで
蛭川や中津川を何回か訪れた。
HPにも掲載したように、8月の酷暑の一日、「後山」でペグマタイト鉱物を探したが
何も採れず、ガッカリして帰途に着き、中津川のコンビに入ったところ
中津川鉱物博物館で「田上(たなかみ)地方の鉱物展」が開催されるとの
予告ポスターが出ていた。
開催日初日がいつかは忘れたが、最終日が11月24日(日曜日)なことだけは覚えて
いた。
結婚記念の月の、京都紅葉観光・奈良鉱物採集旅行の初日は21日の京都・東寺の
骨董市、最終日は、24日に中津川鉱物博物館を観覧する予定にしていた。
中津川鉱物博物館で開催していた「田上地方の鉱物展」の最終日に間に合い
中澤晶洞からでたトパーズ初め、素晴らしいペグマタイト鉱物を目の当たりにして
「いつか晶洞を開けるぞ!」とファイトを燃やした。
(2002年11月訪問)

2.場所

中津川市夜明けの森 高峰湖の北側にあり、鉱物の結晶をイメージした四角錐
ガラス張りのエントランスが印象的です。
中津川市鉱物博物館

3.展示内容

3.1 常設展示
(1)日本の3大ペグマタイト鉱物産地である苗木地方の鉱物
(2)希元素鉱物の研究で著名な長島コレクション
長島父子の展示コーナ
(3)世界の鉱物
があり、手で触れたりできるコーナ、紫外線での蛍光実験など岩石や鉱物を
より身近に感じる工夫もなされています。

3.2 企画展「田上(たなかみ)地方の鉱物展」
博物館の第6回企画展で、サブタイトルに「日本のペグマタイト産地 その1」と
あることからも分かるように、福島県石川、博物館のある岐阜県苗木地方と並び
日本3大ペグマタイト産地の1つといわれる滋賀県田上山の鉱物を展示したものです。
なかでも、滋賀県大津市在住の中澤和雄氏が発見した、いわゆる「中澤晶洞」産の
ペグマタイト鉱物を中心に田上地方の歴史・地質そして産出鉱物を展示していました。
(1)田上山の位置と歴史
田上山は大津市の南から信楽町に至る山地の総称で、400〜600m級の山々から
なり、琵琶湖の南部にあることから、「湖南アルプス」と呼ばれている。
これらの山々は、東海道新幹線の車窓からも眺められ、関西への出張の往来に
何度も見た山々です。
この地域は、田上花崗岩体という、花崗岩からなる山地で、その晶洞部分にトパーズを
初めとするペグマタイト鉱物が産出する。
田上花崗岩体【図録より引用】
ここは、千数百年前まで、桧、樫、杉などの大木が生い茂る森林地帯であったが
奈良、大津の宮殿や寺院の建築用材を切出し、その後に植林しなかったため
風化した花崗岩が剥き出しになり、江戸時代以降、大雨のたびに河川が氾濫した。
明治時代になり、オランダから技師を招き、本格的な砂防工事に取り組みはじめ
日本の砂防工事の原点とも言われています。
(2)中澤晶洞
国見岳近くの山腹にあり、奥行き6.5m、最大幅1.6mという巨大な晶洞で
中澤氏が1974年に発見したものです。
中澤晶洞【図録より引用】
(3)展示内訳
今回展示されていた岩石・鉱物・書籍は下記の通りです。
煙水晶      15点
緑色水晶      1点
カリ長石      5点
曹長石       5点
トパーズ     11点
チンワルド雲母  17点
益富雲母      4点
希元素鉱物    32点
花崗岩       2点
書籍「日本鉱物誌」 1点
合計       74点
(1つの標本で複数の鉱物からなるものがあるため、上の点数合計と合わない。)
これらの内、中澤晶洞から産出したものが57点あり、今回の展示の中核をなして
おり、いかに大きな晶洞であっか、理解できます。
田上地方の鉱物展示

4.おわりに

(1)この日が最終日にもかかわらず、見学者は私達夫婦だけで、貸切状態でした。
今回見逃した人は、博物館で販売している展示目録で展示内容を知ることが
できます。
(2)ここには、「日本鉱物誌」などの鉱物関係の古書や「地学研究」のバクナンバー
などを常備しており、希望する部分のコピー・サービスもしてくれるとの事。
今私が作成している「産地情報索引」の元データに活用しようと考えています。
(3)中澤さんは忘れておられると思いますが、私が中澤さんにお会いしたのは
平成元年の4月末の黒平だったと思います。
当時小学生だった次男と3男を連れ、御岳五郎沢に鉱物採集に行ったところ
中澤さんともう一人が、何日か黒平に泊り込みで採集に来ておられ、名刺を頂いた。
(この名刺は、私のフィールド・ノートに貼り付けてあります。)
このとき、中澤さんがガレの最上部でガマから採集したばかりの電気石がついた水晶を
見せくれ、堰堤で採集したという小さな塊状のトパーズを子ども達が頂きました。
この展示を見ながら、そんなことを、懐かしく思い出しました。

5.参考文献

1)中津川鉱物博物館:第6回企画展 図録 田上地方の鉱物,同館,2002年
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