ここには、日本式双晶、草入り水晶など山梨県を代表する水晶のほか、ライン鉱
「何でも鑑定団」で紹介された水晶印材107点はじめ各種の水晶製品も同じ場所に
水晶製の櫛
『 水晶でできた、櫛の歯が、1つも欠けることなく仕上げられ、作られて100年
そんな矢先、某所で水晶製櫛を見かけ、○万円は高かったが、迷わず買った。
送られてきた「櫛」の包みを開けて手にもってみて、『水晶製』を実感し、何よりも
「櫛」の緒元
「共箱」の緒元
「ラベル」の緒元
(1) 明治27年(1894年)11月出版 「 山梨鑑・山梨繁盛明細記(広告欄) 」
(2) 明治29年(1896年)4月発行 1枚刷り「 甲府市内諸営業案内 」
『 文字に風致のあって有名の印刻師 』
(3) 明治39年(1906年)5月発行 「 山梨自治制史 」
(5) 明治39年(1906年) 長野県主催 「 一府十県連合共進会 」受賞者を紹介
(6) 大正15年(1926年)(?)発行 「 山梨商工人名録 」
(7) 大正14年(1914年) 「 五友会 」 結成
この後、一瀬熊次郎の名前はでてこない。昭和15年(1940年)、四国端岡から
しかし、名工といわれた熊次郎の時代と違い、「甲府物産商業組合」とあるように
(2) 「田草川 徳次郎」 Part2
徳次郎も熊次郎と同時代の人らしく、明治20年代に2人とも名工と称されて
ただ、初代が優れていればいるほど、後世までまでその技を伝えることは
( Mineral Collection of Hall of Quartz , Yamanashi University
Kofu City , Yamanashi Pref. )
トパーズなど山梨県ならではの鉱物標本と印材をはじめとする水晶加工品が並んで
おり、それらのいずれもが、”素晴らしい”の一言に尽きる。
展示している。
水晶製品の中に、石川 文一氏が寄贈した「櫛(くし)」、「簪(かんざし)」など女性の
身を飾ったものから、「老眼鏡」など実用的なものまで水晶の幅広い用途がうかがわ
れた。
以上も無傷で伝えられているのは、驚きと共に、大切にしたという先人の思い
が伝わってくる 』、ので機会があれば入手したと思っていた。
付属の桐箱にあるラベルから、製作者は明治時代から名人の高かった甲府市
一瀬(いちのせ)熊次郎だと知った。まさに、甲斐の水晶細工華やかなりし時代の
逸品だろう。大切に後世に伝えて行きたいと思っている。
( 2008年5月入手 )
2. 水晶製「櫛」
今回入手した「櫛」には、 桐箱(共箱:ともばこ、という)が付いていた。箱のラベルに
甲府市・一瀬熊次郎の名を認め買う気になった。
某ネットオークションにも「水晶櫛」が出ていて買おうかとも思ったのだが、箱がなく
水晶なのかガラスなのかもわからず、見送っていた。
『一瀬熊次郎』のラベルが気に入った。
材質 :水晶(モース硬度6のカッターの歯がツルツルすべる)
大きさ :横80mm×縦30mm
厚さ :5mm
重さ :10グラム
櫛の歯数:33本(くし36(9×4=36)ではない)
材質 :桐(軽く耐火性あり)
大きさ :横115mm×縦65mm
厚さ :20mm
『 所工細晶水産国 』
『 目丁三町柳市府甲 』
『 郎 次 熊 瀬 一 』
櫛 共箱
水晶櫛ラベル
水晶櫛
3. 一瀬熊次郎
「水晶宝飾史」を読むと、一瀬熊次郎の名が何回か出てくる。
甲府の名工、大家といわれる10業者に名を連ねている。
◇ 八日町 玉潤堂 松華土屋 松次郎
◇ 柳町 清玉堂 一ノ瀬 熊次郎
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・
◇ 柳町 南陽堂 田草川 徳次郎
『 細工のよいのと価の廉なるにて評判の国産水晶店 』
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◇ 柳町三丁目 一之瀬 熊次郎
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・
◇ 桜町二丁目 田草川 徳次郎
・
『 明治35年(1902年)の甲府市内の水晶店 』
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◇ 柳町 一之瀬 熊次郎
・
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(4) 明治36年(1903年)2月 山梨時報社発行 「 甲府市商家案内 」
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◇ 柳町三丁目 清玉堂 一之瀬 熊次郎
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『 甲州国産商家信用表彰鑑 』
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◇ 柳町 清玉堂 一瀬 熊次郎
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『 大正12年10月現在の水晶業者 』
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◇ 柳町二七 一瀬 しずの(37円90銭)
・
( )内:営業税額
郡部業者
◇ 西八代郡市川大門町 南陽堂
『 横浜市野沢屋デパートで山梨県物産宣伝即売会開催 』
・
◇ 清玉堂 一瀬 熊次郎
・
産するサヌカイト(別名カンカン石)から軍用航空機の無線機の絶縁体を製作
する日本特殊研磨工業所(後、軍需工場)の設立にかかわった業界の有力者
5人の中に一瀬増次郎の名がある。
昭和18年(1943年)「新商工業組合法」の制定・公布により、水晶関係で3つ
あった商工業組合は解散した。その1つ、「甲府物産商業組合」の理事の中に
柳町(一瀬清玉堂)一瀬増次郎の名があり、熊次郎の息子で、代替わりしてい
たようだ。
水晶細工から離れ、製品の流通・販売が主になっていたらしい。
4. おわりに
(1) 山梨の水晶製品
水晶印材にはじまり、「水晶壷」を購入し、「水晶櫛」まできてしまった。まさに
『 病膏肓(やまいこうこう)に入る 』 状態だ。
水晶製品としては、「緒〆(おじめ)」「風鎮(ふうちん)」「メガネ」など各種あった
ようで、これらも収集し、後世に伝えて行きたいと思っている。
以前、「水晶判引札」のページで『 田草川 徳次郎 』を紹介した。
( Seals made of Quartz from Yamanashi -Part 10-
QUARTZ Seal Shop Hikihuda ( Poster with Calendar)
Yamanashi Pref. )
いたようだ。
容易でなかったようだ。
5. 参考文献
1) 山梨県水晶商工業協同組合編纂:水晶宝飾史,甲府商工会議所,昭和43年
2) 山梨大学編:山梨大学 水晶展示室パンフレット,同大学,2005年