山梨県水晶峠の緑水晶

         山梨県水晶峠の緑水晶

1. 初めに

  京都の石友・Nさんから、『水晶峠へのルートがうろ覚えなので地図を書いて
 欲しい』とのメールがあった。「セラドン石」を恵送いただいたり、数々の産地を
 案内していただいたり、普段お世話になっているので、早速地図を書いて郵送した。
  私も最近の産地の状況も知りたいので同行して、直接案内することにした。
  Nさんほか、滋賀の石友・Nさん、Yさん、三重の石友・Nさんと私たち夫婦で
 ほぼ1年ぶりに訪れた。
  滋賀・Yさん、三重・Nさんは今回、初めてとのことであるが、それ以外の方々は
 何回か来ているので、「緑水晶」をターゲットに採集した。
  最近、訪れる人が少ないのか、新たに掘り込まれたような場所も少なく
 それぞれ、ここぞ、と思う場所で採集した。到着して間もなく、Yさんが表面採集で
 綺麗な緑水晶をまとめて3本採集するなど、マズマズのスタートであった。
  私も益富先生の「鉱物」に掲載されている金峰山(おそらく水晶峠)産には
 及ばないものの、”品のある緑水晶”を採集した。
  中年5人+オバサン組の楽しい採集行であった。
 (2005年8月採集)

2.産地

  以前の「水晶峠採集会」のページに詳しく掲載してありますので、割愛します。
 「塩平」ルート、工事中の「琴川ダム」コース、そして川上村からの「大弛峠」越えの
 3つのルートからアプローチできます。
  湯沼鉱泉の山中社長によれば、「大弛峠」越えは、工事をしていることがあり
 時間を限ってしか通行できないことがあるようですので、事前にチェックが必要です。
  水晶産地は、市販されている登山ガイドなどにもある「水晶峠」を目指せば
 迷わずに行けるはずです。

   「水晶峠」標識前で参加者
  

3. 産状と採集方法

  黒平の古老に聞くと、水晶峠では、マサ化した花崗岩に挟まれたペグマタイト脈の
 晶洞から水晶を掘ったようです。「バッタリ鉱山」も近く(境界がよく分からず人によって
 呼び名がオーバーラップしていた?)、ズリも広範囲に広がっています。
  御堂川沿いには、比較的堅い(他の産地に比べるとはるかに脆いが)花崗岩が残っており
 そこに坑道を掘っての採掘も行われた。
  ここでの採集は、ズリを掘るのが一般的です。危険な場所が少なく、手軽に採集でき
 ますので、女性や子供向きです。
  ズリの表面が白くなるほど、石英のかけらが落ちています。今回のように雨上がりには
 表面採集でもそこそこの標本が期待でき、クマ手などでちょっと掘っても面白いでしょう。
 (今回も、良標本のほとんどは、表面採集で得られたものだった。)

   表面採集【白いのは石英(水晶)】

4. 産出鉱物

   ここで採集できるのは、@水晶 A武石(黄鉄鉱)がメインです。
  水晶には、「山入り」「緑山入り」「武石入り」「黄鉄鉱入り」「角閃石」「緑泥石」「緑簾石」など
  各種インクルージョン入りのほか「武石」「鋭錐石」などの付いたもの、さらに並行連晶や
  日本式双晶を初めとする各種の双晶も採集でき、これらの組み合わせもあります。
   今回は、京都・Nさんにお付き合いし、「緑水晶」の佳品に的を絞って採集することに
  していたが、珍しい晶癖、インクルージョン、形の良い武石などにはついつい手が伸びて
  採集袋に収まってしまいました。

 【今回の採集品】

 (1)緑水晶【Green Quartz:SiO2】
    緑色を示すインクルージョンには何通りかあります。

 タイプインクルージョン      採集品  備考  
緑簾石
(透緑閃石?)
淡い緑色
針状インクルージョン
一部に針状鉄電気石
緑泥石濃い緑色
球状インクルージョン
角閃石黄褐色に近い
針状インクルージョン

 (2)水晶【Rock Crystal:SiO2】
    益富先生の「鉱物」にあるのと同じ、平板(ひらばん)で山入り水晶を採集した。
   平板水晶は稀にしか発見できないことから、”日本式双晶の片割れ”なのか、期待が
   膨らみます。

   平板山入り

 (3)武石【Limonite :酸化・水酸化鉄】
    黄鉄鉱が結晶の形を残したまま酸化・水酸化鉄に変化した武石がアチコチで採集
   できる。2cm位の全周完璧なサイコロ状や、いくつかの面を残した5cmを超える
   ものがあり、破断面をみると黄金色に輝く黄鉄鉱が脈状に残っていて、コントラストが
   美しい。
    小さな武石が表面に付いていたり、内包する水晶もある。

   武石

5. おわりに

 (1)「水晶峠」は、”行きはヨイヨイ”の産地です。登山道を下り→平坦→下り→渡河
    →緩やかな登り→急斜面(わずか100m)で産地に到着します。
    それでも、中年5人+オバサン組には厳しいかと思い、行きしな、沢水に中川農園産の
    無農薬スイカを浸しておいた。
     帰りしなには、食べごろに冷えており、これを食べ、皆さん無事帰還しました。

    帰りの休憩風景

 (2)「水晶峠」は甲武信鉱山や小川山と並び、人気の高い産地です。
   他の産地では産出が稀な山入りや緑水晶などが、初心者でも比較的簡単に採集でき
   ベテラン垂涎の的の「日本式双晶」もズリで採集できる、などがその理由でしょう。
    この日は、父親に連れられた小学2年生が来ており、嬉々として楽しんでいた。
   ( 父親は、私の古いHPのコピーを持参し、写真を見ながらルートを確認し、ほとんど迷わず
    到達できた、との事)

 (3)駐車場に戻ると、滋賀・Nさんがやおら群晶を取り出した。10本以上の頭付き水晶の
   間に、完形の「武石」がついたもので、一同唖然としたり羨んだり。

    武石付き群晶【採集、撮影:滋賀・Nさん】

    まだまだ良品が採集できそうですので、「2005年秋の採集会」の有力候補の1つ
   です。
    (困ったときの甲武信、水晶峠頼み・・・・・・蔭の声)

6. 参考文献

1)中川 清:山梨県の水晶 水晶Vol.11 No.1,鉱物同志会,1998年
2)益富 寿之助:鉱物 −やさしい鉱物学−,保育社,昭和60年

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