『 採集会実施後の産地の状況を視察するため、(1999年)9月26日にK氏の案内で
大正鉱山に行ってきた。・・・・・・・・・・。ところが、肝心の錫石は全く見当たらず
ほぼ採集し尽くされてしまった様子だった 』
この情報を読み、2000年1月5日に行ったが全く採集できず、諦めきれず2月26日に
再度訪れ、1時間余りで母岩付き標本を5ケ採集できた。
それから、何回か石友を案内して訪れ、その度ごとに産出を確認でき、中には
数ミリの結晶が一面についた佳品を採集した方もいた。このとき私は、ズリの土
砂をパニンングして”分離結晶”を確認したこともあった。
今回もズリで、『母岩付き錫石』の佳品と『加水錫石(バルラモフ石)』などを
確認できた。
産地は、今でも健在である。
千葉県の石友・Mさんが、私のHPの解析をしてくれた結果、次の通りである。
項目 | 数値 | 備 考 | HPの数 | 633ページ | 2006年12月末まで | 記述鉱物名 | 214種 | 亜種・俗名、重複を除く |
Mさんには、鉱物の記載方法もアドバイスいただいたので、それを参考にさせて
いただき、HPの拡充を図りたい。
( 2000年1月初訪山、2006年1月採集、2007年1月再訪、2007年2月追加修正)
採集に当たっては、まず石英脈のついているズリ石を探す。表面は採り尽されてく
おり、ズリを掘って探すと良品を発見できる可能性が高い。また、石英の表面は
褐鉄鉱に覆われていることも多いので、慎重に探す必要がある。
今回、真鍮ブラシ(100円)を持参した。黒土や粘土が付着した石英脈がきている
ズリ石表面を擦ると、新鮮、自形結晶をした写真のような標本を採集できた。
石英脈を脈に沿って割ってみると、脈の空隙に錫石の結晶を発見できることも
あるが良品は期待できない。
砂鉱として産出するとあるので、2005年夏に開眼した(?)パンニングにも挑戦した。
ズリの土砂を買い物ビニール袋に入れて駐車スペース近くの道路脇を流れる小川で
パンニングを試み、分離結晶を採集したこともあった。
( 買い物袋1つの土砂から、約1グラムの砂錫 )
(2)加水錫石/バルラモフ石【varlamoffite:(Sn,Fe3+)(O,OH)2】
別名、バルラモフ石と呼ばれる。錫石の表面や隙間を覆うように黄褐色の
皮膜状〜土状で産する。
化学式が水酸基(OH)を2つ含む錫石(SnO2)であるところから、”加水”と
呼ばれるらしい。
錫に含まれる鉄起因の「褐鉄鉱(針鉄鉱)」と紛らわしいが、褐鉄鉱は緻
密でガラス質の部分を持っていることが多いのに対し、加水錫石は、”茶褐
色をした絹雲母”のようである。針先で突っつくと、ポロポロと剥がれ落ち
る。
加水錫石は、1970年に京都府行者山で発見された国内では比較的新しい鉱
物で、大正鉱山や高取鉱山での産出は今まで聞いたことがなかった。
(3)白雲母【MUSCOVITE:KAl2(AlSi3)O10(OH)2】
葉片状集合体が球状をなし加水錫石(バルラモフ石)の上や水晶の間に
産する。
このほか、「水晶」が採集できるが透明度は高いものの、如何せん小さな
ものである。頭つき水晶が母岩一面に生えているものは標本に加えても良い
かな、と思わせる。
都道府県名 (鉱山数ゼロは省略) | 鉱山の数 | 代表的な鉱山【産状】 | 北海道 | 2 | 寿都(すっつ) | 茨城 | 2 | 高取・大正 | 栃木 | 2 | 足尾 | 新潟 | 1 | 岩船【針状結晶】 | 岐阜 | 4 | 恵比寿・高根・苗木【砂錫】 | 滋賀 | 1 | 田ノ上 | 京都 | 3 | 大谷・鐘打 | 兵庫 | 2 | 明延・生野 | 山口 | 3 | 玖珂・喜和田・藤ケ谷 | 大分 | 5 | 木浦・尾平 | 宮崎 | 5 | 男錫(おすず)・土呂久・見立 | 鹿児島 | 9 | 錫山(谷山)・垂水(たるみ)・屋久島仁田 |
(2) 大正鉱山は、東北、関東方面で錫石が採集できる数少ない鉱山跡の1つであり
大切にしたい。
私のHPの愛読者・Fさんは同じ日に大正鉱山を訪れ、錫石の良品を採集したと
写真つきメールを送っていただいた。( すれ違いだった )
『 まだまだ良品が眠っている印象を持った 』 とあった。
(3) 私のHPを見た人から、高取鉱山近くにあった「岩谷鉱山」の位置を聞かれた
ことがあった。大正鉱山一帯が「岩谷国有林」となっていることからも解るように
岩谷鉱山は、大正鉱山の北隣にあった。
数年前に探索したことがあったが、小さな硫化鉱物を見つけただけであった。
(4) Mさんから、鉱物を記述するとき、俗名・和名・英語名(全大文字、俗名は
全小文字)・化学式で記述するようアドバイスいただき、このページからそれ
にならう事にした。
『 加水錫石 』で、早速つまずいてしまった。
参考文献2)3)には、和名:加水錫石、英語名:VARLAMOFFITE とあるが
一番最近出版された 4)には、両方とも記載がない。
これは、『加水錫石(varlamoffite)』は国内では産出しない、ということ
意味しているのだろうか。それとも、4)の記載漏れなのだろうか?
<<追加情報>>
千葉県の石友・Mさんから『 加水錫石は、IMAが正式な鉱物種として認めて
いないようだ。錫石の亜種に含めているらしい 』、との情報をいただいた。
早速、鉱物の英語名を小文字にするなど、変更した。