山梨県水晶峠の緑水晶バリエーション

山梨県水晶峠の緑水晶バリエーション

1.初めに

 日本分県地図を何気なく眺めていると、日本のいたるところに「水晶岳」
「水晶沢」など、”水晶”を冠した地名が多いのに気が付きます。
 山梨県にも、今では採集が難しい「竹森の水晶山」と並んで鉱物採集で有名な
「水晶峠」があります。
 「水晶峠」は、その名に違わず、「山入り」、「緑」、「武石付き」
「黄鉄鉱入り」など各種水晶のバリエーションが採集できることは知られていますが
アプローチが今ひとつ不便(良く分からない)などで、「竹森の水晶山」ほど
一般的ではありません。
 私のHPを見た東京のKさんから、水晶峠を案内して欲しいとのメールがあったので
山梨、長野、茨城などの産地を案内して差し上げた方々に声を掛け、2002年11月の
採集会を開催した。
 千葉のOさん親子、K君、東京のTさん親子、Kさん、Sさんが参加してくれ、賑やかな
採集会になった。
 昨年訪れた時に比べ、大型山入り標本の採集は難しくなっていますが、小さなもの
なら、女性や子どもでも簡単に採集できます。
 今回、私は”緑水晶”に的を絞っての採集し、”各種のバリエーション”
採集できた。
(2003年11月採集)

2.産地

水晶峠に到るルートは次のどちらかです。
(1)黒平の集落から木賊峠に到る林道の途中から、水晶峠への登山道を約2時間歩く。
(2)柳平の集落から大弛峠に到る林道「川上牧丘線」から、金峰山への登山道を約1時間歩く。
  (2)のコースは、柳平の集落のゲートが 12月1日から翌年の5月31日まで、閉鎖されて
   しまいますので、注意が必要です。もっとも、林道が閉鎖されているときは、産地も
   凍てついて採集が難しいでしょう。
   今回、参加者の体力などを考え、歩く時間が短い、(2)のコースをとりました。
   川上牧丘線で乙女鉱山の入口を左に見て、約20分走るとアコウ沢を過ぎ、その先の左手に
   広い駐車スペースがある。ここが金峰山への登山道の入口です。
   以前は、登山の案内板があり迷うことがなかったのですが、林道の改修工事で撤去され
   登山道の入口が分かりにくくなっています。
   ここから沢音のする谷に向かって、やや急な坂道を下って行くと、林業用軌道が残る平坦な
   道に突き当たる。

   参加者
   ここを約1km行くと、ガレ場の先が谷に向かった急坂になっている。
   坂を下り切ったところが、荒川と御堂川(枯れ沢)の合流点になっている。
   荒川は通年水量が多く、渡るのに注意が必要です。
    御堂川の左岸を上流に向かって登山道を約700m行くと、「黒平」の標識に従い、
   御堂川を渡ります。ここから、御堂川の右岸を下流に向かって約200m行くと
   道は登りになり、最後の急斜面を登りきったところが「水晶峠」です。
    ここまで、登山道の入口から1時間前後でしょう。
  「水晶峠」の標識の裏手一帯が「水晶峠」と「バッタリ鉱山」の産地です。

3.産状と採集方法

  水晶峠では、マサ化した花崗岩に挟まれたペグマタイト脈の晶洞から水晶を
 掘ったようです。
  「バッタリ鉱山」も近く、ズリも広範囲に広がっています。
 ここでの採集は、ズリを掘るのが一般的です。
  ズリの表面が白くなるほど、石英のかけらが落ちています。この中から、
 水晶を探すこともできます。
  ここは、危なくなく、手軽に採集できますので、女性や子供向きです。
 特に、雨上がりには、表面採集でもそこそこの標本が期待でき、クマ手などで
 ちょっと掘っても面白いでしょう。
  最近、露頭を掘ろうとした形跡がアチコチに見られます。

4.産出鉱物

  ここで採集できるのは、@水晶 A武石がメインです。
(1)緑水晶【Green Quartzl:SiO2】
    ここの水晶は、「山入り」、「緑」、「武石付き」、「黄鉄鉱入り」など各種
   インクルージョン入りのほか並行連晶や日本式双晶が採集でき、これらの組み合わせ
   もあります。
    この日は、緑水晶に的を絞って採集した。

  透明緑簾石結晶を含む緑水晶

     
      緑山入り            茶針山入り
   どういう訳か、山の頂き付近に「緑簾石」は生成する傾向があります。

     
      緑針入り            茶針入り
  左のものは、水晶峠産水晶特有の先細りの形で、緑色の細い針状結晶を含む。

  緑雲入り

5.おわりに

(1)今回初参加の東京のKさんの採集結果は今ひとつで、再訪を期していました。
   Sさんは、名前と同じ”みどり”水晶を探していましたが、壁が厚かったようです。
(2)2002年は冬の到来が早く、11月にここを通りかかったとき、ズリの表面は”カチカチ”に
   凍って、ツルハシも歯が立たない有様で、私には採集は無理でした。
    それでも、火をたいて凍土を溶かして採集するツワモノが来ていたのを
   思い出しました。
    2003年は、冬の到来が遅かったせいか、11月でもズリの表面は”サクサク”で
   熊手で簡単に採集できました。
(3)「水晶峠」の人気は高く、採集会を開催して欲しいとの要望がたくさん寄せられて
   いますので、林道が開通する6月以降に計画しています。
 

6.参考文献

1)中川 清:山梨県の水晶,水晶Vol.11 No.1,1998年
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