山梨県水晶峠の緑水晶 その2

        山梨県水晶峠の緑水晶 その2

1. 初めに

   長野県の石友・Yさんから、『水晶峠に行ってみたいので、案内して欲しい』 と頼ま
  れた。Yさんには、私や私の石友がいつもお世話になっているので、2つ返事でOKし
  た。
   甲武信鉱山で、各種鉱物を採集し、湯沼鉱泉に宿泊した翌日、湯沼鉱泉社長、Yさん
  そして私の3人で水晶峠を訪れた。

   長野県川上村から大弛峠を越える長野県側の道路は整備されたとは言え、悪路で
  30km足らずを1時間かかってしまった。6月だと言うのに、峠周辺の路肩には吹き溜
  まった雪が残り、春まだ浅いことを知らされた。

   山梨県側は全面舗装された「クリスタル・ライン」で、見違えるような観光道路に変身
  している。

   いつも皆さんを案内するルートを通り、「ばったり鉱山跡(?)」で「武石」の良品を採
  集した後、「水晶峠」で記念撮影。

    「水晶峠」標識前で
  

   Yさんの希望で、先ずは大きな「山入り水晶」の採れる(採れた?)ポイントで採集を
  始めた。ズリの表面を見回っていたYさんが「緑水晶があった」と差し出したのは、3cm
  近い、”品のある緑水晶”だった。ズリを少し掘ってみると鮮緑色〜枯れススキ色まで
  各種の「山入り緑水晶」が採集できた。
   ポイントを移すと「緑簾石」と思われるインクルージョンが入った透明度の高い水晶が
  出た。
   社長は、産地全体を観察しながら、10kg近い群晶を発見し、一足先に下山した。

   Yさんにとって初めての訪山なので、自分が採集した標本がどのレベルなのか分から
  ない、とのことだが、『 良いもの 』 である。

   私はほぼ1年ぶりの訪山で、この日も他に2人組がいるなど、おおぜいの人々が入っ
  ている様子だが、まだまだ楽しめそうなで、ここも次回のミネラルウオッチングの候補地
  の1つである。
  ( 2007年6月採集 )

2. 産地

   以前の「水晶峠採集会」のページに詳しく掲載してあるので、詳細は割愛する。
  荒川を渡るポイントには、簡易の橋が掛けられており、「丸木橋」を渡るよりも近道
  だが、落ちるとずぶ濡れになりそうなので、お勧めできない。

    荒川の仮橋
  

3. 産状と採集方法

   黒平の古老に聞くと、水晶峠では、マサ化した花崗岩に挟まれたペグマタイト脈の
  晶洞から水晶を掘ったらしい。
   窪地になって落ち葉が積もっている場所が昔の採掘跡で、その周辺に石英のカケ
  ラが散乱している。

    産地【白いところがズリ】
  

   ここでの採集は、雨上がりなどには、表面採集でもそこそこの標本が期待でき、ズ
  リを掘っても面白い。危険な場所が少なく、手軽に採集できるので、女性や子供向き
  の産地である。

4. 産出鉱物

   今回、Yさんの希望で、今回は、@水晶 A武石(黄鉄鉱)に絞って、産出ポイントを
  3箇所回ったに過ぎない。
   ここで、Yさんが採集した水晶の標本をいくつか紹介する。なお、ズリで採集した直
  後に撮影したため、土砂や針鉄鉱(褐鉄鉱)に覆われている部分があるが、クリー
  ニングしたら、”ピカピカ”になった、と喜びの電話があった。
   左端の標本の”緑色”は、もっと鮮やかである。

 (1)緑水晶/石英【Green Quartz/QUARTZ:SiO2

       
      モスグリーン       ススキ山入り        ススキ入り
                 緑水晶3態【採集:Yさん】

5. おわりに

 (1) 「水晶峠」は、一時間足らずで到着でき、女性や子供でも比較的簡単に採集でき
    る数少ない産地の1つである。
     現在でも、「山入り水晶」「緑水晶」などが採集でき、次回のミネラルウオッチング
    の候補地の1つである。

 (2) この季節、水晶峠周辺では「石楠花(しゃくなげ)」がピンクの花を満開にして、われ
    われを歓迎してくれていた。

    石楠花

6. 参考文献

 1)益富 寿之助:鉱物 −やさしい鉱物学−,保育社,昭和60年
 2)中川 清:山梨県の水晶 水晶Vol.11 No.1,鉱物同志会,1998年
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