山梨県水晶峠の鉱物

山梨県水晶峠の鉱物

1.初めに

日本分県地図を何気なく眺めていると、日本のいたるところに「水晶岳」
「水晶沢」など、水晶を冠した地名が多いのに気が付きます。
山梨県にも、先に紹介した「水晶山」と並んで鉱物採集で有名な「水晶峠」があります。
「水晶峠」は、その名に違わず、「山入り」、「緑」、「武石付き」
「黄鉄鉱入り」など各種水晶のバリエーションが採集できることは知られていますが
アプローチが今ひとつ不便(良く分からない)などで、「竹森の水晶山」ほど
一般的ではありません。
逆にその分だけ、産地が荒れておらず、思いがけない鉱物を採集できる可能性があります。
今回、私のHPを見た埼玉県のAさん親子だけを案内する積りでしたが、参加者が増え
6月度ミニ採集会となり、その初日に訪れ、参加者全員が満足する結果となりました。
秋の採集会の第一候補です。
私がここを訪れるのは約7年振りでしたが、初めて日本式双晶、鋭錐石付きの他に黄鉄鉱入りなど
各種の水晶を採集できた。
(2002年6月採集)

2.産地

水晶峠に到るルートは次のどちらかです。
(1)黒平の集落から木賊峠に到る林道の途中から、水晶峠への登山道を約2時間歩く。
(2)柳平の集落から大弛峠に到る林道「川上牧丘線」から、金峰山への登山道を約1時間歩く。
(2)のコースは、柳平の集落のゲートが 12月1日から翌年の5月31日まで、閉鎖されて
しまいますので、注意が必要です。もっとも、林道が閉鎖されているときは、産地も凍てついて
採集が難しいでしょう。
今回、参加者の体力などを考え、歩く時間が短い、(2)のコースをとりました。
川上牧丘線で乙女鉱山の入口を左に見て、約20分走るとアコウ沢を過ぎ、その先の左手に
広い駐車スペースがある。ここが金峰山への登山道の入口です。
以前は、登山の案内板があり迷うことがなかったのですが、林道の改修工事で撤去され
登山道の入口が分かりにくくなっています。
ここから沢音のする谷に向かって、やや急な坂道を下って行くと、林業用軌道が残る平坦な
道に突き当たる。ここを約1km行くと、ガレ場の先が谷に向かった急坂になっている。
坂を下り切ったところが、荒川と御堂川(枯れ沢)の合流点になっている。
荒川は通年水量が多く、渡るのに注意が必要です。
(私は、木を切って、いつでも借橋を作れるようのにノコギリを持参しました。)
今回は、大きな流木が橋の役目をしてくれ、ノコギリの出番はありませんでした。
荒川渡河作戦決行中
御堂川の左岸を上流に向かって登山道を約700m行くと、「黒平」の標識に従い、
御堂川を渡ります。ここから、御堂川の右岸を下流に向かって約200m行くと
道は登りになり、最後の急斜面を登りきったところが「水晶峠」です。
ここまで、登山道の入口から1時間前後でしょう。
写真をとった裏手一帯が「水晶峠」と「バッタリ鉱山」の産地です。
水晶峠

3.産状と採集方法

水晶峠では、マサ化した花崗岩に挟まれたペグマタイト脈の晶洞から水晶を
掘ったようです。
「バッタリ鉱山」も近く、ズリも広範囲に広がっています。
ここでの採集は、ズリを掘るのが一般的です。
ズリの表面が白くなるほど、石英のかけらが落ちています。この中から、
水晶を探すこともできます。
ここは、危なくなく、手軽に採集できますので、女性や子供向きです。
特に、雨上がりには、表面採集でもそこそこの標本が期待でき、クマ手などで、ちょっと
掘っても面白いでしょう。

左:ズリを堀る”博士”     右:ひたすら武石を探すMさん

4.産出鉱物

ここで採集できるのは、@水晶 A武石がメインです。
(1)水晶【Rock Crystal:SiO2】
ここの水晶は、「山入り」、「緑」、「武石付き」、「黄鉄鉱入り」など各種インクルージョンのほか
並行連晶や日本式双晶が採集でき、これらの組み合わせもあります。
この日は、愛知県から参加したKさんと初参加のAさんの息子さんにとってラッキー・デーで
良品水晶を採集しました。

左:並行連晶【山入り】   中:山入り水晶【武石付き】    右:緑水晶
      【3点全て、採集・撮影   Kさん】
(2)黄鉄鉱入り水晶【Rock Crystal including Pyrite :SiO2】
武石入りは比較的多いのですが、錆びていないものは少なく、しかも六面体の結晶を
含むものは極めて少ない。
黄鉄鉱入り水晶
(3)鋭錐石付き水晶【Rock Crystal with Anatase :SiO2】
辛うじて肉眼で見える八面体の結晶を持つ鋭錐石が特有の銀白色光沢で探すことができた。
鋭錐石付き水晶
(4)日本式双晶【Rock Crystal Japanese Twin :SiO2】
ここで、3個体日本式双晶を採集した。
@黄鉄鉱入り水晶の上に、平板の日本式双晶があるもの。【5mm】
A傾軸タイプ日本式双晶の縫合部分がみえるもの。【20mm】
B子持ち水晶で、平板の日本式双晶が5ケ以上あるもの。【最大5mm】

左:平板の日本式双晶  中:双晶の縫合部  右:子持ち水晶の中の双晶
(5)平板水晶【Rock Crystal Plane Type :SiO2】
山入り平板水晶の大きなものがあった。これは、もっと大きな日本式双晶がある
可能性を示している。
山入り平板水晶
(6)苔入り水晶【Rock Crystal including Chlorite :SiO2】
透明感の強い水晶の中に、緑泥石と思われる緑色のモコモコしたインクルージョンが
入った水晶がある。
苔入り水晶
(7)緑山入り水晶【Rock Crystal:SiO2】
山入り水晶の中に、山の部分が黄緑色のインクルージョンになった水晶がある。
緑山入り水晶

5.おわりに

(1)今回、関東と名古屋方面から参加する人のため、集合場所を焼山峠にした。
この時期、レンゲツツジが燃えるような真っ赤な花をつけ、訪れた人々の眼を楽しませて
くれた。
焼山峠のレンゲツツジ
6月14日付朝日新聞朝刊の「花おりおり」のコーナに、レンゲツツジが掲載されました。
以下、引用させていただく。『ツツジの漢字”躑躅(てきちょく)”は、レンゲツツジの
仲間をさす。漢字の木は、木偏がつく。ツツジも低いが木である。それが足偏なのはなぜか。
躑は短く進む。蜀はカイコで、躅はとまる。つまり、よたよたした歩みをいう。
レンゲツツジは、アセビのように毒を含み、食べると家畜も足をとられてしまう。』
地方によって、レンゲツツジを”馬ツツジ”と呼びますが、これは馬酔木からの
連想なのでしょうか。
(2)翌日の黒平採集の都合も考えて、柳平にある民宿「金峰山荘」に宿泊した。
建物の内部が改装され気持ちよい宿泊施設になっています。
名物のジンギスカンをビールとともにいただき、部屋に帰って高橋さん差し入れの
ワインを飲みながら、夜遅くまで鉱物談義に花が咲いた。
「金峰山荘」前の参加者
(3)水晶峠で一緒になった、滋賀県のOさん一行も金峰山荘に宿泊しており、
私が疎い関西方面の鉱物情報を教えていただいた。
魅力的な産地が多いように伺ったので、是非訪れて見たいと考えています。
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