愛知県設楽町田口鉱山のパイロクスマンガン鉱

愛知県設楽町田口鉱山のパイロクスマンガン鉱

1.初めに

加藤・松原・野村先生共著の「鉱物採集の旅-東海地方をたずねて-」に
「愛知県奥三河の田口鉱山と粟代鉱山」の章があり、田口鉱山の名を
全国的に有名にした”吉村石”と”パイロクスマンガン鉱”が紹介して
あります。
パイロクスマンガン鉱は、ルビーを思わせる真紅の半透明結晶で産し
マンガン愛好家は無論、鉱物愛好家なら一度は採集してみたい鉱物の1つだと
思います。
今回、妻と一緒に鉱物採集会の下見で訪れ、妻が19mmの結晶をズリで拾い
私は坑道内でパイロクスマンガン鉱(通称:パイマン)を含むバラ輝石の脈を叩き
母岩付を採集した。
林道から歩いて10分くらいで、広いズリが残されており、女性や子ども連れでも
”宝探し”感覚で楽しめる産地です。
(2002年7月採集)

2.産地

田口の市街から津具に向かっ走ると「八橋」の集落があり、左に入る林道
「大野線」がある。
林道「大野線」入口
林道(ほとんどの部分が舗装してある)を約3.5km行くと道路右側に
5台以上駐車できるスペースがあり、ここに駐車する。
駐車スペースの中央山際に境界を示すコンクリート杭があり、ここから杉林の中に
緩やかに下る山道が続いている。
間伐が済んだ明るい杉林を抜け、途中3本の沢を渡り、駐車した場所から約500m
行くと右手に田口鉱山のズリが広がっている。

左:田口鉱山ズリ        右:坑道入口

3.産状と採集方法

田口鉱山は、変成作用を受けた層状マンガン鉱床で、あちこちに坑道とズリが
残っています。
ここでの採集は次のいずれかです。
(1)ズリの表面採集でパイマンを狙う。
(2)ズリを掘り返し、ズリ石をひたすら割って”吉村石”などを探す。
(3)坑道内でパイマンを含むバラ輝石の脈を叩き母岩付を採集する。
自分の採集スタイルで選べば良いでしょう。
私は、母岩付きを求めて、坑道の中での採集を選びました。坑道の中は、明かり取りの
縦坑が埋まり、”漆黒の闇”です。
田口鉱山の坑道内
母岩が石英片岩主体の堅固な坑道ですので、崩落の恐れは少ないと思われます。
水平に10mも進むといきなりマンガン鉱体を掘り去った跡が巨大な斜坑に
なっており、約30m下が底で、その途中からありの巣のように坑道が広がって
います。
まずパイマンの脈を見つけるのが大仕事で、強靭なマンガン鉱を掻き採るのが
更に大仕事です。
今回、兵庫県のT氏が昔掘ったあたりを攻めて、パイマンの脈を見つけました。
パイマンの脈

4.産出鉱物

(1)パイロクスマンガン鉱【Pyroxmanganite:(Mn,Fe)7Si7O21】
濃い褐色をしたペンウィス石を伴い産します。バラ輝石とパイロクスマンガン鉱は
肉眼での判別は不可能とされています。
@きれいな紅色をした大きな結晶
Aやや紫色を帯びた紅色の細かい結晶の集まり
は、パイロクスマンガン鉱です。

左:分離結晶【19mm】      右:母岩付き
      田口鉱山産パイロクスマンガン鉱

5.おわりに

(1)このほか、吉村石を初めとする各種のマンガン鉱物が採集できますが
今回は限られた時間でたくさんの産地を回る下見と言うこともあり短時間で
パイマンだけを狙いました。
(2)ズリでも坑道内でもパイマンが採集できます。
ズリでの採集の成果は、”運次第”、坑道内での採集では、”努力次第”です。
(3)坑道内の気温は体感温度で20℃位で、外の酷暑を忘れさせてくれる至福の
ひと時を過ごすことができました。
(4)次回は、ジックリと”吉村石”を狙ってみようと思います。

6.参考文献

1)加藤昭、松原聡、野村松光共著:鉱物採集の旅-東海地方をたずねて-,築地書館,1982年
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