しかし、「日本希元素鉱物」に産出すると書かれている「ゼノタイム」だけが見つ
これで、山梨県の代表的鉱物産地の1つ「竹日向」を卒業できそうです。
『 山梨竹日向や長野田立産も球状であるが小さい 』
「日本希元素鉱物」にある通り小さなものなので、産地で気付くのは難しいと
竹日向のゼノタイムは、ガドリン石の近傍に、理想的な「錐状結晶」と
(2) ”球状ゼノタイム”と書いたが、ゼノタイムと平行連晶をなすのは”ジルコン”なので
(3) ここ10年、各種の鉱物解説書や採集案内書が巷に溢れているが
からず、「竹日向」の”卒業” はお預け、かと思っていた。
竹日向の標本の重品を皆さんとご一緒するミネラルウオッチングの「標本
玉手箱」に提供したり、希元素鉱物に関心のある数少ない石友に贈るべく
整理を始めた。
4cmあまりのペグマタイト塊の長石部分に付いたガドリン石を実体顕微鏡で
見ていると、その近くに赤褐色錐状の典型的なゼノタイムと灰白色・放射状の
破面を示す球状の”ゼノタイム”があるではないか。
( 2003年4月採集、2006年2月再訪、2006年3月観察 )
2. 産地
すでに、何回か紹介していますので、割愛します。
3. 産状と採集方法
ゼノタイムの産状について、長島乙吉、弘三親子による「日本希元素鉱物」の
「福島県川辺」の項に、次のように書かれている。これが採集のヒントでした。
思われる。ガドリン石と共生することが多いようなので、ペグマタイト塊を持ち
帰って、ジックリ観察するのが良いでしょう。
4. 産出鉱物
(1)ゼノタイム【Xenotime-(Y):YPO4】
ゼノタイムは、イットリウム(Y)を含む燐酸塩鉱物で、赤褐色錐状結晶で
産出するほか、「福島県川辺鉱山」などのように、球状集合体で産する。
ゼノタイムは、しばしばジルコンと密接に伴って産し、結晶は両者とも正方
晶系で似ている(原子価の和:((Zr+Si)と(Y+P)は共に8で等しい)、にも
かかわらず、混晶(固溶体)はつくらず、平行連晶をなすだけである。
代表的な結晶図を下に示す。
錐状単晶 ジルコンとの平行連晶
結晶図
「放射状の断面を示す針状結晶の球状集合体」の2通りで産する。
下の右側の拡大写真を見ると放射状の針状結晶が、錐状結晶を
貫通してのが確認できる。
ガドリン石と共生 平行連晶【結晶軸が同一方向】
竹日向産ゼノタイム
5. おわりに
(1) 「日本希元素鉱物」にある竹日向の「ゼノタイム」を採集でき、山梨県の代表的な
鉱物産地の1つ「竹日向」を卒業できそうである。
放射状の針状鉱物はジルコンか変種ジルコンという懸念も拭い去れた訳では
ない。
このあたりが、希元素鉱物の難しさでもあり、面白さでもある。
こと「希元素鉱物」に関するものは皆無と言ってよいのではないだろうか。
それだけ、この分野は難しく、専門家と呼ばれる人たちも安易に手出しが
できないのかもしれない。
( 伊藤先生・櫻井先生共著の「日本鉱物誌 上巻(第3版)」に「珪酸塩鉱物」が
欠落(まとめ切れなかった?) しているのを、ついつい想起してしまう )
逆にいえば、”甘茶”の長島乙吉先生が、自らのハンマーというよりは”塗り椀の
ふた”とルーペだけを武器に、「日本希元素鉱物」をまとめ上げた、その努力は
並々ならぬものがあったと、今更ながら畏敬の念を覚える。
6. 参考文献
1)長島 乙吉・弘三:日本希元素鉱物,日本砿物趣味の会,1960年
2)戸崎 龍彦:迷走ガドリン石 「水晶峠」No124 ,関東鉱物同好会,2005年
3)益富地学会館監修:日本の鉱物,成美堂出版,1994年
4)中津川鉱物博物館編:第4回企画展 長島鉱物コレクション展
−希元素鉱物への探求−,同館,2000年
5)松原 聰:日本産鉱物種,鉱物情報,2002年
6)松原 聰:日本の鉱物,学習研究社,2003年
7)地学事典編集員会編:地学事典,平凡社、昭和45年
8)伊藤 貞市・桜井 欽一:日本鉱物誌 上巻(第3版),中文館書店,昭和22年