『 小学生の男の子二人(5年&2年)の夏休みの自由研究のテーマに、子供たちは
東京近郊で、小五小二の男児がチャレンジできそうな場所、コース、施設、機関など
もし、お知恵をお貸しいただければと思いまして、不躾で申し訳ございませんが、とり
二人そろって「石(鉱物)を調べる」を掲げ(弟は兄を真似したようで、兄弟げんかして
おりますが)、門外漢の私は困って、ネットで検索しておりました。
まずは、鉱物博物館(東京ですと、国立博物館やこども鉱物館)に連れて行こうと
思っておりますが、機会があれば、鉱物採集の体験がしたいのです。
がありますでしょうか。なにせ、素人が行って、できることなのか……。
いそぎ、メールでお尋ねする次第であります。 』
そこで、夏休みに入ってから、小学生でも無理のない、山梨県の水晶産地を案内するこ
とにした。
8月初旬、Mさん一家4人をJR塩山駅に出迎え、私のワンボックスカーに乗って、駐車場
を目指した。曲がりくねった林道を走ると、長男・T君が車に酔い、分校跡のトイレで休憩し
た。
標高1,800mの登山道を歩き始めるとT君の体調も回復し、川に横たわる丸太を橋代わり
にして、みんなフィールド・アスレチック気分で無事渡り終えた。
「水晶鉱山跡」に到着すると、一面に散らばる石英を見て『水晶だ!!』の歓声が
上がった。ここで、昼食をいただいた後、別な産地に移動した。
そこで採集を開始すると『山入りがあった!!』、『緑水晶があった!!』、と歓声が
響いた。
私の持論の1つに、『鉱物採集は、水晶に始まり、水晶に終わる』がある。
嬉々として水晶を探す小学生と両親を見ていて、その感を一層深くした。
T君、I君が鉱物を通して、自然を大切にする心を養ってくれることを祈っている。
( 2009年8月実施 )
林道を登って行く。曲がりくねった林道なので、長男・T君が気分が悪くなって、吐いて
しまった。次男・I君は、元気そのもの。
前方の山々には中腹まで、雲がかかっていたが、私たちが駐車場に近づくにつれ
青空も見えてきた。
分校跡でトイレ休憩し、駐車場に到着したのは予定通り10時だった。
(2) 難所を越えて
産地への道は、下り→平坦→下り→川渡り→緩やかな登り、で”行きは良いヨイ”
のコースだ。
一面の緑の中を歩き始めると、T君の体調も回復し、元気が出てきた。
このコースの難所は渡河だ。この季節でも、水温は10℃以下で、落ちてズブ濡れに
なったら”風邪”だけでは済まないかもしれない。
私が先に渡り『見本』を示し、注意事項を伝える。怖がることもなく、次々と身軽に
渡りきり、一安心。ここで、小休止。水に手を入れ、あまりの冷たさの切れるような痛さ
を感じているI君だった。
ここで、私は一仕事。中川農園のスイカを沢水に浸して冷やしておくのだ。
(3) 「水晶鉱山跡」で水晶探し
枯れ沢を2つ横切ると遠くから、”真っ白い水晶(石英)片”が一面に散らばる、
「水晶鉱山跡」が見えてくる。
こどもたちが、『 水晶だ!!』、と歓声を上げる。荷物を降ろし、思い思いの場所に
陣取って採集を始める。
すぐに、『水晶があった!!』の声が上がる。結晶面がいくつか見えるものでも
大喜びだ。六角柱状で錐面もついた完全なものを探すように教える。
「武石」が採集できることも話し、見本を差し上げる。
お母さんも、小さいながらガラスのように綺麗な水晶を手にして、喜んでいる。
ここで、お昼をいただき、このズリの元になっている坑道を外から見学した。
この日の産地は、大賑わいで、私たちの外、少なくとも3グループがいたようだ。
(2) 「山入り」そして「緑水晶」
採集ポイントに移動し、半径50mの範囲に散らばり、思い思いの場所で水晶を拾って
いる。ここでの目玉は、@ 山入り A 緑 B 黄鉄鉱入り だと説明する。
山入り水晶のサンプルを皆さんに見てもらって間もなく、お母さんから、『山入り水晶が
あった!!』、と喜びの声が上がった。
次々と、「山入り水晶」が見つかる。お父さんも、透明な山入りを自力採集しニコニコし
ている。
やがて、T君が「緑山入り水晶」を発見。大切に新聞紙に包んで持ち帰るようにする。
(3) 帰りはコワイ
皆さん産地を離れがたい思いが強いようだったが、”ポツポツ”と雨が降り出したし、
帰りの電車の時間もあり、14時過ぎに産地を後にした。
帰りは、来たときと違うコースで、急坂を下りる。最初、お母さんは尻込み気味だった
が、次男・I君は”ケロリ”としている。
(4) スイカを食べて元気回復
行きしなに沢水に浸しておいたスイカは、野生動物に食べられることなく、食べごろ
に冷えていた。
持参したナイフで切り分け、塩を振りかけて食べると、ジューシィな甘さが口一杯に
広がり、疲れが吹き飛んだ。
(5) 駐車場に無事到着
川を渡り、急な登り→平坦→そして急な登り、を乗り越えて、駐車場に着いたのは、
15:30で、JR塩山駅に着いたのは、16:40だった。
名残惜しいが、Mさん一家とお別れの挨拶をして、私も帰路についた。
鉱物種名 俗名 【英名:組成】 | 産 状 | 標 本 写 真 | 説 明 | 石英 水晶 【QUARTZ :SiO2】 | 柘榴石入り |
|
山入り水晶の山の 表面に、透明、暗赤色、粒状の 鉄礬柘榴石結晶の集合がある。
ここでの「鉄礬柘榴石」の |
2重構造 |
最初にできた水晶の上を しばらく時間を置いて後から できた水晶が覆い、2重 構造になっている。
これが、山入り水晶の正体
この標本は、1層目と |
山入り |
山入り水晶の1例
”山”というより、”雲”か |
このように、小さな子どもから大人までが楽しめる産地は、いつまでも大切にしたいも
のだ。
(2) お母さんからの次のようなお礼のメールをいただき、T君、I君にとって良い経験になっ
たようだ。
『 家族全員初めての水晶取りでしたが、お蔭様で怪我もなく素晴らしい体験ができ
ました。
たまたまHPを拝見して不躾にお尋ねしたばかりでしたのに、朝から車をお出し
いただき、山道をご案内いただき、水晶についていろんなことをお教えいただき、
ほぼ一日たっぷりお付き合いいただいて、感謝感激でした。何から何まで本当に
どうもありがとうございました。
昨日早速子供たちは水晶磨きをして、自分の宝物自慢をしておりました。とっても
楽しかったようで、川で冷えたスイカがおいしかったことなども日記に書いておりま
した。 』
今回のミネラル・ウオッチングがこどもたちの良い思い出になり、いつまでも鉱物を
通じて自然に愛着を持ってくれることを祈っている。
(3) 今回のように、小学生など、鉱物に興味を持ち始めた人々を産地に案内する依頼が
ここのところ毎週のようにあり、都合が付く範囲で対応させていただいている。
これも、私の”余生の生かし方”の1つだと考えている。