2002年秋の鉱物観察会-水晶峠-

2002年秋の鉱物観察会-水晶峠-

1.初めに

私のHPを見て、メールで問い合わせがあったり、山梨、長野、茨城などの
産地を案内して差し上げた方々に声を掛け、2002年秋の観察会を開催した。
観察会2日目、牧丘町柳平の「金峰山荘」前には、1日目に参加できなかった
東京都のMさん、Tさん親子そして千葉県のOさん親子が駆けつけてくれ
賑やかな観察会になった。
丁度、紅葉の真っ盛りで、遠くに雪を頂く富士山と金色の針をまとった唐松林の
コントラストを愛でながら、”山入り水晶”、”武石”と言った水晶峠の代表的な
標本を観察できた。
(2002年10月観察)
大弛峠からの富士山

2. 産地

水晶峠に到るルートは次のどちらかです。
(1)黒平の集落から木賊峠に到る林道の途中から、水晶峠への登山道を約2時間歩く。
(2)柳平の集落から大弛峠に到る林道「川上牧丘線」から、金峰山への登山道を
   約1時間歩く。
(2)のコースは、柳平の集落のゲートが 12月1日から翌年の5月31日まで
閉鎖されてしまいますので、注意が必要です。もっとも、林道が閉鎖されているときは
産地も凍てついて採集が難しいでしょう。
今回、参加者の体力などを考え、歩く時間が短い、(2)のコースをとりました。
川上牧丘線で乙女鉱山の入口を左に見て、約20分走るとアコウ沢を過ぎ、その先の
左手に広い駐車スペースがある。ここが金峰山への登山道の入口です。
以前は、登山の案内板があり迷うことがなかったのですが、林道の改修工事で撤去され
登山道の入口が分かりにくくなっています。
ここから沢音のする谷に向かって、やや急な坂道を下って行くと、林業用軌道が残る平坦な
道に突き当たる。ここを約1km行くと、ガレ場の先が谷に向かった急坂になっている。
坂を下り切ったところが、荒川と御堂川(枯れ沢・・・合流点近くにのみ水が流れていた)の
合流点になっている。
荒川は通年水量が多く、渡るのに注意が必要です。
今回も、大きな流木が橋の役目をしてくれ、小学生が渡るとき落ちないように、大人達が
川の中に入ってサポートしました。
御堂川の左岸を上流に向かって登山道を約700m行くと、「黒平」の標識に従い、
御堂川を渡ります。ここから、御堂川の右岸を下流に向かって約200m行くと
道は登りになり、千葉県のYさんの奥さんが”お花畑”と名づけた開けた場所に出ます。
最後の急斜面を登りきったところが「水晶峠」です。ここまでの所要時間は登山道の
入口から1時間前後でしょう。

3.産状と観察方法

水晶峠では、マサ化した花崗岩に挟まれたペグマタイト脈の晶洞から水晶を
掘ったようです。「バッタリ鉱山」も近く、ズリも広範囲に広がっています。
ここでの観察は、ズリを掘るのが一般的ですが、ズリの表面が白くなるほど
石英のかけらが落ちています。
ここは、危なくなく、手軽に採集できますので、女性や子供向きです。
特に、雨上がりには、表面採集でもそこそこの標本が期待できます。

4.観察鉱物

ここで観察できるのは、@水晶 A武石がメインです。
風邪で体調が良くないMさん(採集会の次の日寝込んだとのこと)は、専ら”武石”
探しでした。
(1)水晶【Rock Crystal:SiO2】
ここの水晶は、「山入り」、「緑」、「武石付き」、「黄鉄鉱入り」など
各種インクルージョンのほか並行連晶、日本式双晶や曲り水晶が採集でき
これらの組み合わせもあります。
また、Tさんが乙女鉱山や小川山に負けない、透明度の高い水晶を観察した。
@緑山入り水晶【Rock Crystal including ? :SiO2】
黄緑色の細い針状結晶が内側の山を作っている緑水晶がある。インクルージョンは
緑簾石か角閃石なのか鑑定できていません。
ほのかに色付いた気品のある水晶で、参加者の憧れの的です。

          緑山入り水晶
    左:私の撮影       右:Tさん撮影
A武石【Limonite :酸化・水酸化鉄】
御堂川に近いズリでは黄鉄鉱が結晶の形を残したまま酸化・水酸化鉄に変化した武石の
見られるズリがあり、Mさんが3cm×10cmのほぼ真四角の武石が母岩に付いたものを
観察した。
武石

5.おわりに

(1)水晶峠が初めてのK君も自力で山入りが観察でき満足したとのメールを
いただいた。愛知県のHさんは、2回目でしたが山入りを観察できず、「3度目の正直」に
掛けるとのこと。
(2)今回、3ケ月ぶりに水晶峠を訪れたところ、大きな穴が掘られ産地荒廃の寸前です。
節度有る観察に留めましょう。

6.参考文献

1)中川清:山梨県の水晶 「水晶」-水晶特集号-,鉱物同志会,1998年
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